この記事をまとめると
■バラードスポーツCR-Xの後継モデルとしてサイバースポーツCR-Xが登場した■4代目シビックの姉妹車というキャラももっておりパフォーマンスも優秀だった
■3代目はCR-Xデルソルとして生まれ変わりその後はCR-Xの面影が残るCR-Zが登場した
2代目CR-Xはサイバースポーツへ
1983年に登場したバラードスポーツCR-Xは、シビック/バラードという既存車種のメカニズムをうまく活用して誕生したFFスポーツだ。目を見張るようなエンジンパワーはないけれど、車体の軽量性を追求することで、当時はFRが主流だったスポーツモデルにおいてFFライトウエイトスポーツの可能性を示した。
そんなバラードスポーツCR-Xの後継車種として、1987年に登場したのが「CR-X」である。
愛称として「サイバースポーツ」が与えられた2代目CR-Xは、なだらかなルーフラインがボディ後半でスパッと切り落とされたフォルムは初代CR-Xから継承されつつ、全長が80mm伸ばされ、全幅は50mm拡大された。一方で全高は20mm下げられ、どこから見てもCR-Xであるとわかるスタイリングながら、よりワイド&ローな印象を強めている。
フロントマスクはよりシビックとの姉妹性を感じさせる形状となり、初代モデルのセミリトラクタブルヘッドライトから一般的なスタイルに変更。リヤまわりでは、リヤゲートの後端部分、テールレンズの上部に半透明ガラスを採用し、「エクストラウィンドウ」として後方視界を確保するなどの工夫がなされた。
インテリアの基本設計は、初代モデルと同様にリヤシートをミニマムサイズとした2+2。ただし、アウタースライド式サンルーフのほか、ルーフの大部分をUVカットガラスとする「グラストップ」もオプション設定されるなど、乗車中に乗員が開放感を楽しめるアイテムが用意された。
2代目CR-Xの発売時に設定されていたエンジンは2種類。ひとつは1.5リッターSOHCのD15B (CVデュアルキャブ仕様)で、もうひとつが1.6リッターDOHCのZCだ。最高出力130馬力を誇るZCは「Si」グレードに搭載され、先代モデル同様にボンネットの一部が盛り上がったパワーバルジが与えられ、スポーツグレードの「Si」であることをアピールしていた。
機敏な走りは多くの人に愛された
しかし、この「サイバースポーツ」CR-Xの人気を決定づけたのは、1989年9月に発売された「SiR」の存在だろう。
このB16A型ユニットに採用されたのが、可変バルブタイミング&リフト機構「VTEC」である。1本のカムシャフトに低回転域・高回転域それぞれ個別のプロフィールを設定し、エンジン回転数に合わせて自動的に切り替えることで低回転域・高回転域の両方でバルブタイミングやリフト量を最適化、全回転域で大きなパワー&トルクを発生させるもの。
ホンダは、このVTEC機構を初めてB16A型ユニットに初めて採用し、まずは1989年に2代目インテグラに搭載。その後に4代目シビックと2代目CR-XのいずれもSiRグレードに搭載した。
当時のB16Aは、最高出力160馬力/7600rpm、最大トルク15.5kg-m/7000rpmを発生。自然吸気エンジンながら排気量1リッターあたりの出力は100馬力を超え、天井知らずに吹き上がるエンジンフィールや、高回転域カムに切り替わったときのパワー感、それでいて故障にも強くタフであったことから、ストリートだけでなくモータースポーツでも活躍。とくにシビックSiRは、当時参戦していたグループAでときおり上位クラスを凌ぐ速さを見せ、その人気はますます高まっていった。
シビックSiRとCR-X SiRは、基本的に同じ車体に同スペックのB16Aを搭載、足まわりも同様に4輪ダブルウイッシュボーン式サスペンションを採用していた。両車で異なっていたのはホイールベースで、CR-Xは2300mmであったのに対して、シビックは2500mm。CR-Xのショートホイールベースはクイックな操縦性に貢献し、一方コーナリング時の安定性はシビックが勝るという乗り味の違いをもたらした。
その後、2代目CR-Xはボディカラーやホイールデザインの変更、ビスカスLSD装着などのマイナーチェンジを受けつつ、1992年2月まで生産された。シビックはひとあし早く1991年に5代目のEG型へとフルモデルチェンジが行われ、CR-Xも1992年3月に3代目モデルが登場する。車名が新たに「CR-Xデルソル」となった新型は、なんと開閉式トップを備える2シーター・スポーツへと大きく路線を変更していた。
ロー&ワイドフォルムの3ドアハッチバックという、2代に渡ってCR-Xが築いてきたFFライトウェイトスポーツの歴史はいったん幕を閉じたものの、2010年にハイブリッドスポーツの「CR-Z」が登場。次世代ライトウェイトスポーツの方向性を示す1台として期待されたが、2017年に販売を終了して以降、後継モデルは発表されていない。

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