この記事をまとめると
■世界初の自動車は1769年に登場した蒸気機関を使った車両だ■蒸気機関を使うモデルはひとりでは運転できない点がデメリットだった
■ガソリンエンジンや電気自動車のほうが手軽だったため蒸気機関は普及しなかった
鉄道や船より先に自動車で採用された蒸気機関
蒸気機関を使った自動車は、1769年にフランスで発明された。いまから250年以上前だ。
ガソリンエンジン自動車がドイツのカール・ベンツによって発明されたのは1886年で、その100年近く前に蒸気機関自動車はあったことになる。
蒸気機関というと、鉄道の蒸気機関車をまず思い浮かべるかもしれない。だが、蒸気船が1783年、蒸気機関車は1804年の誕生といわれ、自動車のほうが早く登場していた。
キュニョーが製作した蒸気機関自動車は、前輪駆動の3輪車で、目的は重い大砲を運ぶ軍事利用だった。最高時速は9km/hであったという。これが、世界で最初の自動車と認められている。同時にまた、曲がる際に操作が追い付かずレンガの壁に衝突し、世界初の自動車事故にもなっている。
19世紀に入ると、乗り合い自動車として蒸気機関自動車の実用化がイギリスではじまり、ヨーロッパ大陸でも開発が進められた。アメリカでは、ボイラーの小型化が進み、外観や性能が、あとから生まれたガソリンエンジン自動車と遜色ないまでになったといわれる。
レースでもガソリンエンジンと互角の性能を発揮
ちなみに、世界初の自動車競走は、フランスで1894年に開催された。長距離を走り信頼性を問う競技で、パリからルーアンまでの126kmで争われた。参加は102台だったが、実際に出発したのは21台であった。
最初にゴールしたのは、時速約18km/hで走ったドディオンの蒸気機関自動車だった。ところが、蒸気機関はボイラーを管理する専門の乗員が必要で、ひとりで運転できるガソリンエンジン車のプジョーが、到着は2番手だったが、優勝と判定された。
蒸気機関自動車は、蒸気機関車と同じように水を沸かして蒸気を作るボイラーの操作が必要になる外燃機関だから、走るために手間がかかる。それに比べ、ガソリンエンジン自動車は、燃やした燃料の熱をそのまま動力とする内燃機関であるため、カール・ベンツの最初のガソリンエンジン自動車も、妻のベルタがひとりで操作し、同乗した息子を連れて走れる手軽さがあった。
電気自動車も、手軽に操作して走れる自動車であり、ドイツのフェルディナント・ポルシェ博士が自ら製作した最初の1台は電気自動車だった。また、世界で初めて時速100km/hを記録したのも、ベルギー人のジェナッツィによる電気自動車である。
20世紀に入り、ガソリンスタンドが整備されるにしたがい、自動車といえばガソリンエンジン車という時代が訪れることになる。

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