この記事をまとめると
■クルマの前期型はデザイナーの狙いやクルマの性格が一番はっきりと現れる



■人気の名車には初期型にしかない特徴がありマニアが探しがち



■輸入車でも初期モノでしか味わえない魅力が詰まっているケースがある



初期モデルが一番個性的なクルマになっている名車を紹介

どこかで聞いたことがある「最新は最良」のフレーズ。機械である以上、最新モデルが正義であることは確かです。しかし、それはスペック上での話。

荒削りなドライブフィールや、デザイナーの意向が色濃く反映された初期型(前期型)のほうが、そのクルマ本来の姿であることもまた事実です。



そこで、初期型(前期型)が正義! なモデルをピックアップしてみました。



トヨタ・スプリンタートレノ(AE86型)

このモデルで真っ先に思い浮かべるのが「頭文字D」でしょう。ちなみに、ハチロクこと「AE86型」が現役だった時代、人気が高かったのはトレノよりもレビンでした。それを見事にひっくり返したのは、確実に「頭文字D」の存在が大きいといえます。劇中のモデルは「1型」とよばれる初期型のスプリンタートレノ GT-APEX。前期型のこのグレードには赤いシートと赤い内装色が採用されています。



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赤というよりはエンジ色に近い内装を持つGT-APEXは貴重な存在です。熱狂的な頭文字Dファンであれば、「せっかく手に入れるのであれば前期型のGT-APEX……」と思うはず。しかし、いまや高級車並みの価格帯になっているのが実状。ハチロク自体、これからバリバリに改造して乗るというより、コレクターズアイテムとなりつつありますね。



クルマは熟成されたモデル末期が一番……は絶対じゃない! マニアが「初期型」をこぞってほしがるクルマ7台
トヨタ・スプリンタートレノ(AE86)の赤いシート



ホンダ S2000

ホンダF1の全盛期を支えたエンジニアの多くが開発に参画したモデルが、1999年4月にデビューした「ホンダS2000(AP1型)」。最高出力250馬力/8300rpmという、超高回転型の2リッター直列4気筒VTECエンジン「F20C型」を搭載し、S800以来のFR&オープンモデルという、夢のようなパッケージのクルマだったのです。当時の生産ラインは初代NSXと同じ栃木県の高根沢工場だった点もファンには胸熱です。



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ホンダS2000のフロントまわり



しかし、2004年4月に同工場が惜しまれつつ閉鎖され、鈴鹿製作所にてS2000の生産が継続されることとなります。そして翌2005年にはマイナーチェンジが行われ、型式はAP2型へ。エンジンが2.2リッターとなるなど、大幅な仕様変更を行っています。



S2000フリークにとっては、原点でもある「2リッターエンジン&高根沢工場製」に価値を見出す人が多いようです。



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ホンダS2000のサーキット走行写真



ホンダ・インテグラタイプR(DC2型)

ホンダの「タイプR」のファーストモデルといえば、1992年にデビューした「NSX-R」であり、多くの人にとって憧れの存在であったことは確か。その後、1995年10月に3代目インテグラのスポーツモデルとして追加されたのが「インテグラタイプR」でした。



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ホンダ・インテグラタイプR(DC2)のフロントまわり



メーカーの熟練工が手仕事でエンジン部品の研磨を行った新開発の1.8リッター直列4気筒VTECエンジン「B18C」を搭載。最高出力200馬力/8000rpm、リッター当たり111馬力というハイスペックなインテグラタイプRに、当時のクルマ好きはイチコロとなってしまったのです。しかも、デビュー時の車両本体価格は222万円。現代の感覚からすればもはやバーゲンプライス。何かの間違いではないかとすら思える価格設定です。



輸入車にも初期型がいいといわれるクルマはある

マツダ・ロードスター(NA)

デビュー当時からすさまじい人気を誇っていたマツダ・ユーノスロードスター。Vスペシャルはもちろんのこと、後に数多くリリースされる限定モデルの影も形もない時代からのスタートでした。「テンロク」などと呼ばれる、1.6リッター直列4気筒エンジンを搭載したモデルのなかにも「前・中・後期」があり、1989年にデビューした初期型のモデルではデビュー時にATがなかったほどのスパルタンさだったのです(1990年にATを追加)。



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マツダ・ロードスター(NA)のフロントまわり



当時、人気(というか定番)オプションだった「スペシャルパッケージ」仕様ではなく、あえて素の「標準車」を手に入れることができたら……これは超ラッキー。連綿と続くロードスターの原点を知ることができるのです(ただし、大幅なリフレッシュが必要かもしれません)。



日産 フェアレディZ(Z32)

1989年7月から2000年8月まで、じつに10年以上も生産・販売されたZ32型のフェアレディZ。これほどのロングセラーモデルともなると、デビュー時の1型~最終モデルの6型までさまざまな仕様変更が行われています。ただし、デビュー当時の仕様が楽しめるのは1型のみ。



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日産フェアレディZ(Z32)のフロントまわり



とくにジャージ柄のシート/カーペット生地は1型のみであり、2型以降は表皮が変わります。また、3型になるとリヤスポイラーの形状ならびに内装の意匠が変更されるなど、マイナーチェンジを繰り返すたびに少しずつオリジナルの姿から形を変えていくことになります。



Z32型本来のデザイン、そして仕立てを追求するなら1型にこだわりたいところですが、現存する個体がかなり減ってきています。Z32の専門店に想いを託し、極上の1型が出てくるまでじっくりと軍資金を貯めておきましょう。



番外:輸入車編

輸入車で初期モデル狙い……となると、いまだに根強い人気を持つフェラーリF355であれば「PA型(PAシャシー)」と呼ばれるモデルがあります。1994年5月の生産開始から10月までの個体と、F355のモデルライフのなかでももっとも短期間です。PA型のみ運転席および助手席ともにエアバッグなし。



このあとの中期型にあたる「PR型」では運転席に(途中から助手席にも)エアバッグが搭載され、後期モデルの「XR型」では、エンジンマネジメント方式がボッシュ製モトロニックM2.7からM5.2へと変更されています。

安全性や排ガス規制に伴う仕様変更を繰り返した時代のクルマでもあるのです。



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フェラーリF355のフロントまわり



そしてもうひとつ例に挙げると、「W124型」メルセデス・ベンツEクラスがあります。そのなかでも「500E」と呼ばれる前期型は、当時経営難に陥っていたポルシェに対する救済処置として開発に関与したとされています。専用デザインのバンパーや、張り出したフロントフェンダーはクルマに詳しい人でないと見わけがつかないくらいのさりげなさが魅力です。



クルマは熟成されたモデル末期が一番……は絶対じゃない! マニアが「初期型」をこぞってほしがるクルマ7台
メルセデス・ベンツ500Eのフロントまわり



また、前期型の生産工程の一部をポルシェ社の工場で行ったことから「500E(後期型はE500に改称)」の人気が高いこともうなづけます。

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