この記事をまとめると
■道路には街路灯が連なる明るい区間もあれば街灯がほとんどなく真っ暗な区間もある



■街路灯の明るさは国土交通省による「道路照明施設設置基準」で定められている



■街路灯の設置には安全性やコスト、環境への配慮などさまざまな要因がからむ



街路灯には明るさと設置に基準がある

夜、クルマを運転していると、煌々と明るい街路灯が連なる区間もあれば、街灯がほとんどなく周囲が真っ暗な区間もあることに気づくだろう。街路灯の明るさには、じつは明確な基準や設置のルールが存在する。今回は、街路灯の明るさの秘密に迫りながら、設置されていない区間が存在する理由などを解説していこう。



<街路灯の明るさには基準がある!>

街路灯の明るさは、決して適当に決められているわけではない。道路の状況や周辺環境に応じて、適切な明るさが定められているのだ。その基準となるのが、国土交通省による「道路照明施設設置基準」というものである。



その基準では、道路の種類や交通量、周辺環境などによって、必要な照度(明るさ)が細かく定められている。たとえば、交通量の多い幹線道路では、歩行者や自転車の安全を確保するために高い照度が求められる。一方、住宅街の生活道路などでは、必要最低限の明るさを確保しつつ、周辺住民への光害(ひかりがい)にも配慮した照度が設定される。



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具体的には、次の評価項目で照度が設定されている。



まず、平均路面輝度だ。これは道路の明るさを数値化したもので、クルマの運転者が道路を安全に通行できるようにするための基準だ。単位は「cd/m2(カンデラ パー 平方メートル)」で、たとえば主要幹線道路では1.0cd/m2など高い輝度が求められる一方で、交通量の少ない道路では0.5cd/m2程度の輝度基準で低めに設定されることが多い。



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街路灯が明るい様子



次に輝度均斉度(総合均斉度)。均斉度は明るさのムラ・ばらつきの程度を示す指標だ。これが適切でないと、明るい部分と暗い部分の差が大きくなり、運転者の視認性が低下する。



そして、視機能低下グレア(相対閾値増加)という項目がある。グレアとは見え方の低下や不快感や疲労を生ずる原因となる光のまぶしさのことをいう。その抑制も重要な要素だ。過度に明るい街路灯は、運転者の視認性を損なう可能性があるため、適切にコントロールすることが必要だ。



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街路灯が暗めな道路



これらの基準は、道路の種類や交通量、周辺環境に応じて異なる。たとえば、都市部の幹線道路では、歩行者や自転車の利用者が多いため、より高い輝度が求められる。一方、郊外の道路や交通量の少ない道路では、コストやエネルギー効率の観点から、必要最低限の明るさに抑えられることがある。



街路灯の設置にはさまざまな要因がからむ

<街路灯が設置されていないのにはわけがある>

とはいえ、ときに街路灯が設置されていない道路も存在する。その理由は、単なるコスト抑制の問題だけではなく、次のような要因で決められている。



まず、高速道路や交通量が少ない郊外の道路では、街路灯の設置が省略されることがある。これはコスト削減やエネルギー効率の観点から判断されたものだ。とくに、高速道路ではクルマのヘッドライトが主な照明手段として機能するため、街路灯の必要性が低いと判断される場合が多い。



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街路灯の少ない高速道路



街路灯が周囲の自然環境に影響を及ぼすケースもある。

たとえば、自然保護区や野生動物の生息地では、人工光が生態系に悪影響を与える可能性があるため、街路灯の設置が制限されることがある。



コストの問題も場所によっては設置するか否かの判断に大きく影響する。都市部と違い、山間部や離島などインフラ整備が困難な地域では、街路灯の設置コストが非常に高くなる。そのため、これらの地域では街路灯が設置されない場合がある。



また、トンネル内の照明は、火災リスクやメンテナンスの観点から特別な配慮が必要だ。とくにトンネル内の配線には耐火性が求められるが、これがコスト増につながるため、距離の短いトンネルでは最低限の照明に留められることもあるのだ。



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トンネル内の様子



<街路灯の維持管理の重要性とは?>

街路灯は設置されるだけでなく、その後の維持管理も非常に重要だ。常に定期的な点検と補修が欠かせない。というのも街路灯は常日頃から台風や地震などの自然災害の影響で損傷する可能性があるからだ。損傷が確認された場合、速やかに清掃や補修を行うことで、街路灯の機能を維持しなければならない。



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路肩に停車している工事車両の列



また、効率的な維持管理を行うために、街路灯の設置場所や管理番号、補修内容などを台帳に記録することが求められる。



加えて、街路灯には自動点滅器や調光装置が組み込まれている場合がある。

これらの装置は、自然光の明るさや時刻に応じて街路灯を点灯・消灯する機能を持つため、エネルギー効率の向上に寄与するものだが、これらの維持管理も当然同様に行わなければならない。



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最近の街路灯の電球



街路灯の明るさのバラつきや設置基準には、さまざまな要因が絡んでいる。安全性やコスト、環境への配慮など、多面的な視点から設置が計画されていることを知ると、街なかの街路灯を見る目が変わるかもしれない。次回、街なかをドライブする際には、街路灯の配置や明るさに注目してみてはいかがだろうか。

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