この記事をまとめると
■海外では名車をほぼ当時のままの姿で復活させる企画が増えている



■ほぼ同じ姿でありながら、現代のクオリティで蘇り、信頼性が高いことが大きなメリットだ



■日本でも最近では初代モデルの雰囲気を色濃く残したモデルが販売されている



世界中で名車の復活が続いている理由とは

海外のクルマを見ると、最近は1950年代から1970年代の車種をモチーフにした新型車が散見される。たとえばイギリスのACカーズは、コブラGTロードスターを発表した。1960年代のスポーツカー、ACのシャシーに、フォード製のエンジンを搭載した往年のシェルビーコブラがモチーフだ。



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開発はル・マンで優勝を飾った経験を持つドライバーのキャロル・シェルビーが担当して、V型8気筒エンジンのOHVをDOHCに変更するなどの改良を受けた。これを現代に蘇らせたわけだ。



ジャガーは美しいEタイプやレーシングカーのDタイプを復活させた。ロータスは、幻のレーシングカーとされるタイプ66、さらにベントレーは1929年式スピードシックスも復刻する。ランドローバーは、ディフェンダーのリバイバルを開発した。このあたりはいずれも少量生産車だが、細部まで忠実に再現している。



「リバイバルモデル」や「初代オマージュ」には何の意味がある? 当時モノの中古車じゃダメな理由とは
ランドローバー・ディフェンダー



一連のリバイバルモデルが登場した背景には複数の理由がある。もっとも大きな理由は、当時のスポーツカーや悪路向けのSUVには、デザインから運転感覚まで、今日のクルマとは違う独特の味わいや個性があったことだ。空力特性、走行安定性、衝突安全性、歩行者に対する安全確保などでは不利だったが、後ろ姿やボディの一部だけを見ても車種がわかるほど個性的だった。



そして、これらのクルマに懐かしさを感じるユーザーが、いまでは大人に成長して、可処分所得も増えて、価格が高い少量生産車でも購入できるようになった。1965年に15歳で、前述のクルマたちに憧れたとすれば、生まれたのは1950年だ。いまでは73歳だから、最後のクルマ選びを考えているかも知れない。



子どもの頃に憧れて、ずっと夢見てきたクルマをカーライフの最後に手に入れる。クルマ好きとしては一番の幸せだろう。



名車復活はクルマを思う存分に楽しめる最善策

本当なら、当時生産されたクラシックカーを購入すべきかも知れないが、ハードルが高い。そのようなクルマには、ユーザーにも相応の運転技術、メンテナンスの知識などが求められるからだ。マニアでないと手を出しにくい。その意味でリバイバルモデルは、最新型のクルマとは異なるが、常識的に扱える。



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レストア風景



言い換えれば、昔の思い出どおりの運転感覚を味わえる。ここも大切なところだ。実際に40~50年前のクルマを走らせると「こんな運転感覚だったっけ?」と思うことが多い。いまのドライバーは当然ながらいまのクルマに慣れていて、当時の記憶に残る運転感覚と、現存するそれとは異なるからだ。その意味でリバイバルモデルに乗ると、幻滅したり思い出を汚される心配もほとんどなく、幸せな時間を過ごせる。



クルマが最先端技術の塊と考えれば、リバイバルは後ろ向きの発想だ。

クルマである以上、デザイン、技術、運転感覚など、常に進歩を続けるべきだろう。



しかし、もはや電動機能を搭載しないクルマに残された時間は短い。安全性や運転支援の進化は、事故を防ぐ最善の技術だが、純粋な運転する楽しさは味わいにくくなってきた。リバイバルモデルを求める気持ちは理解できる。



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アイサイト



日本車ではあまり話題にならないが、フェアレディZは初代モデルがモチーフで、リバイバルモデルの性格を併せ持つ。また、発売を予定しているランドクルーザー70は、基本設計が約40年前と変わっていない。



2014年に一度復活したときに試乗したら、無意識にダブルクラッチを踏んでいたのには自分でも驚いた。私の体が昔の70の運転感覚を覚えていた。



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トヨタ・ランクル70



マツダロードスターのベーシックなSも、1989年に発売された初代の面影を色濃く残す。定常的なコーナーを曲がっていくと、前輪ではなく、後輪から徐々に滑り始めた。リバイバルモデルではないが、カーブを曲がるときの挙動は昔とソックリだ。



試乗していたら、いまでは忘れていたバブル経済のころの記憶が驚くほどリアルに蘇り、ちょっと涙をこらえた。

ほぼ同時期に本物の初代ロードスターを運転したときは、感覚のズレを感じたが、現行モデルのSは思い出のなかを走るロードスターそのものだ。現行ジムニーにも昔の面影がある。



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マツダロードスター



昔を懐かしむために、クルマを買う方法もあるだろう。ご同輩の皆さん、そろそろ、このようなカーライフを楽しんでも良いではありませんか。

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