この記事をまとめると
■欧州ではミニバンの影が薄いがそれでも個性的なミニバンがちらほらとあった



■PSAとフィアットグループがが共同開発したミニバンは「ユーロバン」と総称されていた



■ルノー・エスパスは現在も販売されているが現行モデルはSUVになってしまった



過去にはヨーロッパにも個性的なミニバンがあった

最近でこそ欧州メーカーのミニバンが人気を博しているようですが、ちょっと前までヨーロッパでミニバンの影はとても薄かった気がしてなりません。バカンスシーズンともなれば、大家族と大荷物を積んで大移動する彼らのことですから、ミニバン需要がもっとあってもよかったはず。



と思って、かつてのヨーロッパ車を探ってみると、影は薄いながらもそこそこ個性的なミニバンがちらほら見つかりました。

なかにはモデルチェンジを繰り返して、現在まで至るものまであるのです。そんな欧州製ミニバンをピックアップしてみました。



ユーロバン

ユーロ圏を走るミニバンだからユーロバンとは名前からして大雑把な気もしますが、シトロエン/プジョー/フィアット/ランチアという錚々たるブランドの共同開発モデルですから、ヨーロッパを席巻する勢いをもたせようとの意図が感じられます。が、これは1994年の発表当時に雑誌がミニバンをひと括りにした呼称が定着しただけで、各社ともエヴァシオン/806/ウリッセ/ゼータと名付けられています。



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基本的には商用車とも共通するフロアパンを用いて、これまたユーロコラボとして有名なPSAのXU、またはディーゼル仕様のXUDエンジンを搭載し、1.9リッターディーゼルの90馬力から、2リッターガソリンターボの147馬力まで幅広くラインアップ。



とはいえ、スタイリングは各社ともほぼ同じ(笑)。いわゆるバッジエンジニアリングというやつで、唯一ランチア・ゼータが独特のグリルを追加してアイデンティティを保ったくらいですか。



ミニバンなら日本車……とも言い切れんぞ! ちょっとマイナーだけどヨーロッパにも個性派ミニバンが存在した
ランチア・ゼータのフロントまわり



それでも、2002年にはフルモデルチェンジをして各車とも2代目が登場。シトロエンはC8、プジョーは807、ランチアはフェドラを名乗り、フィアットだけがウリッセを継承。



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フィアット・ウリッセのフロントスタイリング



エンジンは再びPSAを共用しましたが、今度は3リッターのV6ガソリンユニットや、2.2リッターのディーゼルターボが加わるなど、大家族/大荷物/大移動がより快適になったのではないでしょうか。



ルノーと英国フォードもミニバンをラインアップ

ルノー・エスパス

ヨーロッパのミニバン史において、エスパスほど深い爪痕を残したモデルもないでしょう。デビューは1984年ですから、マツダMPVよりも4年、フォルクスワーゲンのT4トランスポーターより6年も早いというエポックメーカーですから、欧州ミニバンの代名詞と呼んでも差し支えないくらい、人々の記憶に定着しているかと。



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ルノー・エスパス(初代)のフロントまわり



先駆けらしく、エスパスは縦置きエンジンを短いノーズの下に格納したFFという独特なパッケージが特徴です。シャシーそのものは同社のミディアムセダン18を流用しつつ、エスパス(スペース)の名前どおり快適な居住空間を実現。

8ライトの広大なガラススペースも手伝って、当時のフランスメディアは大絶賛したそうです。



1991年にフェイスリフトを受けていますが、ハードにはほとんど変更がなく、顔つきがいくらか変わった程度。ですが、ご記憶の方もいるでしょうが、ルノー・スポールに転がっていたF1エンジンをミッドシップして、エスパスF1となったのがこのモデル! 7人乗りだったのが4座のバケットシートに変更され、カーボンを多用したワイドボディはエスパスのイメージを乱暴なまでにアップデートしてくれたのでした。



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ルノー・エスパスF1のフロントまわり



なお、1997年、2003年、2015年とモデルチェンジを繰り返し、現在は2023年に登場した6代目エスパスとなっています。が、スタイルはミニバンというよりSUVにほど近く、これまた時代の要請なのかもしれません。



フォード・ギャラクシー

ギャラクシーといえば、アメ車ファンならフルサイズセダンを思い出すかもしれませんが、こちらは英国フォードが発売した3列シートのミニバンです。同じグループ内ながら脈絡のないネーミングには首を傾げちゃいますよね。



ミニバンなら日本車……とも言い切れんぞ! ちょっとマイナーだけどヨーロッパにも個性派ミニバンが存在した
フォード・ギャラクシーのフロントスタイリング



それでも、ギャラクシーは2リッターのガソリンエンジンから始まって、1.9リッターのターボディーゼルまで揃えて、それなりに商品性の高いものでした。グローバル企業だけあって、生産はポルトガルの大規模ラインを使い、ヨーロッパ各国へと輸出されています。



2006年にはフルモデルチェンジを受けるのですが、今度はギャラクシーとS-MAXというダブルネームで登場し、走りとスペース効率にこだわった設計を誇り、2007年度のカー・オブ・ザ・イヤーまで受賞するというデキのよさ。で、不思議なことにポルトガルのラインは使われず、ベルギーとロシアの工場で作られるというワールドワイドっぷり。当然、ロシアをはじめとした東欧圏でも走っていたモデルです。



ミニバンなら日本車……とも言い切れんぞ! ちょっとマイナーだけどヨーロッパにも個性派ミニバンが存在した
フォードS-MAXのフロントスタイリング



次いで2015年には3代目にモデルチェンジを敢行。キープコンセプトに見えますが、同社のCD4という汎用性の高いプラットフォームが用いられ、効率はもちろん剛性&軽量化を発展させており、ミニバンに求められる経済性も追求したモデルとなっています。



ミニバンなら日本車……とも言い切れんぞ! ちょっとマイナーだけどヨーロッパにも個性派ミニバンが存在した
英国フォードのS-MAX&ギャラクシー2台並び



ディーゼルのエコブースト技術や6速DCTといった技術も投入されるなど、初代のどんがらみたいなクルマに比べたら格段の進歩を遂げつつも、2023年には生産中止。以来、ギャラクシーの名は復活していません。ちなみに、3代目はスペインでの生産とされており、フォードのロジスティックのミステリアスさにも磨きがかかっておりました(笑)。

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