今の技術では天候や路面状況を把握するのは難しい
2020年の交通事故死者数は戦後初めて3000人を下まわった。警察庁が発表したデータを並べると、交通事故死者数は2839人、負傷者数は36万8601人、事故件数は30万9000件と、いずれも前年から20%以上減少している。
その理由のひとつはコロナ禍によって全体的な移動が減ったおかげかもしれないが、AEB(衝突被害軽減ブレーキ)の普及によって交通事故そのものが減っていることも大いに貢献しているのは間違いない。
とはいえ、真冬の北海道で日産セレナのレンタカーを借りた際、「プロパイロットが正常に作動せず事故を起こす可能性もあるので使わないでください」といった注意もなされていると聞く。はたして、日産に限らず最新のADASやAEBであっても雪道では有効ではないのだろうか。
まず、現時点のセンシング能力では天候を判断することはできない。せいぜい、ワイパーの作動状況から降雨の有無を把握できるくらいで、路面状況を把握することは不可能というのが現状だ。ドライバーからすれば真っ白に雪が積もっている道路であっても、クルマのセンサーにとっては舗装路と変わらない状態なのだ(もっとも白線などの区間線はロストしているであろうが)。
そもそも雪道では誰が運転しようが制動距離が伸びてしまうし、強いブレーキングではABSが作動してしまう。根本的にドライの舗装路とはブレーキ操作に求められる丁寧さのレベルが違う。つまり、車両側で路面の状況が把握できないとなにが起きるかといえば、舗装路を前提としたAEBの作動タイミングでは遅すぎて止まれないということになってしまう。
前方になんらかの物体を検知してブレーキをかけるところまではできても、ぶつかってしまうというわけだ。実際、雪道では10km/h程度の徐行でなければ衝突回避は難しいという。もちろん、少しでもブレーキをかけて減速していれば被害軽減にはつながるが、期待するような衝突回避は不可能というのが現実だ。
ACCも雪道では頼れない!
そうした弱点はACCにおいても同様だ。雪道では加速にしろ減速にしろ舗装路とは異なる慎重さが求められるが、いまのACC制御では環境にあわせた臨機応変な対応はできない。だから機械によるアシストを利用するのはNGなのだ。
晴天であれば雪道であっても前方の車両や歩行者を検知することは可能だが、雪がガンガン降っているような悪天候になるとセンサーの性能も落ちてくる。雨や霧でカメラの性能が落ちるのはよく知られているところで、それは降雪時も同様だ。また、雨や霧には強いミリ波レーダーも、じつは表面に雪が付着すると電波透過性能が低下してしまう。すなわち、降雪時には十分な機能を発揮できない。
というわけで、冒頭、レンタカーを借りる際にADAS機能を使わないような指示があったのは、こうした性能低下が心配されるためだ。
あらためて整理すると、晴天であればセンサー類は正常に作動するが積雪によってミューが低くなった路面にアジャストしたブレーキタイミングを実現するのが難しいのがひとつ。そして、降雪時にはセンサー自体の性能が低下してしまうため、設計通りのADAS機能を発揮できないという2つの理由によって、降雪地域では十分な性能を発揮できず、そのためシステムを利用しないことが推奨されるのだ。もちろん、何度も書いたように衝突の被害軽減には役立つため、あえてシステムをオフにする必要はない。
たしかに自動運転テクノロジーは確実に進化している。

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