この記事をまとめると
■軌陸車は鉄道線と道路を走行できる、鉄道のメンテナンス車両



■JR西日本が軌陸車の一種「多機能鉄道重機」を導入した



■「多機能鉄道重機」の特徴について詳しく解説する



JR西日本が「多機能鉄道重機」を導入

鉄道のメンテナンス車両に、「軌陸車」と呼ばれるものがある。その名のとおり、鉄道線(軌道)と道路(陸)の両方を走行できるのだが、扱いは自動車となるので、ちゃんとナンバープレートをつけている。



用途は鉄道保線、電車線工事用などで、その性質上高所作業車に近い運用をするために、ゴンドラを架装している車両が多い。

基本的には鉄道の営業が終了した深夜に活躍しているので、実際に鉄道線で使用されているところを、一般の人が見かける機会は少ないといえよう。



2022年7月、JR西日本に軌陸車の一種である「多機能鉄道重機」の導入、運用が開始された。本来なら地味なニュースだったのだが、この車両は見た目のインパクトが強かったので、日本中の注目を集めたのだ。ベースが普通のトラックで、そこに高所作業車用のブームが装着されているところまでは、従来の「軌陸車」と変わるところはない。ところが、ブームの先についていたのはゴンドラではなく、人型ロボットを思わせるような作業用のアームだったのである。



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いや、これはもう誰が見てもSFアニメに出てくるロボットだ。



正直、何かのイベント用なのかと勘違いをしてしまいそうになる。しかし、これはれっきとした現役の作業車両。トラックでいえば「仕事車」なのだ。ロボット部分を開発したのは滋賀県にある株式会社人機一体。「先端ロボット工学技術に基づく新規事業開発支援のための知的財産活用サービス」を事業内容としている会社である。



遠隔操作で高所作業ができる!

JR西日本によるとこの機械は「高所で人が実施している多様な設備メンテナンスに対応する汎用性の高い作業用機械を目指し、2020 年より株式会社人機一体、日本信号株式会社とともに開発を進めてきたもの」なのだそうだ。



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多機能鉄道重機



その特徴は、以下だ。



・インタラクティブ作用で直感的な操作が可能



・多様なツールの装備が可能



・遠隔操作で重量物(最大40kg)の把持、高所作業(最大12m)が可能



期待される導入効果は以下のようになっている。



・生産性の向上
作業に要する人手が約3割減少。



・安全性の向上
作業の機械化により労働災害(墜落、感電)ゼロを目指す。



・多様な人財の就業環境の創出
性別や年齢によらず高所での重作業に従事可能。



2024年9月18日から3日間、東京ビッグサイトで開催された「Japan Robot Weak」で、兄弟機の展示、デモンストレーションが実施された。トラックに架装したブームの部分は建機メーカーのタダノが請け負い、緩衝部品などは椿本チエインが担当したとのこと。このブースに、多くの人が集まっていたのはいうまでもない。



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多機能鉄道重機



実機の操縦は下部のコクピットからオペレーターが行うのだが、VR技術を併用しているところに大きな特徴がある。これにより、ロボットに搭乗したのと同じ目線で操作をすることが可能になって、人が行う高所作業と同様の感覚でオペレーションができるのだそうだ。まあ、ロボット部に搭乗して操縦すればおもしろいのだが、安全面、コスト面から採用するのは難しいだろう。



ロボットの顔の部分はカメラになっているが、これに顔を模したカバーをつければよりロボットらしくなる。

アーム先端も5本指にすることで、より細かな作業が可能になるかもしれない。オプションアタッチメントは、さまざまなタイプのものを考えられるから「夢」はますます膨らんでいく。あとは「足」だが、これは「あんなの飾りです。偉い人にはそれがわからんのですよ」などといわれてしまうかもしれない(笑)。

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