この記事をまとめると
■主にスーパーカーに多い「チルトカウル」の魅力を紹介■ボディの軽量化や交換のしやすさでスーパーカーやレーシングカーに採用されていた
■生産コストや安全性能への配慮でチルトカウルは一般車では採用しづらい
カッコいいだけでなくエンジニアリング的なメリットもある
生成AIについてメリットとデメリットが相半ばすること、活発な議論がなされているようですが、正直なところ確たる答えは出ないような気がします。一方で、チルトカウルの功罪もまた、クルマのエンジニアたちが知恵を絞っていることご承知の通りでしょう。
ただし、AIとは違ってこちらの答えは一択!「カッコいいから、アリ!」にほかなりません。
むろんデザインやキャラの演出だけでなく、チルトカウルにはエンジニアリング的なメリットもあることは言うまでもありません。
そもそもチルトカウルというのは、一般的なボンネットフードやトランクが車体側のヒンジで部分的に開くのに対し、フロントフェンダーやバンパーといったクルマのセクションが一体化され、主に車体側とは反対方向に開く仕組みです。取り入れているモデルは、前述のランボルギーニ・ミウラやフォードGT40、あるいはランチア・ストラトス、フェラーリF40などそうそうたる顔ぶれ。

このことからもおわかりになるように、チルトカウルは生粋のスポーツカーに採用されがち。カッコよさに加え、性能に直結するメリットがあるからにほかなりません。
たとえば、軽量化。フェンダーやライト、フードを一体化することで、重量の軽減を図るというわけで、スポーツカーやレーシングカーには欠かせない方策に違いありません。たいていのチルトカウルはFRPやカーボンファイバーといった比較的軽い素材が使われるのもこうした理由でしょう。
普通のクルマには採用しづらいからこそ余計に憧れる
また、レーシングカーなどの場合、クラッシュで即交換が求められるケースにおいても一体化されたセクションを丸ごと交換するほうが早いことは言うまでもありません。このあたりはグループBのラリーカー、たとえばアウディ・シュポルト・クワトロやランチア・ラリーなどがチルトカウルを採用していることでもおわかりになるかと。

また、グループC以前のスポーツカーレースなどでは、カウルどころかボディすべてが一体化されているケースも少なくありませんでした。
さらに、レーシングカーや繊細なメカニズムをもったスポーツカーは、頻繁なメンテナンスやセッティングが不可欠。すると、大きくガバ開きする方がやりやすいことも大きなメリット。フードを開けたくらいでは、手が届かないところや目視しづらいところもありますが、チルト方式ならばたいていのチェックは難しくありません。

一方で、チルトカウルにはメリットとバーターするかのようなデメリットも少なくありません。軽量化のための素材はプレス鋼板より高価となることはもちろんですが、モノが大きくなるだけに生産効率も決して高いとは言い難いはず。高価なスポーツカーでなければ、メーカーの経理担当者が首を縦に振ることはないのです。
また、効率よく軽量化するためには相応の巧みな設計が求められることも確かでしょう。ライトやエアダクト、あるいは配線のケーブルといったものもバカにならず、RCカーのクリアボディのようなわけにはいきません。

さらに、市販車であれば衝突安全もまた重要なファクター。チルトカウルの耐衝撃性能に関するデータを見るまでもなく、ぶつけたらクシャクシャになりそうなことは想像に難くありません。クルマ好きはともかく、普通の人々はカッコいい、よりも安全性能に重きを置くのですから、一般的なクルマは採用しづらいのかと。
もっとも、カッコよさというのはある種の理屈を超越していることも確かで、きっとAIに「安全でなくとも、値段が高くても、カッコいいクルマを選んでよ」とオーダーすれば、必ずや上述のようなクルマが選ばれること間違いないでしょう。メリットとデメリットを計るだけが正義ではないこと、とっくの昔にAIは理解しているのですから。