この記事をまとめると
ポルシェの型色名は、当初は通し番号がそのまま使われていた



フォルクスワーゲンとの協業を見据え、900番台を型式名とするようになった



■いまではアルファベット混合の型式名も使われるようになった



ポルシェの車名コードには一貫したロジックがあった

911なのに、992とか991とか997とか996とか993とか。しかも最新が992で空冷の頃のが993ってどういうこと? ボクスターでも986と987の次が、981って?



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誰もが気になるというか混乱する、ポルシェの車名コードだが、じつは当初は一貫したロジックがあった。1931年にポルシェが会社として成立する以前から創始者フェルディナント・ポルシェ博士は、エンジニアとして色々な案件を受けて来た。



ドイツ本社の登記は今でも「Dr.Ing.h.c.F.Porsche GmbH」(=ポルシェ名誉工学博士株式会社)である通り、それは自動車メーカーというより、数々の自動車メーカーを顧客リストに数えるエンジニアリング・コンサルタントのような会社だったと解釈したほうがいい。



車名は「911」なのに930や993や991と呼ばれるポルシェ! 一般人には意味不明な「数字の謎」



そこでは1931年以来、案件やプロジェクトを受注する度に、通しのナンバーがふられていた。現在、ポルシェ本社が明らかにしているところでは、#7はザクセンを拠点とする自動車メーカーだったヴァンダラー向けに設計したサルーンだったし、#22はアウトウニオン(現アウディの前身)のグランプリカーに、そして#60はフォルクスワーゲン、後の量産車ビートルに繋がる最初期のプロトタイプにあてられていたという。



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よく最初期に造られたポルシェとしてアルミニウム・ボディのタイプ64というクルマが取り沙汰されるが、これは博士のオフィスでは#64だったし、#60を都市間レース用に仕立てたスペシャルモデルだった。



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ちなみにポルシェは、タイガー戦車初期の砲塔やその他の軍事車両も設計しており、フォルクスワーゲンの国民車構想に絡んだ頃から、車両1台ごとではなくそれこそ車軸1本、ギアボックス1基といったパーツごとに、続き番号が割りふられたという。



車名ロジックも技術とともにアップデートされ新しくなる

だから第二次大戦後、ポルシェが自身の名を冠した初めての自動車を出すにあたって、その開発コードは「356」にまで伸びていたのだとか。



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ちなみに博士が戦後すぐ、イタリアのチシタリアのために設計した12気筒の1.5リッター、4WDのグランプリカーには、#360の開発コードが与えられていた。メーカーとして規模拡大しても博士の研究所時代のロジックは受け継がれ、開発コードは1953年には550スパイダーに、また1959年頃に911の最初期プロトとされる車両には#695や#754が割り当てられた。



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だが、内部開発コードとなる通し番号もやがて限りがあること、来るべきフォルクスワーゲンとの協業を見据えて、あちらでもまだ使われていない900番台を共有コードとすることを、当時の経営陣は決断した。それが6気筒モデルは901、4気筒モデルは902という話だったが、思わぬ方向から茶々が入った。真ん中ゼロは1929年からウチの専売特許だと、フランスはプジョーからクレームが入ったのだ。



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かくなるお家の事情で新しいRRスポーツカーは「911」「912」と名づけられた。

それにしても、そのプジョーがいまや、ル・マン・ハイパーカーに「9X8」と名づけているのだから世の中、分からないものだ。



以降、先頭が9の3ケタ車名は、ポルシェの伝統にしてこだわりとなった。914に924に928、944、917やら962といった風に、全体としてファミリーを形成していたが、ある程度ネーミングに融通が利かされていた。空冷最後の911は1993年デビューということで993のコード名が与えられたそうだが、空冷時代の終焉というひとつの区切りに相応しいネーミングとして考えられたのではなかったか。



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その一方で時折、特殊な市販モデルだけは、元の量産モデルのシリーズコードから逸脱して、内部開発コードそのままに記憶されるようになった。930ターボや959などがその例だが、カレラGTを980として記憶している人はわりと少ないのは、そういった事情によるだろう。



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ボクスターやカイエンの頃から、数字3ケタに代わるペットネーム採用が一般的となったポルシェ。「718ボクスター」はまさしく端境期のロジックを感じさせる。ちなみにピュアEV第1号のタイカンは「9J1」という、初のアルファベット混合コード。



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ロジックごと、エンジニアリングごとに世代がアップデートされ新しくなる、そこがポルシェなのだ。

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