パワーとトルクが上がるとそれに見合った伝達力が必要になる

エンジンのパワーとトルクが上がると、クラッチにもそれに見合った伝達力が求められる。クラッチの伝達力を高めるには、クラッチカバーの圧着力(クラッチディスクを押しつけるスプリングの力)を強化するか、クラッチディスクを摩擦係数の高い巣材に変更するか、クラッチディスクの枚数を増やすのが一般的。



市販車でいえば、スカイラインGT-R(R32)が登場したとき、ノーマルクラッチでもえらくクラッチが重いといわれたが、あれは2リッターのGTS-tタイプMなどと同じ240φのクラッチディスクを使って、クラッチカバーだけ強化したため(RB20用が580kg-mだったのに対しRB26用は750kg-m)。

それをフォローするために、クラッチにもマスターバックをつけたがそれでもかなりの踏力が必要で、クラッチペダルは重かった。



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そこでR32 GT-Rの後期型からは、クラッチをプッシュ式からプル式に変更。ダイヤフラムを操作するレバー比を大きくすることができたので、圧着力を850kg-mにアップしつつ、ペダル踏力を軽くすることに成功した。



R33以降もこのプル式は継承され、ディスクのサイズもR33では250φになっている。ちなみにR32よりもあとから登場したNSX(NA1)は、純正でツインプレートクラッチを採用したレアな車種として知られている。



女性じゃ踏みたくなくなるほど重たい車種も! MT車のクラッチペダルの重さがクルマによって違うワケ



最近は強化クラッチでも扱いやすくなっている

280馬力だったR32GT-RやNSXでもこうしたクラッチが必要だったので、チューニングしてパワーアップしたクルマには、いわゆる強化クラッチが必須だった。



強化クラッチは圧着力が強いのでさらにクラッチペダルが重くなり、ディスクの摩擦係数が高いので、半クラッチが使いづらくて操作性は悪いのがデメリット……。



しかし、最近ではチューニングカーでも、クラッチペダルが重たくて、半クラッチが使いづらいクラッチは少数派となってきた。



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それは素材の進歩の影響が大きい。代表的なのはNISMOのカッパーミックスクラッチ。カッパーミックスは、文字通りノンアスベストを基本に特殊製法で銅(カッパー)の含有量を飛躍的に高めたクラッチディスク。ノンアスの使いやすさとメタル系の伝達力のいいとこ取りをしたクラッチで、「カバーの圧着力を変えずに許容出力を上げる」「渋滞時の操作性を改善し、誰もが普通に使えるスポーツクラッチに」という目標をクリアしている。



また、カーボンクラッチも操作性と伝達力に優れた理想のクラッチとして注目を集めているが、他のカーボン製品と同じく、コストが高いのだけがネックになっている。

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