この記事をまとめると
■中国自動車産業界に中国製の自動車部品の採用を促進するような動きがある



■中国製自動車部品の多くは海外メーカーとの合弁会社で吸収した技術が投入されている



■中国は自国ブランドでの自給自足を可能としてさらなる世界的な影響力強化を企んでいる



いまや一大勢力となった中国自動車産業界に不穏な動き

2023年9月中旬、中国政府が中国自動車産業界に対して、中国製の自動車部品の採用を促進するような動きがある、という一部報道がなされた。ここでいう自動車部品とは、EV(電気自動車)に関する電子部品が主体と報じている。報道内容の真偽について、現時点では定かではない。



その上で、中国自動車産業が日本を含めたグローバルでの自動車産業に及ぼす影響について考えてみたい。



時計の針を少し戻すと、中国の自動車産業が拡大し始めたのは2000年代中旬頃だ。米証券会社が、2000年代以降に急激な経済発展を遂げると予想した、ブラジル、ロシア、インド、中国、さらには南アフリカを加えた5カ国をBRICs(ブリックス)と称した。事実、中国は欧米や日本の各種産業に関して、国家政策として中国における経済政策の転換を模索してきた。



そのなかで、自動車産業については、外資企業が中国国内で新車を製造・販売するには、中国地場の自動車メーカーと合弁事業を立ち上げ、さらにその合弁事業に紐づく販売網を構築することを規定した。



中国の自動車には「中国製部品」を使うべしとの報道! 中国の政...の画像はこちら >>



こうした中国政府の経済政策を踏まえて、外資系自動車メーカーは最初、中国市場への本格参入を躊躇(ちゅうちょ)した。なぜならば、中国地場メーカーに対して自社の技術が公式な形で流出することを恐れたからだ。



それでも、当時世界最大の人口を誇った中国で、自動車産業が将来大きく発展することは、外資系自動車メーカーの収益拡大においては大きな可能性を秘めていることを、外資系自動車メーカー各社は当然、認識していた。カントリーリスクはあっても、投資効果は大きいという考え方だ。



そうしたなか、まずドイツのフォルクスワーゲンが中国市場への積極投資を開始し、他の欧州メーカー、アメリカメーカー、そして日本メーカー各社が後追いする形となった。



中国の自動車には「中国製部品」を使うべしとの報道! 中国の政策が日本メーカー及ぼす少なからぬ影響
フォルクスワーゲンの中国合弁会社



2010年代に入ると、中国自動車市場は急速に拡大し、あっさりアメリカを抜きさり、中国は2023年時点で生産と販売の双方で世界最大の自動車大国という位置にある。直近では、不動産投資における社会課題などによって、中国経済の減速が懸念されているとはいえ、産業構造として見れば、EVシフトを含めて中国自動車産業の力強さは変わらないといった印象があるところだ。



日系メーカーも中国事業戦略を考え直す時期かもしれない

そしていま、前述の一部報道にあるような、EV関連の電子部品に対する中国での国産化が強化されようとしている、との見方が出てきた。



これまでも、中国の電動化戦略については、中国政府が国内と海外における技術動向を集約して国としての戦略を描くという流れであった。国が国家戦略として大きな将来構造を描き、それに中国地場メーカー及び中国地場と外資メーカーとの合弁会社が対応してきた。そこに、日米欧の自動車部品や電子部品のメーカーが自社製品を売り込む形だ。



それが、国家戦略としてのEVシフトのなかで、EV関連の電子部品を中国で国産化する動きへと転じるとしても、なんら不思議ではない。



中国の自動車には「中国製部品」を使うべしとの報道! 中国の政策が日本メーカー及ぼす少なからぬ影響
BYDのブレードバッテリー工場



これまでの中国政府の自動車産業育成の方法を振り返ってみる限り、そうなることを、外資メーカー各社も十分に予想していたはずだ。



仮に今後、中国で生産・販売する半導体を含めたEV関連の電子部品が中国国産化されることになった場合、日系自動車メーカーや日系自動車部品メーカーとしては、自社技術を持つ中国地場での事業のあり方を見直すことも考えられるだろう。



中国の自動車には「中国製部品」を使うべしとの報道! 中国の政策が日本メーカー及ぼす少なからぬ影響
BYDのブレードバッテリー工場



また、自動運転技術でも現状、中国における法規や技術は外資メーカーにとって半ば「ブラックボックス」という認識が、日系自動車メーカー側にある。



EVについても今後、日系自動車メーカーや日系自動車部品メーカーは、「中国はブラックボックス」という”割り切り”を前提とした、グローバル事業戦略を立てざるを得ない状況になるのかもしれない。

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