この記事をまとめると
■メルセデス・ベンツGクラスがモデルチェンジ



■富士ヶ嶺オフロードコースと一般道にて試乗会が開催された



■G 450 d、G 580 with EQテクノロジー、AMG G 63の走りを評価



悪路走破性とラグジュアリーを両立

メルセデス・ベンツGクラスが新型に進化した。2018年にフルモデルチェンジを受け、現行型となったときも衝撃を受けたGクラス。今回のモデルチェンジはより一層の衝撃を与えてくれた。



試乗会場となったのは関東屈指のオフロードコースとして知られる富士ヶ嶺オフロードコースだ。このコースの特徴は難易度が高いこと。単なる悪路というだけでなく、斜度40度の上り下り勾配。高低差40cm以上のモーグル路や水深60cmの渡河試験、泥寧すり鉢など普通のクロカンモデルでは踏破できないほどの難コースなのだ。そこで最新型となったG 450 dとG 580 with EQテクノロジーを試すことができた。



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まず、G 450 d。その車両スペックはパワートレインに3リッター直6ディーゼルターボエンジンを搭載。最高出力367馬力で750Nmの最大トルクを発生する。これに20馬力、200Nmを発揮するISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)を装備し、48V電気システムと組み合わせて電動化を果たしている。



トランンスミッションは9速の9G-TRONICでオフロード要件を満たす専用チューニングとしている。



アルミのボデイパネルが踏襲された外観は大きな変更はないが、細かなポイントで空力処理の洗練や見栄えのよさが見て取れた。



【試乗】最強モデルはAMGじゃなくてEQか!? 新型Gクラスをガチオフロードと一般道で試した
G 450 dの悪路走行シーン



室内は今回ローンチエディションとして豪華な装備が奢られ、価格も2110万円以上とのことだが、操作性や座り心地、装備にも不満はまったくない。



こんな豪華なインテリアと装備をもつGクラスで悪路コースを走るのは、よほどパフォーマンスに自信がないと無理だろう。



まず、モーグル路から試す。大きなサスペンションストロークが対角にフル稼働し、車体をフラットに保つ。あえて一番高低差の大きなギャップを乗り越えないとタイヤが浮き上がらない。デフロックはセンターと前後個別にボタンスイッチで簡単に作動させることができる。モーグル路では指示でセンターデフロックを設定し踏破させたが、あえていわせて貰えば何も操作しなくても何事もなくクリアできてしまうのだ。



【試乗】最強モデルはAMGじゃなくてEQか!? 新型Gクラスをガチオフロードと一般道で試した
G 450 dの悪路走行シーン



そして驚くのが、その際の快適性の高さだ。車体も内装も、きしみ音ひとつ出さず静かで快適な乗り味のまま。ボディ剛性の高さやアルミと鉄の複合構成によるラダーフレームの強さを実感することができた。



続いて徒歩も困難なほどに滑りやすい泥濘と岩の崖を登り、傾斜40度の泥寧路を降り、すべてが電子制御でコントロールされて特別な運転技術を必要としない。クロスカントリー路も同様で、富士ヶ嶺の難コースを苦ともしない踏破性を見せてくれた。



G 580 with EQテクノロジーは「Gターン」が可能!

ついでG 580 with EQテクノロジーに乗り換えだ。

EQのネーミングが示すとおり、こちらは完全バッテリーEV仕様となっている。フロア下に116kWhという大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載。駆動モーターは108kW/291Nmの高出力モーターを、なんと前後に2個ずつ。つまり、4輪個別に駆動モーターを配する4モーター仕様となっており、システム出力として最高587馬力、1164Nmを発揮する。これはもうスーパーカーのパワースペック領域だ。一方で車両重量は3120kgに及ぶ。



外見的な差別化はあまり大きくないが、フロントフードが盛り上がった形状となり、フロントウインドウも専用品。さらに、空力特性をリファインしてCD値0.44~0.48に抑えるなど洗練している。また、リチウムイオンバッテリーを保護するためにフロア下全面を厚さ26mmのカーボン複合材料で作られたパネルでカバーしている。これが車体の50を超えるボルトで固定され、単にバッテリー保護だけでなくアンダーボディの空力特性を向上させ、フロア剛性も高めているのだ。



