この記事をまとめると
■ショーモデルは「コンセプトカー」「スタディモデル」「プロトタイプ」などと呼ばれる



■「プロトタイプ」は市販状態に限りなく近い仕様であることが多い



■「スタディモデル」→「コンセプトカー」→「プロトタイプ」という変化で量産に向けた開発が進められていることがわかる



一番量産モデルに近いのは「プロトタイプ」

いわゆるモーターショーにおける、スターといえるのがメーカーなどが出品するショーモデル。量産車にはない華をもつ夢のクルマだ。



こうしたショーモデルは、「コンセプトカー」、「スタディモデル」、「プロトタイプ」など、さまざまな呼び方をされていたりする。

はたして、これらの呼び方には明確な違いがあるのだろうか?



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筆者は浅学ゆえ、残念ながらこうした用語に明確な基準があるという話を聞いたことはない。そこで長年の経験から感じる傾向として、この3つの呼び方を整理してみたいと思う。



結論からいえば、このなかでもっとも量産モデルに近い状態は「プロトタイプ」といえる。逆に、もっとも量産から遠いのは「スタディモデル」だろう。



ひとくちに「プロトタイプ」といっても、その仕上がりはさまざま。だが、「ほぼ量産仕様であるけれど、イベント時点では正式発表していないからショーモデルとして展示しよう」という新型車の場合、ほとんどのケースにおいて「プロトタイプ」と呼ばれている。



自動車ショーの華「ショーモデル」! 「プロトタイプ」「スタディモデル」「コンセプトカー」なんて色々呼び方あるけど何が違う?
スバル・レヴォーグプロトタイプの展示様子



ほとんど量産車といえる車両を、クローズドコースなどでメディア関係者に乗せるときにも「プロトタイプ」というエクスキューズがつくことが多い。プロトタイプ(prototype)を辞書で調べると「試作機」と記されていることもあるが、試作という言葉の印象よりもずっと量産仕様に近い状態を指すのが、最近の自動車業界でのトレンドといえそうだ。



つまり、「プロトタイプ」というのは姿かたちやパワートレイン、シャシーなどが量産仕様となっているだけでなく、安全性や耐久性、塗装などにおいても市販できる状態に限りなく近い仕様と理解できる。



詳細な情報が公開できないと「コンセプトカー」という表記になる

一方、量産イメージにつながるデザインではあるけれど、まだ量産仕様に向けてブラッシュアップしている途中であったりするショーモデルは、「コンセプトカー」と呼ばれることが多い。



ただし、「コンセプトカー」といっても量産車との距離感は異なっている。外観は出てきているけれど中身のないモックアップであったり、パワートレインの設定が明確になっていなかったりするなど、まさに夢のクルマはコンセプトカーと呼ばれている。



自動車ショーの華「ショーモデル」! 「プロトタイプ」「スタディモデル」「コンセプトカー」なんて色々呼び方あるけど何が違う?
日産IMkコンセプトの発表様子



はたまた詳細情報を出せないフェイズであったりすると、量産に近いイメージまで仕上がっていても、プロトタイプではなく「コンセプト」と名付けられることもある。



最近のケースでいえば、ホンダの「プレリュード」がわかりやすい。



2023年のジャパンモビリティショーでは「プレリュード コンセプト」となっていたが、2025年の大阪オートメッセなどに出展された際は「プレリュード プロトタイプ」となっていた。写真を並べてみるとわかるが、プロトタイプになるとナンバープレートの装着を考慮したデザインとなっており、まさに量産間近であると実感できる。



自動車ショーの華「ショーモデル」! 「プロトタイプ」「スタディモデル」「コンセプトカー」なんて色々呼び方あるけど何が違う?
大阪オートメッセ2025で展示されていた「ホンダ・プレリュード プロトタイプ」



また、「コンセプトカー」のなかには、まったく量産を意識していないような、本当に夢を具現化したといえる場合もある。



そうしたショーカーについては、技術的アピール要素が強い場合は「テクノロジーショーケース」と表現することもあるし、スタイリングの提案がメインとなっている場合は「デザインスタディ」と呼ぶこともある。いずれにしても量産をそれほど考慮せず、あくまで初期アイディアをカタチにしたもので、まとめて「スタディモデル」と呼ぶこともある。



自動車ショーの華「ショーモデル」! 「プロトタイプ」「スタディモデル」「コンセプトカー」なんて色々呼び方あるけど何が違う?
ダイハツ・ビジョンコペンのフロントスタイリング



またまた、ホンダ車を例にあげてしまうが、軽2シータースポーツカーとして一世を風靡した「S660」のデザインスタディといえるのが、2011年のショーカー「EV-STER」だったことは周知の事実。EV-STERの段階では電動パワートレインを想定していた。



その後、2013年にはエンジン車の「S660 コンセプト」として進化した。こちらは量産に近いイメージのコンセプトカーといえる。そして2015年の発表前にメディア向けにプロトタイプを公開した後、4月に発売開始となった。

これこそがスタディモデル→コンセプトカー→プロトタイプの典型的な三段活用といえるだろう。



自動車ショーの華「ショーモデル」! 「プロトタイプ」「スタディモデル」「コンセプトカー」なんて色々呼び方あるけど何が違う?
ホンダEV-STERのフロントスタイリング



あらためて整理すると、量産間近といえるのが「プロトタイプ」で、つくり手の技術やデザインをアピールするのが「スタディモデル」。「コンセプトカー」という括りのなかにはプロトタイプ寄りもあれば、スタディモデル寄りも存在しているので、そこを見極める必要がある。



ちなみに筆者が、コンセプトカーがスタディモデル寄りかどうか判断するための基準としているポイントのひとつがワイパーやバックミラー。デザインスタディ要素が強い際には、こうした機能部品は省かれていることが多い。逆に、デザイン重視のコンセプトカーに見えてもワイパーなどが備わっていると、量産化に向けた開発が進んでいると判断するヒントになるだろう。

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