この記事をまとめると
■近年物流業界ではトラックドライバー不足が深刻だ



■対策としてトラックにはさまざまな工夫がなされている



■「ジャパントラックショー2024」で公開された最新技術を紹介



荷物を運ぶ必要がなくなる「スワップボディ」

トラックの荷台はさまざまな架装が可能であるものの、よく見かけるのは平ボディとバンボディだろう。土木・建築関係の資材輸送などには平ボディタイプが多く利用されているようだが、一般的な荷物はバンボディタイプによる輸送が主流である。このボディは、外から見れば単なる長方形の箱に過ぎない。

しかし、近年はそのなかやまわりにさまざまな工夫がなされ、作業性・安全性の向上につながっているという。



これは、2024年問題をきっかけにトラックドライバーの不足が深刻化したことに端を発している。この問題が抱える要因のひとつに、トラックドライバーに課されている荷積み・荷降ろしの過酷さがある。そこで、トラックの架装メーカーなどから、これを少しでも軽減するためのアイディアが数多く提案され始めたのだ。



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そのなかでも比較的大がかりなシステムは「スワップボディ」であろう。これは、本来一体化しているパワートレインと荷台を分離して活用しようというものである。すなわち、トレーラーと同様の荷台運用が、普通のトラックでも可能になるわけだ。これなら、出発地・到着地で荷物を荷台ごと積み降ろしできるようになり、トラックドライバーが荷物を運ぶ必要がなくなる。



トレーラーとの大きな違いは、ドライバーが「牽引免許」を取得しなくてもいいということだ。荷台の脱着にはジャッキなどの装置・設備が必要だが、大がかりなものではないので、スペースさえ確保できれば、比較的低いコストで導入が可能なことも、魅力のひとつとして挙げられよう。



「スワップボディ」「コールドテナー」「サイドバンパー代わりのツールボックス」! 物流をスムースにするトラックの「アイディア技術」が目から鱗!!
スワップボディ



荷台のなかに設置する装備として注目されているのは、荷台床面が動く「オートフロアー」である。荷積みは荷室の奥から順に行ない、手前まで積んでくるのが一般的だ。

しかし、この装置を導入すれば荷物はすべて荷室手前に積むだけで、後は床面が動いて奥まで運んでくれる。降ろすときはその逆だ。電動式なので相応の機器設置をする必要はあるものの、軽量設計になっているから積載量の減少を抑えることができる。



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オートフロアー



「コールドテナー」は環境にも優しい

製品化に向けて開発が進められている「コールドテナー」は、環境の面からも期待が大きい。冷凍・冷蔵車は多くが専用車になっており、基本的にはそれに対応する荷物しか運搬ができない。宅配専用車両のなかには、冷凍・冷蔵室を備えたものもあるが、それは車両荷室に固定されたものだ。



同製品は、コンテナボックスとして独立したタイプ。容積は22~915リットル、温度制御は-35°~+40°の範囲に対応が可能で、コンテナを独立した荷物と同様に運用できる。また、センサーを取り付ければコンテナ内部温度の管理を、遠隔で行なうことができるようになる。ECサイトの普及で小口配送が増えるなか、温度管理が必要な荷物を臨機応変に運搬ができるようになれば、輸送効率の向上にもつながるのではないだろうか。



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コールドテナー



トラックには荷物だけではなく、工具や洗車用品など、メンテナンスにかかわるアイテムなども積んでおく必要がある。その場所として最適なのが、デッドスペースとなっているサイドバンパー部分だ。

サイドバンパーはトラックの安全装置であり、装着していなければ車検に通らない。



しかし、「LAGO(イタリア)」のツールボックスはそのサイドバンパーの代用が認められているので、安心して装着ができる。バリエーションもツールボックスだけではなく、消火器ボックス、救急箱、水用タンクなどがある。積載効率に影響を及ぼすことなく、デッドスペースを有効活用できるという斬新なアイディアだといえよう。



これらは、5月に横浜で開催された「ジャパントラックショー2024」に出展されたものの一部である。トラック・運輸業界の最新テクノロジーといえば、運行管理システムや安全装置、あるいは自動運転、EV化などが話題になりがちだ。



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コールドテナー



しかし、トラックドライバーの日常業務に焦点を当てた、明日にも役立つこういった技術の積み重ねにも、もっと注目するべきなのではないだろうか。

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