【試乗】最強モデルはAMGじゃなくてEQか!? 新型Gクラスをガチオフロードと一般道で試した
G 580 with EQテクノロジーのフロントスタイリング



また、最低地上高は250mmと、デファレンシャルギヤケースがないぶんG 450 dの230mmより高くなっている。これはそのまま悪路走破性を高めることに寄与していて、最大渡河水深もG 450 dの700mmに対し850mmという深さを可能としている。



実際に走らせてみると、モーグルでの剛性感の高さ、快適性はG 450 dを上まわる。室内は限りなくフラットに保たれ、音もなく静かにクリアできる。すり鉢路では3トン超の車体を電子制御で車速コントロールしながらゆっくり下り、そして登りも4輪モーターの個別制御で難なく登る。今回、60cmほどの水深の渡河テストも行えたが、タイヤ上端が水没するほどの深さの水路をこれも難なくクリア。斜度40度の崖は車両重量が影響するか懸念したが、4輪がトラクションと制動を完璧に制御して姿勢を乱すこともなかった。同乗者によれば景色を楽しめるほど快適で恐怖心は皆無だったと。



【試乗】最強モデルはAMGじゃなくてEQか!? 新型Gクラスをガチオフロードと一般道で試した
G 580 with EQテクノロジーの悪路走行シーン



そして、フラットな低μ路面でG 580のもっとも特徴的な「Gターン」を試した。これは左右の車輪を前後逆に空転させ、その場で360度ターンを可能とする画期的な装置だ。昨年の東京モビリティショーで中国・BYD社が展示したBEVの最新鋭SUVモデル「U8」がデモンストレーションで見せた超信地旋回を低μ路での高速ターンで実用化したものだ。



システムを起動させ、ステアリングを直進に保ちアクセルを全開にすれば、その場所で高速旋回できる。最大720度の旋回が可能で未開拓地などでは役立つ場面もあるだろう。



また、後輪の内輪をロックさせ超小まわりを可能とするGステアリングも装備。

まるで杭に固定されているかのように極小旋回を低速で行えた。



【試乗】最強モデルはAMGじゃなくてEQか!? 新型Gクラスをガチオフロードと一般道で試した
G 580 with EQテクノロジーのステアリング



こうした悪路走行でも電気系の保護はもちろん確立されていて、メルセデスクオリティが与えられているのだから「凄い」の一言に尽きてしまう。



オフロードを離れ、舗装の一般公道ではG 580 with EQテクノロジーとAMG G 63に試乗することができた。AMG G 63は4.4リッターホットインサイドのV8ガソリンターボエンジンを搭載する、これまで最強モデルだった。フロントサスペンションにスタビライザーを備え高速コーナリングもお手のもの。サーキットでも走れるほどの高いシャシー性能をGクラスに与えているのだ。



一般道ではV8サウンドに陶酔し、ガソリンエンジンのドライバビリティに改めてハートをくすぐられる。これまでは最強、最良のGクラスといえただろう。しかし、今回G 580 with EQテクノロジーの登場で、その地位は脅かされているといっても過言ではない。G 580 with EQテクノロジーは一般道の走行でも静かで、スムースで快適で、トルクフルで扱いやすい。加えてV8エンジンのサウンドを再現したG-ROARを搭載し、まるでV8エンジン車を操っているような感覚を楽しめる。



【試乗】最強モデルはAMGじゃなくてEQか!? 新型Gクラスをガチオフロードと一般道で試した
G 580 with EQテクノロジー、AMG G 63と中谷明彦さん



G 580 with EQテクノロジーの航続距離はWLTCモードで530km。

AMG G 63は同6.8km/Lで100リットルの燃料タンクを使い果たせば計算上は680kmとなる。航続距離は実用上大きな問題とはならないレベルに来ているといえるだろう。



価格はG 580 with EQテクノロジーが2635万円、AMG G 63は3080万円だ。昨今、ハイパフォーマンススーパーカーの価格は高騰していて、フェラーリやランボルギーニなどは4000万~5000万円以上する。そう考えると悪路も走れ、日常的な実用性も高く、安全性に優れながらスーパーカー並みの動力性能を持つ新型Gクラスの2000万~3000万円は極めて妥当な価格であるといえる。Gクラスはリセール価値も絶大であり、決して高額すぎることはないと思うのだ。



手に入れられる人は賢い選択をしたと確信していい。



【試乗】最強モデルはAMGじゃなくてEQか!? 新型Gクラスをガチオフロードと一般道で試した
試乗主要諸元表

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