完全に衝突回避できるシステムではないことが知られていない
ブレーキとアクセルの踏み間違いによる悲惨な事故が未だに後を立たない。以前は運転アシスト機能付きの最新モデルが普及することでこのような事故の発生は減少していくと期待していたが、最近のニュースを見ていると、そうした機能が付いているはずの最新モデルでも同様の事故が発生していたりする。その原因は一体どこにあるのだろう。
運転アシスト機能は各社さまざまなレベルの仕様の機能を装備させていて、同一メーカー内においても一様ではない。たとえばブレーキアシスト機能でみると、前方に障害物を検知するとドライバーが気が付かずにブレーキを踏み遅れても、機械が事前にブレーキをかけ衝突被害を軽減してくれる。
まずここで重大な誤解がユーザーの間に引き起こされている。自動ブレーキ=衝突回避機能と捉え、障害物に衝突することなく車両が手前で安全に自動停止してくれると信じ込んでしまっているユーザーが多いのだ。実際は多くのモデルにおいて採用されているのは衝突被害軽減ブレーキ機能だ。衝突は完全に避けられないが、ぶつかる直前にわずかでも減速させて衝突時の被害を軽減させよう、というのがシステムの狙いだ。運動エネルギーは速度に二乗に比例して大きくなるので、わずかでも減速できれば衝突の衝撃を軽減できると考えられるからだ。
つまり自動ブレーキというのは衝突を完全に回避できるものではなく、クルーズコントロール使用時に前車との間隔を保ったり、急停車に備えるための「自動」なのであって、完全に衝突回避できるシステムとはなっていないという理解が浸透していない。
2013年にマツダCX-5が登場した時、「自動ブレーキ機能」をディーラーマンが勝手に自動危険回避ブレーキと解釈したのか、ディーラーの敷地内で顧客に運転させ壁に向かって全開で加速するよう指示。結果、壁に激突しドライバーの顧客とディーラーマンの2人が重軽傷を負った。2020年になっても自動ブレーキに対する意識と理解は大きく進展していないと思わざるをえないのだ。
「自動運転」というワードだけが一人歩きしている
自動ブレーキは近赤外線レーザーや音波ソナー、単眼、多眼カメラなどで前方車両や障害物を認識し、走行速度と障害物までの距離を算出しブレーキを自動でかける仕組みだが、メーカーや仕様によって認知機能はさまざま。
また夏タイヤで雪道を走っている場合など、障害物を検知できてブレーキをかけても、タイヤがグリップせずに衝突してしまうこともある。このように自動ブレーキひとつとってもまだまだ完全なものはないという実情をすべてのドライバーは知るべきだ。
「自動運転」というワードだけが一人歩きしていて、レベル2程度でも「自動運転」とうたわれるケースがあることも問題だ。そのCMコピーを信じてクルマを購入したユーザーが装置の実力を試そうとして事故を引き起こしてしまうこともありえる。我々自動車メディアのテストでも自動運転など運転アシスト機能のテストをすることは専門の設備と安全が担保された状況がなければ行わない。一般ドライバーが一般道で試すなどというのは犯罪に近い行為だと肝に命じるべき。
「法の不知はこれを許さず」と刑法38条3項に定められているが、ドライバーに当てはめれば運転するクルマの機能を熟知し、けしてそれを無闇に試さず、安全に運転する義務があるはず。自動ブレーキ機能を100%完璧に機能させられるようにならない限り、自動運転など夢のまた夢なのだ。
そして機能が完璧に機能するようになっても、機械である以上いつ故障するか、エラーを引き起こすかもしれない。ドライバーが安心して居眠りしたり、よそ見したり、スマホでメールを打つなんて時代は多分来ない。

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