お気に入りの曲を選曲するのがドライブデートのキモだった

今、クルマのなかで音楽を聴くとすれば、スマホとディスプレーオーディオをBluetooth接続したり、お気に入りの音楽をデータ化したSDカードをナビゲーションにセットしたり、FMラジオを聴くというのが一般的だろう。最近ではCDチェンジャー、MDなんていうのも過去のものになってしまった。



では、昭和の時代はどうだったのか。

昭和生まれのボクが最初に愛車を手に入れたころは、ちょうど、8トラック(知らないですよね)から、カセットテープに移行する時代で、1976年12月に納車された1977年型いすゞ117クーペは、はじめてカセットテープ用のオーディオが搭載されていたのである。



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平成生まれの人にとって、おそらく馴染みのないカセットテープだが、1979年(昭和54年)にソニーから発売されたウォークマンの爆発的ヒットもあって、当時、音楽はカセットテープで聴くのが当たり前だったのである。じつは2018年ごろからヨーロッパでカセットテープの需要が再燃。静かなブームになっていたりする。



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さて、ボクを含む当時の若者のデートはクルマが必須。その車内で2人の距離を縮めてくれたのが、カセットテープに編集された音楽だったのだ。手のひらサイズで磁器テープを使ったカセットテープは繰り返し録音が可能で、レコードからお気に入りの曲をピックアップし、「マイベスト」的につなげることができた。録音時間は30分、60分、90分、120分などがあったが、車内で使う場合、60分、90分が一般的だった。



この時代の車内で聴く音楽は、だから選曲のセンスが求められた。自身がDJみたいなもので、どの曲からスタートし、どうつないで、どう終わるか……達人は四季、天気、シチュエーション別に何本も用意していたはずだ。



お目当ての子との最初のドライブデートでは、まさに車内の雰囲気を盛り上げる、オーディオ、カセットテープの選曲が成否を決定づけたと言ってもいい。



ボクはと言えば、今でも大好きなユーミンやハイファイセット(ボクがグレープ、ハイファイセットと同じバードコーポレーションという事務所に所属して音楽をやっていた時代だ)、大橋純子さんなどの邦楽がメイン。

それが刺されば大成功! だが、洋楽オンリーの女の子の場合、先行きがあやしくなったのも本当だ。「この人と私では、音楽の趣味がまったく違う。付き合う対象外だわ」ということなのだろう。それぐらい、昭和後期の男女関係は、音楽、車内のオーディオが大きく影響していたと言っていい(私見ですが)。



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いい音で聴くためのグレードアップを行う人もいた

もちろん、いい音を聴くためのオーディオのグレードアップ、と言ってもカセットチューナーやリヤスピーカーのグレードアップ程度にすぎないが、その頂点にあったのが、マニア垂涎のナカミチだった。そのカセットチューナーにa/d/s =Analog & Digital Systemのコンパクトスピーカー(大きさで言えばBOSE 101のような感じ)を接続し、セダンタイプのクルマのリヤトレイ左右の置き、メーカーのステッカーをリヤウインドーのセンターに貼るのが”通”、カッコ良かった記憶がある。



さすがにボクはそこまでやらなかったけれど、昭和50年代中半のある日、事件は起こった。WEB CARTOPの「衝撃の昭和エピソード! クルマが「ステータス」だった時代のモテカー伝説とは」の記事中に出てくる、信号待ちナンパから付き合うことになった、117クーペに憧れていたアグネス・ラム似の子は、どっぷり洋楽派。最初の相模湖デート、2度目の葉山デートでも、こちらが攻めまくるユーミンやハイファイセットではまったく歯が立たない。



春の桜満開の東京千鳥ヶ淵ドライブデートでは、逆に、「これ聴いてみて」と彼女が持参した、まとめカセットテープを、117クーペのカセットデッキにガチャリと入れることになった。その最初の1曲がパティ・オースティンのデビューアルバム「END OF A Rainbow」(1976/CTIレコード)の1曲目でもある、以来、ボクたちにとって最高の思い出の1曲となった「SAY YOU LOVE ME」(邦題 愛していると言って)である。



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まるで春の風に乗ったような軽やかでさわやかなメロディー、演奏、デヴィッド・マシューズのプロデュースによるシンプルなアレンジ、最高のバックミュージシャン、パティ・オースティンの口笛までもをフューチャーしたその曲は、今思えば、彼女に対して好きという気持ちはあっても、なかなか言葉に出せないボクへのメッセージだったのかもしれない。



車内でパティ・オースティンといっしょに「SAY YOU LOVE ME」を口ずさむ、というか大声で熱唱する彼女の笑顔が、もう数十年前のことだというのに、記憶の中にしっかりと刻まれているぐらいなのである。クルマのオーディオが、カセットデッキから再生されるその1曲が、2人の距離をグッと近づけてくれたことは言うまでもない。



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そして、それ以来、ボクもブラックミュージックをはじめとする洋楽ファンとなり、パティ・オースティンやマイケル・ジャクソンの音楽プロデューサーでもあるクインシー・ジョーンズなどに傾倒していくことになる。



彼女との出会い、そして昭和のクルマデートの成否を左右する、アナログレコードからダビングした、カセットテープから流れる「SAY YOU LOVE ME」が、それからのボクの音楽人生、いや人生を大きく変えてくれた1曲と言っていい。約6分という長さも、じっくりと「愛していると言って」をアピールするのに最高だろう(女の子から、ですが)。昭和のドライブデートに、これほどぴったりな曲はない。どころか、今でも必殺曲になる可能性がある。今でも中古CDで手に入るので、この春のドライブデート用の1曲を探している人は、ぜひ!!



動画リンク https://www.youtube.com/watch?v=dtcZBtIgsi0

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