この記事をまとめると
■クライスラーがレストモッドの新解釈として「エレクトロモッド」をプリマスGTXで提案■1967年式プリマスGTXを約355馬力のEVへとコンバージョンしながらカスタムも施した
■エレクトロモッドは最先端のスタイルとして今後は注目されるかもしれない
レストア+モディファイのレストモッドに新解釈
ここ数年、ちょい古なクルマをレストアする際に新たな解釈を加えたモディファイが流行している。いわゆるレストモッドと呼ばれるもので、ポルシェ911やルノー5ターボ、あるいはアメリカンマッスルカーなどが素材に選ばれ、「その手があったか!」と注目を浴びている。多くはプライベートなファクトリーによるチャレンジであり、メーカー自身がレストモッドに手を染めることはさほど多くはない。
自社の伝説的なモデルをカスタムしてしまうのはさすがに気が引けるのか、と考えていたところ、クライスラーが思い切ったレストモッドを発表。全米のカスタムカーが集結するショーケース、SEMAショーに出品された1967年製プリマスGTXは、レストア&カスタムだけでなくEVコンバートまで加えられた「エレクトロモッド」と呼ばれる新たなジャンルを打ち立てたのである。
ベースとなったプリマスGTXは、クライスラーが1967年にプリマス部門からリリースしたマッスルカー。2ドアハードトップクーペのプロポーションをはじめ、7.2リッターV8の強力なエンジンや大排気量エンジンの搭載を誇示するエアスクープ付きボンネットなど、1960年代を代表するアイコニックなモデル。

モデルチェンジをしながら1974年まで作りつづけられたが、クラシカルな雰囲気は初代モデルには及ばないと、クライスラーが素材に選んだのも大いに納得できるポイントだ。
さて、ショーへの出品にあたってクライスラーは将来のEVコンバージョンキットへの可能性について言及している。つまり、現行のクルマはもちろん、ビンテージカーまでEVに変換できるキットの販売を示唆しているのだ。

たしかに魅力的なキットには違いないが、それだけならいままでにも数多くの製品やファクトリーが作っている。そこで、レストモッドのエッセンスを加えることで、プリマスGTXをインパクトあるショーケースに仕立て上げるという選択がなされたのではないだろうか。実際、コンセプトカーのディテールをつぶさに見ていけばインパクトあふれる仕上がりは間違いない。
旧車のEV化キット販売でエレクトロモッドのブームが来るかも?
カーボンファイバーに置き換えられたフロントフードの下には、EDMと呼ばれる電気駆動システムが収められた。400V、250kWを発揮するモジュールはすべてアルミ削り出しのマウントに支えられ、追加されたアクセスパネルにより、補助バッテリーやクーラントポンプに簡単にアクセスしてサービスを受けることが可能となっている。

また、4つのバッテリーパックには、合計384個のリチウムイオンバッテリーセルが搭載され、約335馬力の最大出力、推定250マイル(約400km)の航続距離を誇る。
当然、コンバートキットとして発売される際は、バッテリー容量などの変更はあるはずだが、クライスラーは「往時のパフォーマンスを損ねることは決してなく、むしろEV独自のエキサイトメントが得られる」とコメント。当時のプリマスGTXはスタイルのわりに重たかったため、ライバルに水をあけられる場面もないではなかった。が、このパフォーマンスならば十分スリリングな走りが楽しめることは間違いないだろう。

そして、カーボンが多用されたスタイリングのアップデートも見逃せない。前述のフロントフードはもちろん、モダナイズされたフロントグリルや目立つことこの上ないリップスポイラー、圧巻は18✕ 9インチの鍛造マグネシウムホイールとピレリP-ZERO(PZ4)タイヤを履いた足まわりだろう。むろん、下げられた車高によるファイティングポーズはアメリカンマッスルカーのお約束ともいえるカスタムにほかならない。

さらに、コンセプトカーらしくインテリアにも徹底的なカスタムが加えられ、ジープ・ラングラーのシートを流用したローバックシートや、4連アナログメーターも新たなビジュアルに変更されている。ところが、ここまでカスタムしておきながらサイドウインドウはオリジナルの手動レギュレーターのまま。最先端のエレクトロモッドながら、クラシックテイストも混在するというセンスのよさといっていいだろう。

内外装いずれも基調となったインディゴブルーをあしらい、レザーのステッチにはEVを想起させるオレンジの糸を用いるなど、たしかに普通のレストモッドでは収まりきらないオリジナリティに満ち溢れる。
プリマスGTXエレクトロモッド・コンセプトは新たなジャンルに違いないが、クライスラーは見事に先鞭をつけたといっても過言ではないだろう。