この記事をまとめると
■韓流ドラマで使われるクルマに韓国車が増えて来た■アメリカのドラマではアメ車が多かったが最近はトヨタやレクサスも登場する
■劇用車に向いている絶妙なバランスのクルマを選ぶのが難しい
韓流ドラマの劇用車に変化あり
2003年、日本の地上波放送で「冬のソナタ」が放映され高視聴率をマークすると、「第一次韓流ブーム」が日本国内に沸き起こる。「冬のソナタ」の大ヒット以降、日本では「韓流ドラマ(韓国のドラマ)」が相次いで放映されるようになった。
韓国ヒョンデ自動車には「ソナタ」という、トヨタ・カムリと同等サイズのモデルがある。
ただ、劇中車として登場しているわけでもないし、ドラマとも関係はなかったのだが、取り扱いディーラーには熱心な韓流ファンの女性が押し寄せ、「何かグッズがあったらほしい」といわれたそうだ(もちろんそんなものはない)。ただ、そんな声が多かった反面、目立って新車販売台数を押し上げるということはなかったようだ。
韓流ドラマはそのストーリー性もあるのか、一度見ると続きが気になりハマってしまうようで、筆者も何本かハマってしまい視聴を続けた記憶がある。
一方、その当時の韓国の現代を舞台にしたドラマでは、主演俳優や女優が乗るクルマはほぼ欧米車であった。いまの韓国では、富裕地域とされる江南地区あたりいけば、日本並みもしくは日本以上に欧米車や日本車などの韓国で見れば「輸入車」がたくさん街なかを走っているが、当時の韓国だとまだまだ輸入車は少数派であり(あってもメ,ジャーなドイツブランド車ばかり)、そのような街なかの風景に対し、ただでさえ少数派の輸入車のなかでも、とくに見かけるのがまれなブランドのモデルを俳優陣が劇中で乗りこなすという場面は、筆者にとっては違和感しか覚えなかった(当時ソウルは何回か訪れていたので街の様子は見ていた)。

そして令和のいまでは、単なるブームという枠を超え、地上波、BS、CS放送などで日々韓国のドラマが放映されるようになった。
そして筆者は最近、ひょんなことから視聴癖のついた韓国ドラマが1本ある。そのなかで、メインキャストである企業経営者役の俳優がヒョンデの上級ブランドとなる「ジェネシス」に乗っていた。映像でははっきりはしないのだが、その奥さんのクルマも韓国ブランドのモデルのようであった。
このドラマだけではなく、最近の韓国ドラマでは主演級の俳優が劇中で乗るクルマが韓国車というのが当たり前のようになっているようだ。

もちろん、なんらかのガイドラインのようなものがあり、劇中車は自国ブランド(ここでは韓国車)にするようになっているのかもしれないが、そんなことがなくとも、劇中使用しても第一次韓流ブームのころの韓国車に比べれば、少なくとも内外装の垢ぬけた車種が多くなっているので、ドラマの小道具として十分使えるようになったと判断しているのかもしれない。事実、首都ソウル市内ではたくさんのジェネシス車を見かけることができる。

また、韓国の自動車市場も熟成期に入っており、劇中で人気俳優に乗ってもらうといったイメージ戦略を必要としないほど、輸入車マーケットというものが出来上がったのかもしれない。
リアルすぎず浮世離れしていない絶妙なクルマ選びが難しい
アメリカの4大ネットワークのひとつで放映されている刑事アクションドラマでは、登場してくる刑事の乗る覆面捜査車両はすべて、ステランティスグループ傘下のクライスラー系ブランド(ジープとダッジ)となっている。
1980年代に起こった日米貿易摩擦のころには、ドラマ内で使用する家電に至るまで日本製の仕様は自粛されていた。仮に日本ブランドのテレビを使ったとしても、ブランドロゴ部分に黒いテープなどが貼られていた。そのころの名残りがいまも残っているのか、現在でも日本車がメインで活躍するアメリカのドラマや映画はそれほど多くない印象がある(ワイルドスピードのような日本車だらけの作品もあるが)。

自国ブランドがあるなか、警察の公用車となるのだから、アメリカンブランド車であるのは当たり前ともいえる。しかし、前出のドラマでは、刑事のプライベート車両でトヨタやレクサスブランドのクルマが登場してくる。また、街なかでの尾行やカーチェイスシーンでは、当該車両の周辺を走っている車両のなかに必ずといっていいほど、韓国系ブランドの新車が映りこんでおり、この点はなんらかの意図的なようなものを感じている。
日本だけではないが、海外ドラマでも最近では、最新車両ではドラマが「生臭く」なってしまうのか、旧車を使うパターンも増えてきている。
筆者は国内外を問わず、現代劇ならばドラマでも映画でもストーリーより、登場してくるクルマがどんなものであるかをチェックしている。

ただ、いまの日本でよく売れている新車といえば、軽自動車、ミニバン、そして比較的コンパクトなSUVと、かなり偏っている。輸入車でいえばドイツ系の比重がかなり高い。リアルに劇中車を選ぼうとすると生活臭が強いし、輸入車だと選択肢は限られてしまう。絵面も考えてドイツ系以外の輸入車が頻繁に出てくれば浮世離れしてしまう可能性もある。「それならばいっそのこと」ということで、見栄えのいい過去のモデルに主役を乗せるという流れになっているのかもしれない。

日本のあるドラマを見ていると、室内小物として家庭用ワインクーラーが中国系メーカー製で、そのままブランドも隠さずに放映されていて驚いたことがある。冷蔵庫や洗濯機などメイン製品ではない、「ニッチ製品」では、日本メーカー製が存在しないということもあるのかもしれないが、ほかでも中国系家電ブランド名を隠さず製品が使われていたのも見かけたことがある。
すでに細かい工業製品では、「日本メーカー製がない」という物も多くなっているので、その点では仕方がないのかもしれないが、長い目でみると、さまざまな理由から「なぜ日本のドラマなのに、ドラマに出てくるクルマはアジア系(主に中国や韓国)ブランドばかりなのだ」と、SNSなどで大炎上してしまう日が来るのではというのは、くれぐれも筆者の考えすぎであってほしい。