この記事をまとめると
■2006年から2012年までフェラーリのV12FRモデルとして販売されていた「599」



■エンツォ・フェラーリにも搭載のV12をベースにしたエンジンは最高出力620馬力を誇る



■のちに「599GTO」や「599XX」などのハイパフォーマンスモデルを生んだ



V12フェラーリのデビューにもってこいな「599」

今回は、フェラーリが2006年から2012年にかけて生産していたV型12気筒FRモデルの「599」を解説することにしようと思う。その前にふと気になったので、現在日本での599の中古車価格を調べてみたら、それは意外にも車両本体で2000万円以下でも購入できるという状況。開発当時ピニンファリーナに在職していた、ジェイソン・カストリオタとそのチームの手によるスタイリングは、現在でもまったくその魅力を衰えさせてはおらず、もちろんその運動性能にも十分に魅力的な数字が並ぶ。



高いのは確かだけどフェラーリにしてはお買い得! 見た目も走り...の画像はこちら >>



これからフェラーリの12気筒デビューを飾ろうという人には、599というセレクトも自然な成り行きなのではないだろうか。



まずはそのスタイリングを検証していこう。フロントミッドにV型12気筒エンジンを搭載する599だが、それは運動性能に大きな効果を発揮することのみならず、スタイリング面でもロングノーズ&ショートデッキという伝統的なスタイルを是正することに貢献している。



高いのは確かだけどフェラーリにしてはお買い得! 見た目も走りも文句ナシの「599」はフェラーリのV12デビューにもってこいのモデルだった
フェラーリ599GTBのサイドビュー



それは当時2+2GTとして同社のラインアップにあった612スカリエッティのスタイルと比較すれば一目瞭然となるところであり、長いAピラーと高い位置まで拡大されたフロントスクリーンやルーフの造形で、視覚的にキャビンの大きさを強調する策が講じられているのだ。



ライン構成はボディの全体においてシャープでスパルタンな印象。さらに印象的なのはリヤクォーター部の造形で、ピニンファリーナはここで本来のCピラーの外側にダミーのCピラー(フライングパットレス)を組み合わせ、エアロダイナミクスの最適化とともに、外観上の大きな特徴を生み出した。



高いのは確かだけどフェラーリにしてはお買い得! 見た目も走りも文句ナシの「599」はフェラーリのV12デビューにもってこいのモデルだった
フェラーリ599GTBのリヤスタイリング



それと面積の大きなリヤウインドウによって形成されるデザインは、あたかもかつてのフェラーリが採用していたトンネルバック・スタイルを彷彿させるものであった。



現代のモデルへと続くフェラーリの可能性を模索した

599の基本構造体は、アルミニウム製のスペースフレームだ。ホイールベースは2+2GTの612スカリエッティより200mmも短いが、ボディの全長4665mmと、599の前身である575Mマラネロよりも115mm長い設定だ。車重は乾燥重量で1690mm、ちなみにこれは現在ではもはやどのモデルにも設定されなくなった6速MT仕様の数字で、これも575Mマラネロと比較すると40kgほど軽量だ。



599の誕生で、もっとも大きなインパクトを与えてくれたのは、おそらくはそれに搭載されるエンジンだったのではないだろうか。それはあのエンツォ・フェラーリに搭載されたものをベースとしたV型12気筒エンジンで、最高出力は620馬力を発揮。

参考までにその型式はF140C型、エンツォのそれはF140B型である。



高いのは確かだけどフェラーリにしてはお買い得! 見た目も走りも文句ナシの「599」はフェラーリのV12デビューにもってこいのモデルだった
フェラーリ599GTBのエンジン



ミッションは6速MTが組み合わされることは前で触れたが、ほかに2ペダルの6速F1スーパーファストが存在する。サスペンションに磁気粘性流体ダンパーを採用したことやカーボンセラミックブレーキのオプション設定も見逃せない特徴だった。



この599には発表後もさまざまなバリエーションが追加設定されていく。2009年にはHGTE(ハンドリング・グラントゥーリズモ・エボルツィオーネ)の設定が始まるが、これはよりハンドリング特性を向上させるためのアップグレードパッケージ。専用のサスペンション・パッケージやタイヤ、20インチ径ホイール、エンジン・ソフトウェア、エキゾーストシステムなどがそのおもな内容だ。



高いのは確かだけどフェラーリにしてはお買い得! 見た目も走りも文句ナシの「599」はフェラーリのV12デビューにもってこいのモデルだった
フェラーリ599HGTEのフロントスタイリング



また、2010年にはサーキット専用モデルとして、同じ2009年に発表されていた730馬力仕様の599XXから、さまざまなテクノロジーを継承したロード仕様の599GTOも誕生。それはフィオラノ・サーキットをエンツォ・フェラーリよりも1秒も早く駆け抜ける運動性能を誇るモデルで、また車重もスタンダードな599よりも約100kg軽量。限定で599台が生産された。



高いのは確かだけどフェラーリにしてはお買い得! 見た目も走りも文句ナシの「599」はフェラーリのV12デビューにもってこいのモデルだった
フェラーリ599GTOのフロントスタイリング



また、599XXには2011年にその正常進化を目的としたアップデートパッケージ、エボリューションの提供も行われている。



599シリーズでは、ほかにもピニンファリーナの創業80周年を記念したオープン仕様のSAアペルタ(エンジンは599GTOのそれを使用)。あるいはF1での初勝利から60周年を記念した60F1などの特別仕様車、そして数々のワンオフモデルも生まれている。

さらにはハイブリッド実験車のHY-KERSなど、599はまさに現在のフェラーリ社におけるビジネスモデルの基本を模索し、進化を続けたモデル。まさに注目のシリーズなのである。

編集部おすすめ