この記事をまとめると
■ホンダ・アコードは現行で11代目を数えるホンダの長寿モデル■そのなかでも「4ドア・プレリュード」を目指した3代目をベストデザインに推す
■スポーティさと端正さを併せもつデザインはホンダのデザインの黄金期を象徴する1台
ベストなデザインをもつアコードを選ぶ
長寿モデルをはじめ、何代かにわたって販売されるモデルはそれぞれの時代を反映させたコンセプトが盛り込まれており、もちろんそれはスタイリングにもいえること。そこで、そんな各歴代のなかからあえてベストデザインを選んでみるのがこの企画です。なにしろ個人的な意見ゆえ、苦情反論は受け付けませんので悪しからず(笑)。
●4ドアのプレリュードを目指したスポーティセダン
前回のクラウンに続き、第2回目となる今回取り上げるのはホンダのアコードです。北米市場メインで少々縁遠く感じる時期もありましたが、それでも1976年の初代から現行の11代目まで続く文字どおりの長寿モデル。
で、そんななかからベストデザインに選んだのは、ズバリ3代目です。1980年代、他社との決定的な「違い」を求め、デザインによるブランド構築を模索していたホンダは、徹底したロー&ワイドボディとリトラクタブルライトという個性を引っ提げて2代目プレリュードを開発。さらに、若者向けのプレステージカーとして「ヤング・アコード」をコンセプトとするクイント・インテグラなどを輩出します。

そして、3代目アコードの開発に当たり、当時デザインを統括していた岩倉信弥氏は、直感的に「プレリュード・4ドアで行こう」と確信。実際、1985年に登場した3代目(CA型)は、新開発のダブルウイッシュボーンサスペンションによる「スーパー・スラントノーズ」と、リヤのハイデッキの組み合わせがまさに4ドアのプレリュードそのものでした。

そのなかで、ミディアムセダンらしいのが驚きのビッグキャビン。上下に広いサイド面やラップラウンド形状のリヤウインドウを持ったキャビンは、ホンダ独自のMM思想を具現化する高い居住性を感じさせるもの。この大きなキャビンと、低く薄いボディを違和感なく組み合わせたデザイン力には脱帽です。

ボディは余計なラインのない非常に滑らかでクリーンな面。リトラクタブルライトはブラックの縁取りが特徴的ですが、同じくテールランプもブラックのガーニッシュで囲まれ、そのクリーンなボディの前後を引き締めます。さらに、ブラックのシンプルなプロテクトモールにもボディ全体をギュッと引き締める役割が。

また、厚みを感じさせるプレスドアの採用により、ボディは強いカタマリ感とプレーンな印象を強化。これほどスポーティでありながら、同時に端正さも感じさせるという望外な? スタイリングです。
ホンダのデザイン黄金期が生んだ傑作
●高い志が生み出した真のオリジナリティ
一方、インテリアにもまた同一テーマが見て取れます。手前が低いトレイタイプのインパネは開放的で、フラットな形状も非常にシンプル。ステアリングホイールも同様にフラットな造形が特徴的で、インパネ全体にある種の先進性が感じられます。

この時期、前述の2代目プレリュードやクイント・インテグラ、あるいは3代目のシビックなど、ホンダデザインはまさに黄金期ともいえる状況で、次々に会心作を輩出しました。それだけデザイン部署全体の士気が高かったことがうかがわれます。

アコードは4代目、5代目も低く広いイメージを踏襲しましたが、その後は若干影が薄い時期を過ごすことになります。そして11代目となる現行型は、最近のホンダデザインに則り、じつにシンプルなスタイリングに回帰。

最新の製造技術による面質の高さは圧倒的ですが、誰とも違うオリジナリティは3代目に軍配が上がるというのが筆者の判定なのです。