この記事をまとめると
■パンクなどのタイヤに関するトラブルの際に交換して装着するのがテンパータイヤだ



■テンパータイヤとは何か? 使用上の注意は? などの気になるポイントを解説



■最近はテンパータイヤを積んでいないクルマも多い



テンパータイヤのことどれだけ知ってる?

「テンパータイヤ」って聞いたことはありますか? 昨今はタイヤの技術も進化し、道路の整備も進んでタイヤがパンクするトラブルに遭う機会も減っているように思いますが、週末などに高速道路で移動していると、タイヤがぺちゃんこになって路肩にハザードを点灯させて緊急停車している車両もたまに見かけます。そうなって初めて「あ、スペアタイヤがあったな!」と、その存在に思い当たると思いますが、調子よく走っているときは1ミリも意識を向けられない寂しい存在でもあります。



「テンパータイヤ」ってなに? スペアタイヤとどう違う?

「テンパータイヤ」とはスペアタイヤの一種です。正式には「テンポラリータイヤ」と言います。

「temporary(テンポラリー)」とは、「一時の、仮の、臨時の」という意味ですので、この場合は「臨時用のタイヤ」となります。



クルマのトランクやフロア下に備わっているスペアのタイヤには大きく分けて2種類あります。走行用のタイヤと同じもの、またはホイールは違うけど同じタイヤを履いたもの、そしてこの「テンポラリータイヤ」です。



後輪に履いたほうがいい! 80km/h以上出しちゃダメ! 意...の画像はこちら >>



「テンポラリータイヤ」は、その名のとおりにパンクした際に臨時に使用するための最小限の性能と、収納のためのコンパクトさを両立させたタイヤですので、無精してそのまま日常使いするのは危険なのでやめたほうがいいでしょう。



使用するときの注意点は?

スペアタイヤでしたらほとんどの場合はそのまま普通に走行しても大丈夫ですが、「テンパータイヤ」の場合は注意が必要です。



ほとんどのテンパータイヤは、収納性を高めるために標準タイヤより幅が狭く設定されています。そして、その細いタイヤで車重を支えないとならないので、標準的なタイヤに比べて硬質なゴムを使って分厚く作られています。空気圧も標準の2倍近い数値に設定されています。



後輪に履いたほうがいい! 80km/h以上出しちゃダメ! 意外と知らない「テンパータイヤ」のあれこれ
トランク下に収納されたテンパータイヤ



そのため、ただでさえ幅が細くて接地面が少ないのに加えて、硬質なゴムで空気圧が高いため、グリップ力が圧倒的に少ないのです。これは個人的な経験による感想ですが、ノーマルタイヤの半分もグリップしないという感じでした。



もっとも不安なのは加速のスリップではなく、ブレーキング時に片方しかブレーキが利かないことによるスピンです。ドライ路面での移動でも不安が伴うので、雨天によるウエット路面ではさらに慎重な運転が必要です。



後輪に履いたほうがいい! 80km/h以上出しちゃダメ! 意外と知らない「テンパータイヤ」のあれこれ
雨の一般道路のイメージ写真



また、上記理由によって、細いサイズのわりに重量はノーマルと同等かそれ以上あります。

そして、構造上の理由でスピードが出せません。具体的には80キロ以上は保証されない、という設定になっています。そのため、高速道路の途中でパンクした場合は、最左車線を80キロ以下で走行することになります。



後輪に履いたほうがいい! 80km/h以上出しちゃダメ! 意外と知らない「テンパータイヤ」のあれこれ
テンパータイヤの注意書きシール



航続距離の目安はだいたい100キロと言われています。修理できる場所までがだいたいそれくらいだという理由で設定されたようですが、さすがに100キロで擦り減ってツルツルになるわけではありませんので、それ以上走っても大丈夫だと思いますが、応急タイヤで長距離を走るのはいろいろ不安があるので、早急にパンク修理をして元のタイヤに戻すことをオススメします。



テンパータイヤはできれば後輪に装着したほうがいい

前輪がパンクしてしまった場合を考えます。幹線道路の路肩などでは作業する余裕が無い場合が多いため、とりあえずパンクしたタイヤとテンパータイヤを交換するのが精一杯だと思いますが、もし作業スペースと時間に余裕があるなら、前輪にテンパータイヤを装着するのは避けたほうが安心です。面倒でも2回交換してテンパータイヤを後輪に装着しましょう。



後輪に履いたほうがいい! 80km/h以上出しちゃダメ! 意外と知らない「テンパータイヤ」のあれこれ
後輪に装着したテンパータイヤのイメージ写真



これは少しでもブレーキの心配を少なくするというのが理由です。後輪ならばグリップの差があっても大きく姿勢を崩すことは少ないですが、前輪に装着して急ブレーキをした場合、グリップの差から車体が流れてしまい、コントロール不全に陥る可能性も否定できません。



ちなみに交換の手順は、まず無事な後輪とテンパータイヤを交換し、外した無事な後輪とパンクした前輪を交換すると、前側の両輪が無事な状態にできます。



近頃はスペアタイヤを積んでいないクルマも多い

テンパータイヤの寿命はどれくらい?

