この記事をまとめると
■初代デルタはWRCでの活躍や特別仕様車の影響で圧倒的な人気を誇る



■2代目・3代目と続くが、ホットモデルの用意もなく初代のファンには受け入れられず



■初代のイメージを期待しなければ悪くないクルマだ



クルマ好きなら誰しもが知る「デルタ」のその後

何世代も続いたモデルだと、初代がいい、いや2代目だ、3代目だって魅力的だぞ! みたいなことになりがち。ですが、ことランチア・デルタとなると圧倒的に初代以外は認めない! という方が大半ではないでしょうか。マッシブ感あふれるブリスターフェンダーや、直立しているかのようなリヤスポイラー、はたまたラリーイメージのグラフィックなど、たしかに初代デルタの存在感は偉大といってもいいレベル。



ランチア・デルタだけは「初代が最高」に異論は認めん! どう考...の画像はこちら >>



対して2代目、3代目となると「これじゃない感」満載といわざるを得ない気がします。決して悪いクルマではないのでしょうが、初代に押されて影の薄くなったモデルを振り返ってみましょう。



ランチア・デルタの初代は1979年に発表された「普通の」FF 5ドアハッチバックでした。普通といっても、カロッツェリア・イタルデザインがスタイリングを担当していますから、ライバルと目されたフォルクスワーゲン・ゴルフに勝るとも劣らないデザインだったことは確かでしょう。



ランチア・デルタだけは「初代が最高」に異論は認めん! どう考えても「これじゃない」感漂う2&3代目
初代ランチア・デルタのフロントスタイリング



これが、1.6リッターDOHCターボを搭載したHFターボ、次いでHF 4WDになったころがデルタ無双のスタートかと。ちなみに、HFはHigh Fidelity、いわゆるHi-Fiの略で、高品質をうたったランチア伝統のイニシャルです。



ランチア・デルタだけは「初代が最高」に異論は認めん! どう考えても「これじゃない」感漂う2&3代目
初代ランチア・デルタ HF 4WDのリヤスタイリング



ご承知のとおり、その後デルタはHFインテグラーレとなってWRCで大活躍をするわけで、これが初代のイメージリーダーとなっていることは間違いありません。エボルツィオーネの名を冠し、さまざまな限定モデルがリリースされ、それらはことごとくプレミア価格となっていることも「初代がベスト!」の大きな理由でしょう。



ランチア・デルタだけは「初代が最高」に異論は認めん! どう考えても「これじゃない」感漂う2&3代目
デルタHFインテグラーレのフロントスタイリング



あまりに強いラリーのイメージが裏目に

そんなデルタの2代目は、なんと初代の最終モデル(コレクション、正式名称ランチア・デルタ・アッカエッフェ・インテグラーレ・エボルツィオーネ・ドゥエ・コレツィオーネ・エディツィオーネ・フィナーレ)がまだ売っているタイミング、すなわち1993年にリリースされています。ランチアのお家事情で、フィアットのパッケージを使わねばならなかったのですが、これはアルファロメオ155と同じだったと聞けば少しは溜飲も下がるのかと。



ランチア・デルタだけは「初代が最高」に異論は認めん! どう考えても「これじゃない」感漂う2&3代目
2代目ランチア・デルタのフロントスタイリング



また、5ドア・ハッチバックのスタイリングもカロッツェリア・イデアがスマートにアップデートを行い、フィアット・テンプラや、もちろん155ともはっきりとした差別化に成功しているのです。しいていえば、ブリスターやウイングのなかったころの初代デルタにほど近いスタイルで、「シンプルでスマート」ともいえるもの。



ランチア・デルタだけは「初代が最高」に異論は認めん! どう考えても「これじゃない」感漂う2&3代目
2代目ランチア・デルタのサイドビュー



ですが、クルマ好きとしては獰猛で躍動感あふれるエボルツィオーネのイメージがあったわけですから「これじゃない」と一笑に付してしまったわけですね。WRCのレギュレーションが変わったことや、ランチアが参戦しなくなったことからホットな仕様が登場しなかったことも売り上げの足を引っ張ったといえるのではないでしょうか。



1999年に2代目の生産がひっそりと終了すると、デルタの名前は2006年のパリモーターショーまでカタログに載ることはありませんでした。この年はランチアの創立100周年というセレブレーションであり、また3代目デルタは同社にとって21世紀初のニューモデルという栄えあるものだったのです。



ランチア・デルタだけは「初代が最高」に異論は認めん! どう考えても「これじゃない」感漂う2&3代目
3代目ランチア・デルタのフロントスタイリング



フィアットと共有するチェントロ・スティーレによるデザインは、ところどころにランチアのモチーフが取り込まれたほか、「フライング・ブリッジ」と名付けられた広大なガラスルーフは、シューティングブレイクのニュアンスまで醸すもの。



実際、ラゲッジスペースは400リットルもの容量を誇り、ランチアらしいエレガントに実用性まで加えてみせました。さらには、BOSEのハイファイシステムのほか、フィアットがマイクロソフトと共同開発したインフォテイメントシステム「ブルー&ミー」を搭載するなど、ラグジュアリー感も十分だったかと。



ランチア・デルタだけは「初代が最高」に異論は認めん! どう考えても「これじゃない」感漂う2&3代目
3代目ランチア・デルタのリヤスタイリング



しかしながら、やっぱりデルタ好きにとってエレガント&ラグジュアリー要素は微妙だったのかもしれません。また、これも致し方ないのですが、フィアット・スティーロのパッケージを流用というのも、生粋のランチアファンとしては受け入れがたいものがあったのでしょう。



それでも、クライスラー・デルタの名前でもってイギリスで販売されると、アルカンタラを使ったインテリアや、吸気効率化システムのマルチエア搭載エンジンが評判となり、そこそこの売れ行きを示したのだとか(ランチアはイギリスから撤退しており、グループのクライスラーを販売戦略的に名乗ったとのこと)。



ランチア・デルタだけは「初代が最高」に異論は認めん! どう考えても「これじゃない」感漂う2&3代目
3代目ランチア・デルタのインテリア



誤解を恐れずにいえば、初代創始者が築いたものを息子や孫が活かしきれなかった、デルタにはそんなイメージが根づいてしまったかのようです。中古車市場での初代はすでに経済合理性を逸脱していますが、それ以外はこなれた価格。

初代同様、もしかしたらそれ以上にレアなモデルかもしれませんが、初代原理主義者でもない限り、それなりに納得できるクルマであること間違いありません。

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