この記事をまとめると
■クルマのパーツを製造する過程で出てしまう廃材が別のアイテムとして再利用されている



■トヨタではシートに使用された牛皮をパスケースやペンケースに作り直している



■廃棄されるエアバッグを素材としたカバンも販売されている



製造過程で出る廃棄素材を再利用した製品が続々登場

約3万点にものぼる多くの部品からつくられているクルマ。人の命を預かることになるクルマだけに、すべてが厳しい基準をクリアした優秀な部品であり素材であることは間違いなくいえると思います。



でもじつは、実際にクルマの一部に部品や素材として使われるものの陰に、縫製の都合上どうしても余ってしまったり、製造過程で出てしまうため廃棄される運命にある部分というのもあるといいます。

そうした素材のリデュース、リユース、リサイクルへの取り組みをご紹介します。



まずトヨタが取り組んでいるのは、シート用の牛皮で小さなキズやシワがあるだけで使用できなかったり、型をくり抜いたあとに残った部分をリサイクルして、素敵なペンケースやIDカードホルダーなどの素材として活用する取り組みです。余った皮といっても皮のなかでは相当にいい皮なので、それを使うと新しい製品としても質の高いものが生まれ、長く使える製品として世に出すことができるのです。



クルマ製造のリサイクルはここまできてる! 廃棄エアバッグ素材...の画像はこちら >>



しかも、IDカードホルダーを製作すると、今度はまた小さな端材が生まれるため、それを使って読書などに使う栞(しおり)を作っており、将来的には100%使い切ることを目標にしているそう。さらに作る側の人にとっては、クルマ向けの皮はもともと厚みが均一になっているため、縫製がしやすいという声もあるとのこと。作られた製品はECサイトでの販売もしており、社外のファンも増えているそうです。



クルマ製造のリサイクルはここまできてる! 廃棄エアバッグ素材のバッグにシート地の端材で作ったパスケースなど100%使い切りの取り組みがスゴイ
トヨタのアップサイクルプロジェクトで生まれたリサイクル商品



また、FCEV用の水素タンクを製作するときに、樹脂パーツを射出成形するとどうしても発生してしまう「パージ材」と呼ばれる素材があります。見た目はちょっと「脳みそ」みたいでグロテスクなのですが、これは樹脂パーツを水素タンクの金型に流し込んで成形する際に、設備の配管に樹脂が溜まると酸化して不良品の原因となるため、毎日排出する必要があります。そのときに出てくるのがこのパージ材というわけです。



クルマ製造のリサイクルはここまできてる! 廃棄エアバッグ素材のバッグにシート地の端材で作ったパスケースなど100%使い切りの取り組みがスゴイ
パージ材のイメージ



これまでは、毎日約20kg、1カ月にすると400kgものパージ材が焼却処分されていたそうですが、これをなんとかしようと社外のクリエイターや学生とのワークショップなどを行い、アップサイクルする取り組みを始めたのです。その結果生まれたのが、フラワーベースやワインホルダー。これまで捨てられていたものが、アイディアによって素敵なものとして第二の活躍の場が与えられるというのは、素晴らしいことですね。



このほか、エアバッグに使われるナイロン基布とシートベルトの端材を活用して作られた、バッグなどのアウトドアプロダクトも「かっこいい」と好評です。もともと、強度や耐久性は抜群の素材を使っているだけに、アウトドアによるハードな使用環境にもピッタリですね。



クルマ製造のリサイクルはここまできてる! 廃棄エアバッグ素材のバッグにシート地の端材で作ったパスケースなど100%使い切りの取り組みがスゴイ
トヨタのアップサイクルプロジェクトのトートバッグ



エアバッグの素材は撥水性や汚れにも強い

次に、「ノイ・インテレッセ」などのブランドを手がけるアパレルメーカー、株式会社モルフォでは、ステアリングやシフトノブに採用されている、イタリア・キオリーノ社製のカーボンハイブリッドレザーを使った「Nachat(ナハト)」シリーズや、そこに撥水性や耐久性を加えた「Schatten(シャッテン)」シリーズ、クルマのシート用として国内でなめされたエンジニアリングレザーが使われるノイ・インテレッセのハイエンドラインとなる「Indigenous N(インディジェナス・エヌ)」があります。



特殊なウレタンコーティングと仕上げ方法で過酷な状況下での耐久性を満たしつつ、柔らかく心地よい肌触りも実現していおり、クルマ好きからの支持が厚いブランドなのですが、こちらにも端材や廃棄されるはずの素材を活用したアイテムがありました。



クルマ製造のリサイクルはここまできてる! 廃棄エアバッグ素材のバッグにシート地の端材で作ったパスケースなど100%使い切りの取り組みがスゴイ
「ノイ・インテレッセ」ブランドの財布などの商品



それが、ひと目見ただけでオシャレで上質でしっかりとした製品だとわかるバッグで、じつは廃棄されたエアバッグを使った製品だったのです。



また、タイヤのゴム層のなかに織り込まれ、タイヤが受ける衝撃や荷重、充電空気圧に耐える役割を持つという超強力ナイロン系を使用したバッグもありました。もともとバッグ用に開発された素材ではないため、製品化には高い技術が必要とのことですが、その代わり撥水性も高く、汚れや衝撃にも強いということで、ゲリラ豪雨なども多い近年ではビジネスシーンでも重宝されているそうです。



クルマ製造のリサイクルはここまできてる! 廃棄エアバッグ素材のバッグにシート地の端材で作ったパスケースなど100%使い切りの取り組みがスゴイ
「ノイ・インテレッセ」ブランドで販売されているエアバッグのバッグ



こうして、クルマになれなかった素材たちや、クルマとしての役割を終えた素材たちが、再び生まれ変わって世のなかに出てくれるというのは、いつまでもクルマに乗り続けるためにも大切な取り組みではないでしょうか。ぜひ100%使い切りを目指して欲しいですね。

編集部おすすめ