この記事をまとめると
■ディーゼルエンジンはガソリンエンジンに比べてトルクフルな点が特徴だ■軽油はガソリンと比較して発熱量が大きい点がメリットだ
■発進トルクはギヤ比でも変わるのでエンジンの特性だけでは語りきれない面がある
ディーゼルエンジンはなぜトルクがある?
ディーゼルエンジンには「発進時など低回転域でガソリンエンジンよりトルクフル」という印象がある。一方、ガソリンエンジンには「高回転でのピークパワーに勝る」と認識されていることが多いだろう。
実際、同程度の排気量をもつガソリンエンジンとディーゼルエンジンを比べてみれば、そうした印象が事実であるか確認できるはずだ。
F33A型ディーゼルインタークーラーターボエンジン
総排気量:3345cc
最高出力:227kW(309馬力)/4000rpm
最大トルク:700Nm/1600-2600rpm
V35A型ガソリンインタークーラーターボエンジン
総排気量:3444cc
最高出力:305kW(415馬力)/5200rpm
最大トルク:650Nm/2000-3600rpm
ランドクルーザーのエンジンだけでも比較すると、たしかにディーゼルエンジンはトルク型でガソリンエンジンはパワー型となっていることがわかる。とくに低回転域で太いトルクを発揮するのはディーゼルエンジンのアドバンテージといえるが、そこにはどんな理由(理屈)があるのだろうか。
これには大きくふたつの理由が挙げられる。それは軽油の発熱量とディーゼルエンジンの高圧縮(高膨張)比である。
まず、燃料自体の発熱量について、標準的な数値でいうとガソリンは約34.6MJ/L、ディーゼルエンジンが使う軽油は38.2MJ/Lとなっている。そもそも内燃機関は燃料の発熱量をすべて活用できるわけではないが、それでも燃料自体のアドバンテージがディーゼルエンジンにあるのは間違いない。
しかも、エンジンの熱効率に大きく影響するファクターにおいてもディーゼルエンジンは有利な傾向にある。簡単にいってしまうと、エンジン熱効率は膨張比が高いほど有利だ。アトキンソンサイクルなどの高膨張比エンジンでない限り、圧縮比=膨張比となる。つまり、高圧縮エンジンほどエネルギー効率に優れている。そしてディーゼルエンジンはガソリンエンジンより高圧縮比となっていることがほとんどだ。
ピークパワーがガソリンエンジン以下の理由
同じ排気量であってもガソリンエンジンよりディーゼルエンジンのほうがトルクフルなのは、軽油の高い発熱量と、ディーゼルエンジンの高い膨張比という要素によるものといえる。さらにディーゼルエンジンは燃料の自己着火による燃焼が特徴で、そうした構造もトルクの太い特性につながっているといえる。
では、このように内燃機関としての素性に優れているはずのディーゼルエンジンが、ピークパワーにおいてガソリンエンジンに劣ることが多いのはなぜだろうか。それはご存じのように、「パワー=トルク×回転数」によって生み出されるためだ。
量産車に載せられるようなディーゼルエンジンに共通するウィークポイントは、常用できる回転域が狭い(低い)こと。前述したランドクルーザーのエンジンスペックを見てもわかるようにディーゼルエンジンは圧倒的に低回転キャラとなっている。
このあたりはセッティング領域にもなってくるため、完全にディーゼルエンジンの特性に関する話とはいえない部分もあるが、結果として低回転域でのトルク特性を活かすために、高回転を使わないエンジンに仕上げていることが、冒頭で記したような「発進時にトルクフル」というディーゼルエンジンの印象につながっているといえる。
また、ここでサンプルに用いたランドクルーザーのエンジンはいずれも過給エンジンとなっているが、マツダのラインアップではガソリンエンジンがNA(自然吸気)で、ディーゼルエンジンはターボで過給されているというケースもある。そうなると、過給されているぶんだけディーゼルエンジンは、より一層トルクフルな印象が強くなっている傾向もあるだろう。
ただし、ドライバーが感じる発進トルクには変速機に与えられたギヤ比の影響もある。ローギアードであるほど発進加速は鋭く感じる部分もあるため、同モデルでの比較においてはエンジン特性だけで結論づけることのできない難しさもあることは留意しておきたい。

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