この記事をまとめると
■クルマのタイヤ空気圧指定値は重量や燃費要件によって値が決まる■同じ車種でも乗員や積載量によって指定値が変化する
■メーカーの指定値を守るのが基本だが状況に応じて安全な範囲で調整しても問題ない
タイヤの空気圧指定値はボディタイプやグレードで異なる
愛車のメンテナンスにおいて、欠かせないメニューといえるものに「タイヤ空気圧調整」がある。タイヤというのは空気圧によって車体を支えているという面もあり、空気圧が足りないとタイヤが潰れた状態になってしまう。当然ながら、規定の空気圧になっていないと走行面でさまざまなネガが現れる。
では、規定の空気圧はどうやって知ればいいのだろうか。車両の説明書などにも明記されているが、たいていのクルマでは運転席のドアを開けたボディ側か、フューエルリッドの裏にタイヤ空気圧を記したステッカーが貼ってある。そこに書かれた数値に合わせて調整すればいい。
とはいえ、このステッカーには複数の数値が書かれていることがある。
たとえば、三菱の軽SUV「デリカミニ」の場合、FF車は240kPa、4WD車は250kPaと異なる指定値になっている。なぜ、このようなことが起こるのだろうか?
例にあげたデリカミニの場合、FFと4WDではタイヤサイズが微妙に異なる。FFの上級グレードは165/55R15となっているが、4WDは全車165/60R15と偏平率の違うタイヤを履いている。さらに、車両重量も4WDのほうが重くなっているため、空気圧を高めた設定にしているといえる。

そのほか、空気圧を高めるほどタイヤの転がり抵抗を減らせる傾向になる。そのため、燃費性能を重視したグレードや、逆に燃費に不利なパワートレインを積んでいるグレードについて、標準的なグレードより高めの空気圧を指定していることもある。
タイヤにかかる輪重に応じて空気圧の指定値は変わる
ミニバンなどでは乗員数、商用車では積載量に応じて指定空気圧が変わるケースもある。
たとえば軽商用バンの人気モデル、スズキ・エブリイでは、軽積載時は前240kPa・後260kPaの指定値となっているが、荷物を多く積んだときには前280kPa・後350kPaに調整するように指定されている。

輸入車の3列シートモデルなどでは、もっと細かく条件にあわせたタイヤ空気圧が指定されていることもある。いずれにしても、車両を支えているタイヤ(空気圧)は重量の変化に応じて適正に調整する必要があるということだ。
余談になるが、前後でタイヤサイズが異なるスポーツカーでは、前後で指定空気圧が違っているケースも珍しくない。
下に示しているのはホンダの初代NSX(後期型)の空気圧指定ステッカーだが、フロントが230kPaと標準的なのに対して、リヤは280kPaと乗用車としては極端に高い数値となっている。応急用タイヤも前後どちらに装着するかで空気圧の指定値が異なっているのは、軸重の違いにあわせた空気圧とすることの重要性を示しているといえるだろう。

最近のモデルでは、発表から5日で受注一時停止となったスズキ・ジムニーノマドのタイヤ空気圧は前後180kPaが指定値となっている。燃費重視の乗用車では250kPa前後の空気圧を指定することは珍しくないが、オフロード走行を考慮したジムニーでは比較的低めの空気圧が指定されていると理解できる。

いずれにしても、タイヤ空気圧というのは安全に走るためには指定値を守ることが重要だ。しかしながら、タイヤ空気圧の指定値が積載量などによって変わるということは、状況に応じて調整することに意味があることを示しているともいえる。
安全性を考えると極端に空気圧を変えてしまうのはNGといえるが、クローズドコースなどにおいて10kPa単位で調整することで走り味の変化を楽しむというのも奥深い趣味となるだろう。

そうはいっても、自動車メーカーはタイヤの指定空気圧においてウェルバランスとなるようサスペンションやブレーキ、電子制御をセッティングしているものであり、公道を走る際にはタイヤ空気圧が指定値になるよう調整することが基本中の基本であることは留意しておきたい。