航続距離の目安は上記のとおりですが、一度ある程度の距離を走行してしまった場合は交換しておいたほうがいいでしょう。いざというときに使い古しのテンパータイヤでは、さらに走行可能距離が短くなっているでしょうし、劣化と合わせて寿命も短くなっていると考えたほうがいいと思います。テンパータイヤはタイヤ部の交換も可能ですので、タイヤショップなどで交換しておきましょう。



また、ほとんどのクルマはテンパータイヤの出番がなくて存在を忘れられていることが多いと思いますので、気がついたときには「あれ? これ何年モノだ?」なんて急に不安になることもあるでしょう。



後輪に履いたほうがいい! 80km/h以上出しちゃダメ! 意外と知らない「テンパータイヤ」のあれこれ
テンパータイヤが取り出された状態



では、年数的にはどれくらい保つのでしょうか? これもあくまで目安の数字ですが、だいたい10年で交換することを推奨されているようです。中古で買った車両で年数がわからないという場合は、タイヤのサイドウォールを見れば数字とアルファベットの組み合わせで製造年数が記されていますので、それを見て判断しましょう。



年数が10年未満でも、保管状態によっては劣化が進んでいる場合もありますので、その際は表面のべとつきや硬化具合、ひび割れが無いかなどをチェックしておきましょう。



後輪に履いたほうがいい! 80km/h以上出しちゃダメ! 意外と知らない「テンパータイヤ」のあれこれ
テンパータイヤがトランク下に収納されている写真



他車のテンパータイヤは使っても大丈夫?

さて、出先でパンクしてしまい、テンパータイヤを使おうと思ったらひび割れだらけで使うのがかなり不安な場合や、前のオーナーが外してしまって装備されていなかった場合もあり得なくはないシチュエーションだと思いますが、そんなときはどうしたらいいでしょうか? もし知り合いのクルマと一緒だったり、親切な人が助けを申し出てくれたりした場合、その車両のテンパータイヤを借りて走行しても大丈夫でしょうか?



結論を言うと、タイヤの外周が同じで、車重が大きく違わず、ホイールのPCDが一緒ならOKです(※問題がないとは言いません)。ホイールのPCDが違えばそもそも装着できないので論外として、タイヤの外周が違うと問題なのはなぜでしょうか?



後輪に履いたほうがいい! 80km/h以上出しちゃダメ! 意外と知らない「テンパータイヤ」のあれこれ
乗用車のタイヤ&ホイールの装着写真



クルマには「デファレンシャルギヤ」という、曲がるときに起こる左右の回転差を調整してくれる機構が備わっています。直進中は左右差がほぼ起こらないため休めるのですが、左右で異なる径のタイヤを装着してしまうと、常に回転差を調整している状態になり、長距離を走るうちに過熱してしまいます。とくに気温が高いときに過熱すると、部品やオイルの許容範囲を超えてしまい、ギヤを傷めてしまうのです。



後輪に履いたほうがいい! 80km/h以上出しちゃダメ! 意外と知らない「テンパータイヤ」のあれこれ
自動車のデファレンシャルギヤ



相手が車重が重い車両の場合は問題になることは少ないと思いますが、軽い車両からテンパータイヤを借りる場合は、ロードインデックス(=荷重指数)が足りないため、場合によっては荷重を支えられず、最悪の場合はバーストを招く恐れがあります。



スペアタイヤが搭載されていない車種もあるらしい

欧州車や高年式の車種ではスペアタイヤを積んでいないモデルもあるようです。いくらコンパクトに作られているとはいっても重量は10キロ以上ありますし、搭載するスペースもバカになりません。なのでいっそのこと取っ払ってしまえ、という大胆な考えでスペアタイヤを排除してしまったのです。



「ではパンクしたときどうするの?」と思いますよね。

その対策としては大きく2種類あります。



ひとつは「パンク修理キット」の装備です。タイヤの空気バルブから「シーラント」という、穴をふさぐための液体ゴムのようなモノを流し込み、電動の空気ポンプでタイヤを膨らませる方法です。



後輪に履いたほうがいい! 80km/h以上出しちゃダメ! 意外と知らない「テンパータイヤ」のあれこれ
タイヤのパンクを修繕する「パンク修理キット」



もうひとつは「ランフラットタイヤ」の採用です。これはパンクしてもつぶれない構造をもつタイヤで、空気が抜けた状態で応急タイヤと同じくらいの距離を走れます。国産車ではGT-Rなどが採用しています。

編集部おすすめ