この記事をまとめると
■日産とホンダの経営統合は正式に破談となった



■ホンダはハイブリッドが強みで日産はEV技術が自慢だ



■技術面や販売面で業務提携をするメリットは大きい



経営統合は幻に

日産の業績悪化を発端に、日産とホンダが経営統合する話がもち上がった。当初は両社で共同の持株会社を設立して、ホンダと日産をその子会社にする案があった。しかしその後、ホンダを親会社、日産を子会社にする案がホンダから示され、日産は対等な立場を重視したから経営統合は破談した。



消費者の立場で見ると、もともと日産は商品開発の甘さが目立った。当初の日産は電気自動車に力を入れたが、現実的にはハイブリッドも求められた。そこで電気自動車のユニットを使って、少ないコストと短い時間でシンプルなハイブリッドであるe-POWERを開発した。



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e-POWERはいわば間に合わせのシステムだから、1.2リッターエンジンを使うタイプは、ブレーキペダルと回生機能を協調させていない。Dレンジのノーマルモードで走り、ブレーキペダルを踏むと、燃料消費量を効果的に減らせない。なので恩恵を受けるには、エコ/スポーツモードを使うなど、アクセルペダルを戻すと同時に、協調による強い減速力が生じるモードにしておく必要がある。



また、e-POWERは、ホンダのe:HEVなどと違って、高速走行でエンジンがホイールを直接駆動して燃費を向上させる制御も行えない。そのために、高速巡航時の燃費を向上できず、直線かつ高速域での移動が多い北米には、ノーマルガソリンエンジン搭載車を投入していた。



このように、e-POWERは機能に不満があるため、日産は高効率なハイブリッドを急いで開発すべきだったが、日本国内ではe-POWERが予想以上の人気を得た。事実、2018年には、e-POWERを搭載するノートが小型/普通車の国内販売1位になっている。この事情もあって日産は、e-POWERよりも進歩したハイブリッドを開発せず、そのほかの強い魅力も表現できず、業績を悪化させた。



ホンダと日産の経営統合破談! そもそも「ホンダにあって日産にないもの」「日産にあってホンダにないもの」って何があった?
日産ノート e-POWER(2代目)の走行写真



つまり、日産とホンダの違いは、大急ぎで開発されたシンプルなe-POWERと、高機能なe:HEVの差に置き換えられる。

この状況では、ホンダが日産の上位に立ちたいと考えたことも理解できる。



タッグを組むと巨大組織に

ホンダと日産の経営統合は破談になったが、電動化に際しては、駆動用電池を始め共通化できるユニットや技術が多い。とくにホンダは、2040年までにエンジン搭載車を廃止する方針も掲げている。そのために今後も両社の業務提携は成り立つ。ハイブリッドは前述のとおり、ホンダのe:HEVが優れ、CR-Vには燃料電池車のe:FCEVも設定した。



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ホンダCR-V e:FCEVのフロントスタイリング



その一方で日産には電気自動車が豊富だ。軽自動車のサクラ、ミドルサイズハッチバックのリーフ、上級SUVのアリアがあり、日産とホンダで互いに供給できるユニットやパーツも生じるはずだ。



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日産のEVラインアップ



とくに日本の道路や使用環境に合った電気自動車は軽自動車になる。そのためにサクラの2024年の売れ行きは、日本国内で販売された電気自動車の37%に達した。これは、新車として売られる電気自動車の3台に1台以上がサクラとなる数字だ。



そして、軽自動車は開発や製造コストの割に価格が安い。つまり利益が少ないため、パワーユニット、駆動用電池、プラットフォームなどを複数のメーカーで共通化したいとメーカーは考える。

日産&三菱とホンダはそれぞれ軽自動車を手がけ、今後は日本で有利な電気自動車として車種を増やすはずであるから、提携するメリットも大きい。



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日産サクラと三菱ekクロスEVの生産開始の発表会



このほか、販売面の提携も考えられる。国内の販売店舗数は、ホンダが約2100カ所、日産は約2000カ所、トヨタは約4400カ所だ。ホンダと日産が販売面で提携すると、トヨタに対抗できる数字となる。地域の性格に応じてホンダと日産の合同店舗を設けたり、レンタカーやカーシェアリングの合同ステーションを設置する方法もある。定額制カーリースを両社で効率良く運営することも可能だ。



経営統合で失敗しても、業務提携する効果は十分にある。両社が意地を張らなければ、将来に向けて多岐にわたる業務提携を実現できるはずだ。

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