FFレーシングカーはリヤタイヤの効率的なウォームアップが肝
TCRジャパンシリーズ開幕戦・富士ラウンド2戦(サタデーレース、サンデーレース)の金曜日練習走行第2枠。第1枠で使用した新品タイヤをそのまま使用する。レースセットを煮詰めていくためだ。
車高をさらに低くし、リヤのトーインを強め、燃料を搭載してレースランのシミュレーションを行う。その結果、ラップタイムは1分50秒400が記録でき、レースラップの想定を定めることができた。翌日はいよいよ予選となるので、本来ならここでもニュータイヤで予選アタックの練習を行いたかったが、残りセット数に余力がなく断念。予選Q1アタックはぶっつけ本番となる。
土曜日、サタデーレース予選。ニュータイヤを装着してスタンバイするが、ふと思い出したのがGT300時代のFFレーシングカー・三菱FTOでレースしていたときの戦略だ。タイヤウォーマーが禁じられた初期のころで、FFの場合はリヤタイヤのウォームアップに手を焼いた。
そこでまずインスタレーションラップの間に前輪を温め、ピットインして前後のタイヤをローテーションしてアタックに向かう、という戦略だ。バロン氏に伝えるとすぐに理解し準備してくれた。ピットレーンがオープンになり、直にコースイン。予選計測時間はわずか15分。前輪を温めながらピットに戻り前後入れ替えだ。

ローテーションを完了しアタックラップに入る。しかし、フロントが逆に暖まり切っておらず、前後バランスが悪い。コーナーでアンダーステア傾向が強まってしまいラップタイムは1分49秒113、自己ベストタイムながら総合8番手に甘んじた。
次いでただちにサンデーレースの予選が始まる。今度はニュータイヤを装着し、そのままアタックを行うことにした。
インラップで手応えを確かめつつ、アタック開始。1コーナーのブレーキングを今回もっとも奥の130mまで我慢し急制動。リヤが不安定になりヨーダンピングが発生してしまった。インのクリッピングポイントにつけそうもなく、無理やり切り込めばスピンモードに陥りそうだった。そこでインに付くのは即座にあきらめ、1コーナーはアウト・アウト・アウトのラインで速度低下を防ぐラインを選択し凌いだ。
コンマ2~3秒タイムロスしたと思うが、タイヤの初期グリップは1周しかもたないのでアタックを継続する必要があった。
予選が終わり、土曜日の午後にはサタデーレース決勝がスタートする。タイヤはオールニューを選択。残り4本のニュータイヤをサタデーレースとサンデーレースのスタート時にフロントに装着し、リヤタイヤは予選で使ったものを装着するプランをバロン氏から提案されたが、前後バランスを崩すためオールニューを選択しスタート。

結果、ローンチスタートは決まったが前車がストール。2台はパスしたが、1台には抜き返され、またトラブル車を避けつつ5番手でフィニッシュ。しかし1~2フィニッシュ車両がセーフティカー明けの再スタート時に、セーフティカーを追い抜いてしまいペナルティを受けたため3位に繰り上がり入賞となった。レース中のベストタイムは1分50秒155で5番目に速いタイムだった。
攻めたサスペンションセッティングを決勝ぶっつけ本番で試す!
翌日曜日はサンデーレースのみの走行だ。すでにニュータイヤは使い果たしてしまったので、土曜日の予選で使用したリヤタイヤ4本を前後に履かせてスタートした。

恐らくFFによるプッシュアンダーとブレーキング時のリヤの不安定を嫌ったデフォルト設定がそうなっていると考えられる。そこでフロントにアンチリフト(アンチダイブをキャンセル)、リヤもアンチリフト(アンチスクワットはキャンセル)のジオメトリーを提案。するとJ.A.S社の詳細なサスペンションジオメトリーの表を見せてくれて、数値を指定した。
試す時間はなくレースでぶっつけ本番のスタートになるが、効果を試す最後のチャンスでもあり、セットアップ変更を頼んだのだ。
迎えたサンデーレース決勝。6番グリッドからローンチスタートを決めるが、またもや前方車両がストール。よけながら順位を守ってレースは進行した。
サタデーレース優勝の井上恵一選手(アウディRS3LMS)、同2位の佐藤潤選手(ゴルフTCR)とバトルをしながら、6位フィニッシュ。終盤5位の佐藤選手に詰め寄ることができたのは大きな収穫だった。

リヤのアンチリフトも1コーナーでのブレーキング時の安定性が高まり、130mでの制動を安定させることができた。スリップストリームも有効に使え、250km/h弱に最高速度も引き出せたのだった。
ようやく闘える目処がついたところで、今回の参戦は終了。また機会があれば、この状態をベースにさらにセットアップを煮詰めていきたいと思った。