この記事をまとめると
■スズキ・ジムニーノマドは販売計画を超える台数を受注して注文を停止した



■2023年にインドでジムニー5ドアが世界初公開された際にも現地は大盛りあがりだった



■本物志向のタフさが若者世代には斬新としてウケているようだ



ジムニーノマドはバーゲンプライス

2025年1月30日(木)にスズキは、日本での登録車となる「ジムニーシエラ」の5ドア版、「ジムニーノマド」を発表した。4月3日(木)の正式発売に先立ち予約受注の受け付けを始めると、あっという間に累計受注台数が5万台を超え、2025年2月3日(月)に、「新型ジムニーノマドご注文停止のお詫び」というリリースを発信することとなった。その理由は、販売計画台数を大きく超える受注台数となったためとしている。



2023年1月にインドでジムニー(日本でのジムニーシエラ)の5ドア版がワールドプレミアされたとき、まさにインドはお祭り騒ぎとなった。それと同じぐらい、ジムニー5ドアがデビューしたときには、日本でもメディアがお祭り騒ぎのようにそのデビューを報じていた。



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それから2年が経過し、いよいよ日本でノマドがデビューしたわけだから、待ちかねたひとが相次いで発注したという流れは容易に察しがつくが、予約受注開始日には、各地のスズキディーラーがデパートのバーゲン会場のような熱気に包まれたとの話もあるので、まさにメーカーであるスズキの予測を超えていたのは間違いないだろう。



「唯一無二」ともいえる、軽自動車規格のジムニーや、登録車規格のジムニーシエラの人気の高さは日本だけではない。インドネシアでは過去に先代ジムニー(登録車サイズ)を台数限定で発売したところ、まさに秒レベルで売り切れたし、現行型がデビューしたときも大騒ぎとなり、5ドアデビュー時も大いに盛り上がった。



ノマドも含む5ドアの生産を行っているインドでの上級グレードでATの価格は148万500ルピー(約260万円)なので、日本国内での税込みでのAT車の275万円は、まさに「バーゲン価格」のようにも見えるほどの割安感を感じることも受注を殺到させたようにも見える。



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インドネシアのモーターショーで展示されているジムニー5ドア



スズキはメディア向け発表会にて、シエラ(3ドア)のことを「プロユース」と強調していた。3ドアということもあり、ファミリーユースとしての使い勝手が落ちるので、いままでシエラがほしいと思っても声を大きくできなかったお父さんが、「こっちは5ドアだ」として家族会議での許可がおりやすくなったといった内容の話もしていた。いまのところは年齢や性別などの受注内訳は公表されていないが、いままでにない新たな「ジムニーユーザー」を抱え込んだことも間違いないだろう。



オジさん世代には懐かしくも若者世代には斬新

今回のジムニーノマドの騒動を見ていると、どこかジープ・ラングラーと似ている様子をジムニーノマドからも感じることができる。いまでこそ2リッター直4ターボエンジンを搭載しているものの(ダウンサイズが進んだ)、ラングラーは三菱トライトンと同じようなサイズ。ただ、このラングラーが日本では安定した人気を維持しているというのである。

しかも、排気量がいまよりも大きかった先代から高い人気となり、それが現行型でも続き、そのなかで若い世代が好んで乗っているというのである。



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ジープ・ラングラー(JL型)のフロントスタイリング



少し前にディーラーで聞いたところでは、中古車人気も抜群に高いので、残価設定ローンにおける設定残価率が高いこともあり、廉価グレードとなる「アンリミテッド・スポーツ」でも799万円もするのだが、ローンプラン次第では若年層でも無理なく乗ることができるというのである。



なぜ若年層の人気が目立つのかについては、筆者のようなオジさん世代には「懐かしい」とか、「古めかしい」と感じるジープ然としたそのスタイルが若年層から見れば斬新で、「ほかにない」と感じていることが大きいようである。



ジムニーもまさにその唯一無二のキャラクターの象徴がその武骨なスタイルといっていいだろう。もちろんジムニーもラングラーもそのタフな走行性能を支えるメカニズムもなかなか他車にはないのだが、若い世代から見れば、そのスタイルの斬新さに惚れ込むようなのである。



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スズキ・ジムニーノマドのフロントスタイリング



こうなると、バブル期あたりに日産が盛んにラインアップしていた、懐古イメージのある「パイクカー」を復活させてもいいのかもしれない。事実、フィガロの中古車では程度のいいものを中心に広く海外へ輸出されている。



また、ルノーなど欧州ブランドでは最近過去モデルの復刻版のようなBEV(バッテリー電気自動車)をラインアップしているし、シトロエン2CVも同じようにBEVで復活するとの情報が流れている。アメリカではいまは下火になっているものの、フォード・マスタングやダッジ・チャレンジャーが懐古スタイルでいまもラインアップされている。



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ダッジ・チャレンジャー(3代目)のフロントスタイリング



ジムニーやラングラーは本物志向というところも好まれているが、「若者のクルマ離れ」とさんざんいわれてきたが、彼らの感性を刺激するには歴史を振り返ることで、そのなかからヒントを見出すことができるのかもしれない。

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