この記事をまとめると
■青森県でスバルの雪上試乗会が開催された■レヴォーグ・レイバックに乗ることができた
■桂 伸一さんによるインプレッションをお届けする
CVTのネガは感じない
降雪地帯で乗るレヴォーグ・レイバックはどんな走りをするのだろうか。スバル初のストロングハイブリッド、クロストレックの公道試乗に選ばれた地は雪深い青森。市内から酸ヶ湯温泉までの高速道路から山道を往復する試乗コースで、レイバックにも乗る。
大人3名乗車で青森市街地からまずは高速道路へ。日常のアシにSUV系を好む者からすると、標準のレヴォーグよりもレイバックの車高に起因する着座位置とアイポイントの高さを好む。
それは視認性がいいという意味で、標準レヴォーグよりレイバックの存在を車格感として上!? と捉えているのもそんな理由から。
ドライブモードは乗るクルマのクラスにかかわらず、標準かエコを選ぶ。アクセル操作に対するエンジンの応答特性を確認するためだ。
スバルは基本、Iモードから。信号からのゼロスタートでエンジンレスポンスとリニアトロニック=金属ベルト駆動のCVTは、クッと身体に感じる程のダイレクトな応答感とともにスタートする。

CVTはゼロ発進の鈍さ、中間加速の応答遅れを含めて好みではない筆者だが、レイバックにそのネガティブな印象はない。
予想にいい意味で反したワケは、1.8リッターターボが低回転からターボトルクを素早く立ち上げ、CVTのロックアップも加わり、市街地走行でもアクセル踏み込み量に対して空転感(ゴムバンド感)がなく瞬時にダイレクトな応答がドライバーの期待に沿うため。

高速走行で見せる滑らかで静粛性の高い走行性こそ燃費も含めたCVTの美点だと改めて思う。Iモードのまま加減速を繰り返すと、100km/h付近ではレスポンスに一瞬の間によるもどかしさを感じる。だが、それはSモードにした瞬間に解決。
スバリストには、せっかくあるパドルの活用がおすすめ。左のパドル操作と瞬時にエンジン回転が上がり、減速と同時に加速にも転じられるからで、ギヤミッションと違い、かなり高い速度からでもいわゆるシフトダウン感が味わえ、ヒトの感性に忠実で気もちいい。
高速では乗り味の滑らかさがいいと3名とも同意見。タイヤはヨコハマiG70。スタッドレスの関係もあるが、バネ/ダンパーとタイヤの撓み(縦バネ)も見事にバランス取りがされていて、純正装着か、と錯覚する。
さまざまな路面状況に対応
ステアリングは転舵する力も保舵する力も必要なく軽い。高速でひとつ気になるのは直進の中立付近が過敏なこと。本来なら手を添えていればいい部分で、微妙に左右に修正する必要がある。
そこをエンジニア氏に尋ねると、レイバックはステアリングギヤレシオがクイックなままフル転舵まで刻まれている。
一方、乗り換え試乗で比較対象になるクロストレックは、バリアブルレシオで初期はクイックだが大舵角に向かうほどスローに変化する。クルマのキャラクターからすると、ステア操作に対する動きはクロストレックとレイバックを入れ替えていいのではないかと思う。

クロストレックのほうが全体的に重めの操舵感があり「女性からは重いといわれるかもしれません」……とのことだが、個人的には中立付近の立ちのよさ、重さ感と安定性もクロストレックに軍配を上げる。
そこはクルマのキャラクターも関係するが、エンジニア陣も時代時代で、「このほうがマッチするのではないか」と考えられる最良を仕込んでいるので、尊重したい。
つまりクロストレックが新しい考え方である。

酸ヶ湯温泉までの山道はマイナス3度で路面は圧雪が溶けて凍結。
路面状況に応じて滑るところは滑るが、その路面の変化を目視だけではなくクルマ側からステアリングを通して感じさせる点が素晴らしい。滑りは手応えが軽く、接地感も乏しいので、ここはアクセルもブレーキ操作も初期をじんわりとソフトに加えることで挙動の乱れは防ぎやすい。
青森まで向かい、雪上でのスバル車の優位性を存分に味わう……。という目論見は結果、好天が雪を溶かし、シャーベット状からウエット~ドライの変化で、結果からいうとどの路面もごく普通に、何のテクニックも必要なく走破した。

レヴォーグ・レイバックとクロストレック。キャラクターの違う2モデルに、2.5リッターストロングハイブリッド、片や1.8リッターターボCVTと、比較する対象ではないが、ターボラグを感じさせない素直なレイバックの全体的なバランス感覚に好印象をもった。
レヴォーグ、という名が走りをイメージさせるので、レイバック単独の名称でいいのではないか、と思った。
