この記事をまとめると
■DTMは1984年にドイツ・ツーリングカー選手権として誕生した



■メーカー撤退や規則変更を経て2021年からGT3規定を採用する



■2025年は全8大会で争われ多彩なマシンが激戦を繰り広げる



「ハコのF1」と呼ばれ栄華を極めた

読者諸兄はドイツの人気レース「DTM」をご存じだろうか?



DTMとは、1984年に「Deutsche Tourenwagen Mastars」としてスタートしたドイツ・ツーリングカー選手権のことで、当初はグループA規定を採用。メルセデス・ベンツやBMW、フォードなど数多くの自動車メーカーが参入していた。



1993年からは4WDの採用やトラクションコントロールなど、ハイテクデバイスが導入されたほか、大幅な改造が許されるなど独自のレギュレーションを採用。

その結果、DTMは1995年に国際ツーリングカー選手権(ITC)に昇格するほどの発展を遂げており、“ハコのF1”として栄華を極めていた。



しかし、開発コストの高騰でメルセデスやアルファロメオ、オペルなど数多くのメーカーが撤退したことにより、ITCは1996年をもって終了した。



かつて「ハコのF1」とまで呼ばれてドイツで栄華を極めたDTM...の画像はこちら >>



DTMが「Deutsche Tourenwagen Masters」として復活したのは2000年に入ってからで、メルセデス、アウディ、オペルとドイツの3メーカーが参入。2006年には業績不振を理由にオペルが撤退したが、2012年にベース車両を4ドアセダンから2ドアクーペに変更したことで、1987年から1992年にかけて猛威を奮ったBMWが復帰していた。



かつて「ハコのF1」とまで呼ばれてドイツで栄華を極めたDTM! いまはどうなってる?
メルセデス・ベンツとアウディのDTMマシン



残念ながら2018年を最後にメルセデスがDTMから撤退したが、代わって2019年にはスイスのチームがアストンマーティン・ヴァンテージで参戦したことは記憶に新しい。



さらに、DTMはドイツ国内のみならず、国際シリーズとしてイギリスやスペイン、オランダにも“輸出”されており、ヨーロッパで人気のシリーズに成長したことも、DTMを語るときには欠かせないエピソードだ。



レギュレーションの模索を繰り返し現在はGT3規定に

また、DTMは日本発の国際シリーズ、スーパーGTのGT500クラスとレギュレーションの統一化が実施され、両シリーズともにクラス1規定を採用。2017年のDTM最終戦・ホッケンハイムでGT500車両、スーパーGT最終戦・もてぎでDTM車両のデモ走行が行われたほか、2019年のDTM最終戦のホッケンハイムに3メーカーのGT500車両が参戦している。



かつて「ハコのF1」とまで呼ばれてドイツで栄華を極めたDTM! いまはどうなってる?
SUPER GTとDTMの特別交流戦



さらに、同年末には富士スピードウェイを舞台にGT500車両とDTM車両の交流戦が実施されるなど、ドイツと日本の人気レースがコラボレーションしたのだが、アストンマーティンの有力チームとして2019年に参戦を開始したスイスのチームがわずか1年で活動を休止したほか、アウディも新型コロナウィルスが蔓延した2020年を最後にDTMから撤退することになったのである。



この相次ぐ主力チームの撤退が影響したのだろう。DTMは自動車メーカーに頼らず、数多くのチームが既成モデルで活動できるようにすべく、2021年よりクラス1規定を廃止してGT3規定を採用した。



これにより、新生DTMはメルセデスやポルシェに加えてランボルギーニ、マクラーレン、フォードなど、車種ラインアップが多彩となったほか、メルセデスやポルシェ、フェラーリなど自動車メーカーのサポートを受けるサテライトチームに加えて、元F1ドライバーやWECで活躍するトップドライバーが参戦するなど、再び活況を見せるようになったのである。



かつて「ハコのF1」とまで呼ばれてドイツで栄華を極めたDTM! いまはどうなってる?
GT3マシンがメインとなった現在のDTM



ちなみに、このGT3車両によるDTMに加えて、2021年よりGT4車両を対象にしたDTMトロフィや旧型車を対象にしたDTMクラシック、さらにEスポーツのDTM Eスポーツなど、さまざまなレースシリーズを運営していることも興味深い。



このように1984年にスタートしたDTMは時代に合わせて大きな改革を実施。現在はオリジナルマシンによるレース運営こそ行われていないが、常に新しいチャレンジを行っているだけに、オランダとオーストリアを含めて、全8大会で争われる41年目の2025年も激しいバトルが展開されるに違いない。

編集部おすすめ