この記事をまとめると
■自動車には欠かすことができない半導体には「味の素」の技術が使われている■高性能なCPUの絶縁材として使われる「味の素ビルドアップフィルム(ABF)」がそれだ
■SDV時代となって今後もクルマなどにはABFが採用される領域が増えそうだ
味の素の技術はクルマにも大きな影響をもたらしていた
最近、自動車産業界で大きな話題となっているのがSDVだ。ソフトウェア・デファインド・ヴィークルの略称で、文字どおりソフトウェアを主体として開発されるクルマを指す。
周知のとおり、すでにクルマには多様なECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)が搭載されている。
そうしたECUの機能やあり方を統合して、サイバーセキュリティへの対応能力を挙げるなど、SDV時代の車載ソフトウェア、またはクラウドを介して車載ソフトウェアをコントロールする仕組みなどについて、自動車産業界での議論が高まっているところだ。
そんな車載システムで重要となるのが、半導体の存在である。コロナ禍と並行して発生した、半導体不足によって新車の製造が遅れるなど、クルマと半導体との関係の深さを認識した一般ユーザーも少なくないだろう。

その半導体といえば、「インテル・インサイド(インテル入っている)」といった米半導体大手のインテル社のテレビコマーシャルが記憶に新しい。
そんなインテルのマーケティング戦略を拝借すれば、半導体には「味の素、入っている」と、表現ができるかもしれない。
特殊なフィルムで絶縁をコントロール
味の素といえば、一般ユーザーにとってとても身近な存在だろう。

そもそもは、池田菊苗博士が見出した「うまみ」成分という画期的な発想を商品化した「味の素」が事業の主役だった。
その後、調味料だけではなく、加工食品、冷凍食品、栄養ケア食品、またAGFブランドでのコーヒー関連商品など幅広い製品を取り揃えている。

こうした多様な事業の中に、「味の素ビルドアップフィルム(ABF)」がある。同社の説明によれば「ミクロのフィルムで絶縁をコントロールする、層間絶縁材料」だ。高性能な半導体(CPU)においては、全世界の主要なパソコンのシェア100%という実績だ。

ABFの開発の歴史を辿れば、1970年代にアミノ酸の研究開発を経て、絶縁性があるエポキシ樹脂のパソコン半導体向けの量産を進めた。
特徴は有機物と無機物をミクロのフィルムで一体化させる技術。回路基盤への加工での最適化など、日夜技術は進化を続けているという。

モバイル、そしてSDV時代のクルマなど、ABFは今後さらに採用される領域が増えていきそうだ。