この記事をまとめると
■新車販売ディーラーの創成期は現代の「スタートアップ企業」に近いノリで広がりを見せた



■オイルショックの頃は開業資金などを借りにくい業界であった



■現在はビジネスモデルが確立されているので安定を求めて入社してくる社員も少少なくない



新車ディーラーは「スタートアップ」企業的な側面をもっていた

世のなかでは「スタートアップ」という言葉が使われて久しい。筆者はついつい「ベンチャー」というものと混同してしまうのだが、調べてみるとベンチャーとは既存のビジネスモデルをベースに新しい創意工夫を凝らしたものであり、スタートアップとは、まったく新しいイノベーションを起こして進めるビジネス……ということらしい。



そう考えると、新車販売ディーラーの創成期はスタートアップに近いノリで広がりを見せたものと考えている。



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1960年代に上映された、当時の人気俳優などを起用したヒット映画のなかには自動車メーカーを舞台にした作品が意外に多い。当時は「モータリゼーション」などとされ、一般家庭がマイカーの所有を始めた時代。



調べてみると、1966年にデビューした初代トヨタ・カローラの価格は当時のサラリーマンの平均年収分に相当していたとのこと。それまでの日本人の間では、「自動車を自分個人で所有する」というのは想定もしていなかったことだったが、このあたりで「年収分で買える」レベルまでに近づいてきた。



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トヨタ・カローラ(初代)のフロントまわり



自動車自体は、すでに商用車というカテゴリーにおいてはそんなに珍しい存在ではなかったが、「乗用車」でしかも「マイカー需要」というものは、当時ではまさに自動車需要の「イノベーション」でもあり、いわゆる一般小売を本格的にはじめ、魅力的な新型乗用車を世に送り出していた自動車メーカーは当時、「最先端の業界」として、映画の舞台としても取り上げられるようになったものと考えている。



それでも令和のいまに比べれば、乗用車としてラインアップされる車種は全体でも数えるほどしかなく、自動車の販売主体はトラックやバンなどの商用車であり、乗用車といってもハイヤーやタクシー、社用車などのニーズがメインとなっていた。ただし、それでも自動車の個人所有というものは急速に増えるようになっていて、新車の売り方も小売りに合わせた体制確立が急務となり、新車販売ネットワークの全国的な構築が本格的にはじまった。



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自動車ディーラーの外観



お隣の韓国では、まだまだメーカーの組織に新車ディーラーが組み込まれ、メーカーが直接運営している店舗もあると聞くが、日本では全国各地の地元有力企業や地元の名士をオーナーとした、「地場資本系ディーラー」の整備がおもに進められた。多くは地元で整備工場を経営していた流れから新車販売会社を設立していたようだが、それまで自動車とは縁のなかった企業が新車販売に乗り出すケースも少なくなかった。



これは、日本がいまのような自動車大国になる以前の話であり、海のものとも山のものともいえない新車販売という、当時では新しいビジネスにチャレンジする姿勢が、まさにいまどきのスタートアップ企業に近いものと、筆者は感じているというわけだ。



安定を求めて入社してくるスタッフも増えた

新車での乗用車販売は堅調な伸びを見せていたが、1970年代にオイルショックが起こると風向きが大きく変わる。大手銀行を中心に新興ビジネスとされていた新車販売に対し、オイルショックで新車が売れなくなると、融資を断られる事態が多発したとも聞いている。



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自動車ディーラーでの商談様子



その当時、ようやく融資を快諾してくれた地元ではない地方銀行を、その恩に報いようと長い間メインバンクとしていたという話もあったようだ。1980年代後半に日本がバブル経済となり、まさに飛ぶように新車が売れるようになるまでは、新車販売ビジネスというのは、あくまで「新興ビジネスで要注意」という存在でもあった。



新興業種なので、じっくりと人材育成している間もないなか、セールスマンの増員が急務となった。当時は新車ではなくとも「飛び込み営業」が商品の売り方として比重の高かった時代。異業種での飛び込み販売経験のある有能なセールスマン確保のため、いまとは逆に歩合給の比率の高い給与体系とし、とにかく稼ぎたい腕利きの即戦力セールスマンが続々新車販売の世界にやってきた。



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新車ディーラーでの商談様子



そういった風潮もあったので、ある意味「売れればいい」という状況も続き、セールスマンの悪さも目立つようになった。なので、セールスマンの信用低下もあり、注文書や領収書はカーボン複写式で専用書式となる。かなりの枚数で1セットというモノとなったので、結果的にいまどきのセールスマンの行動範囲をかなり限定的なものとしてしまった。



1980年代ぐらいまでは、「とにかく稼ぎたい」、「実績最優先なので男女での雇用格差が少ない」、「クルマが好き」といった理由で新車販売の世界に入ってくる若い世代も目立ってきた。その後、4年制大学の新卒学生採用を進めたのだが、ここ最近では「大メーカーの看板を背負っている」などといった背景を見て、地方の有力企業として安定性を求めて学卒入社してくる若い世代が目立ってきているとのこと。



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最近のディーラーマンの商談様子



より高い歩合給を求めるなどして、頻繁なセールスマンの出入りが起こっていたころに比べれば、新車販売の世界における雇用環境は安定したものとなっているものの、新車販売や点検・整備では十分な利益確保ができず、中古車販売に力を入れるところが増えているのが実情だ。そして、現場のメカニックは、非正規雇用も珍しくなくなってきている。



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ディーラー系中古車の販売ブース



最近の販売現場では、「ファミリーレストランでもネコ型配膳ロボットが大活躍し、テーブルのタブレットで注文し、セルフレジで精算する時代です。中・長期的に見ればファミリーレストランのようなノリが新車販売でも定着し、セールスマンとの対面販売は限定的となり、セールスマンの多くは必要なくなるのでは?」といった漠然な不安を抱える声も聞くことがある。



とはいえ、当面は対面販売を主力とするスタイルは変わらないものといえるだろう。しかし、今後は働き手不足も手伝い、やむを得ない部分もあって「脱対面販売」という、いままでのスタイルを大きく変える、まさにイノベーションが起き、ベンチャーとして新たな売り方を我々に提案してくれることになるかもしれない。

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