この記事をまとめると
■三菱のスポーツモデルとして君臨していた「ランサーエボリューション」■10代続いたモデルで、細かく分けると3回モデルチェンジして4世代まで存在した
■この記事では世代ごとで区切って各モデルの特徴を解説する
4世代にわたるランエボの進化を振り返る
ランエボI~Xまで、その名のとおり1992年のデビューから2015年の生産終了まで23年間、進化し続けた三菱ランサーエボリューション。
「エボ○」と「エボ+数字」で呼称されるように、少なくとも10回のアップデートを遂げているわけだが、もう少し大きく分けると3回のフルモデルチェンジがあり、それぞれ第一世代、第二世代、第三世代、第四世代に区分されている。
第一世代
第一世代はエボI~エボIIIまで。
最初のランエボ、エボIは1991年に登場した4代目ランサーがベース。
一番の目玉は、それまでWRCで戦っていたギャランVR-4のエンジン、2リッターターボの4G63を、1.8リッタークラスだったランサーのコンパクトなボディに載せたこと。圧縮比もVR-4より上がり(7.8→8.5)、中低速トルクが大きくなり、開口部の大きいバンパーと大型エアアウトレット+エアインレットつきのアルミボンネット、そして大型リヤウイングが競技ベース車両であることを主張していた。
エボII(CE9A)は、エンジン出力をさらに10馬力上げ、フロントホイールセンターを10mm前進。ホイールベースを+10mm、トレッドも前後15mm/10mm広げ、足まわりを改良。リヤには1.5WAY LSDも。ターマックでのコーナリング性能を向上させた。

エボIII(CE9A)はタービンを変更し、エンジンをさらに10馬力パワーアップ。空力面も見直され、フロントバンパーエクステンション、大型サイドエアダム、大型リヤスポイラー&ウイッカーを採用。ダウンフォースを高め、クーリング性能をアップしている。

このエボIIIは1996年のWRCで9戦5勝。トミ・マキネンがドライバーズタイトルを獲得した。

第二世代
1995年にベースのランサーシリーズが5代目にフルモデルチェンジ。約10カ月遅れて第二世代最初のランエボ、エボIVが登場。
ボディ剛性が大幅に向上し、サスの取り付け剛性もアップ。新設計のトランスミッションが与えられ、エンジンの搭載位置が左右反対に。肝心のエンジンパワーもツインスクロールターボ、ハイカム、大型インタークーラーなどが与えられたことで、ついに280馬力に到達。

ブレーキも16インチにサイズアップされた。
サスペンションは、このエボIVからリヤがマルチリンクに進化。さらにのちにランエボの代名詞となるAYCもエボIVにはじめて採用された。
WRCではドライバーズタイトル2連覇を達成。

エボVはボディがワイド化され3ナンバーサイズに。容量不足が指摘され続けたタイヤも225/45の17インチになり、ブレンボ製のブレーキも装着。フロントのヘリカルLSDも大きな武器となった。エボVはラリーだけでなく、サーキット=スーパー耐久シリーズにも参戦し、初年度でタイトルを獲得。サーキットでも速いランエボが誕生した。

続くエボVIではさらにターマックでの速さを追求。空力関係を見直し、フロントのロールセンターを低下。リヤロアアーム、トレーリングアーム、トーコントロールアームをアルミ鍛造化し、ロアアームのボディ側のブッシュはピロボールになった。

Ⅶからは電子制御だらけのハイテクマシンに
第三世代
2000年にランサーシリーズがフルモデルチェンジし、ベース車両がランサーセディアに。
CTランサー最初のエボ、エボVII(CT9A)は2001年のデビュー。

ひとまわり大きな骨格を手に入れ、新設計のボディで曲げ剛性が約50%向上。ワイドトレッド・ロングホイールベースに合わせて、足まわりをチューニング。バンプストロークも前後15mm/10mm増大させた。
EBD付スポーツABS、235/45の17インチのタイヤも大きなアップデートとなったが、何よりの進化はセンターデフがACDになったこと。ランエボのACD+AYC+スポーツABSの統合制御システムがここで出揃ったわけだ。

また、エボVIIでは、グランドエフェクトを活用するための大型アンダーカバーを装着。駆動系やブレーキを冷却するためのエアガイドも工夫されている。
2003年登場のエボVIIIは、エンジンの耐久性アップとともに、最大トルクを40kg-mまで向上。

エボVIII MRになると国産量産車初のアルミ製ルーフパネルを投入。ボルテックスジェネレーターもオプションで用意された。ダンパーもビルシュタインの専用開発品だ。

そして4G63を積む最後のランエボ、エボIX。
CTエボの集大成で、エンジンは可変バルブタイミング機構を持ったMIVECターボへ。ターボもコンプレッサーホイールはマグネシウム合金、タービンホイールはチタンアルミ合金となり、レスポンスは比類なきものに。

空力チューンも進み、フロントバンパーエクステンションとリヤのガーニーフラップの組み合わせなどにより、ゼロリフトを達成。
このエボIXにはランエボ初のワゴン、ランサーエボリューションワゴンも加わった。

第四世代
最後のランエボ、エボX(CZ4A)は2007年の発表、発売。
しかし、ランサーエボリューションといいつつ、ベースはギャランフォルティスだったりする……(北米輸出名はランサーであった)。

CTエボに比べ、かなりボディが大きくなったように思うかもしれないが、じつは全長+5mm、車幅+40mm、ホイールベース+25mmしか変わっていない。
ただし、車重はエボⅨ GSRに対し、約100kgも重たくなっている。

その代わり、ねじり剛性は39%、曲げ剛性は64%と、高剛性ボディを手に入れているのが特徴。
そしてプラットフォームとともに、大きく変わったのがエンジン。鋳鉄ブロックの4G63から、新開発のオールアルミブロック4B11型に変更。最高出力は同じ280馬力でデビューしたが、トルクは422Nm(43kgm)と強力に。

そして、4WDシステムも4輪すべてを総合制御する車両運動統合制御システム「S-AWC」を採用。
また、5速MT車のほかに、DCTの「SST」(6速)がラインアップされていた。
