この記事をまとめると
■かつてアメリカではフルサイズセダンベースのポリスカーがメジャーだった



■いまではSUVベースが主流となっている



■具体車種を挙げてそれぞれ解説する



かつてはフルサイズセダンベースがメジャーだった

少年時代、ハリウッド映画では多数のクルマが登場する大規模なカーアクション作品が多くあり、ワクワクして見ていたのを記憶している。そのなかでも印象深かったのが、アメリカのパトカーのサイズがかなり大きかったこと。



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日本では排気量やボディサイズがより大きくなるに従って装備も豪華になり“高級車”という扱いになる。

一方でアメリカでは、FRで単純にボディサイズと排気量は大きいが、豪華さがなく質素なインテリアなどを採用する、“フルサイズセダン”というカテゴリーが存在していた。



この業界に入り、デトロイトのアナリストと話をした時に、「高級感を求めるのではなく、自分のクルマの使い方から、排気量やボディサイズの大きいクルマを選ぶ人がいる」と聞き、アメリカの自動車市場の奥の深さを感じた。旧ビッグ3(GM[ゼネラルモーターズ]、フォード、クライスラー)では、過去にはそれぞれフルサイズセダンをラインアップしており、それがアメリカンポリスカーとして実際に活躍していたのである。



日本も次はクラウンSUVか? エクスプローラーにタホにデュランゴなど「バカッ速SUV」が主流の北米パトカー事情



しかし、2011年に最後のFRフルサイズセダンであった、2代目フォード・クラウンビクトリアの生産が終了したことで、アメリカンフルサイズセダンベースとなる、ポリスカーはラインアップからなくなった(その後GMがオーストラリア製シボレー・カプリスベースのポリスカーを一時輸入しラインアップしていてことはある)。そして、いつの間にかカムリサイズのFFセダンのことを、大手レンタカー会社が“フルサイズセダン”と言い出した時には、筆者はショックを受けた。



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“ポスト フルサイズセダンベース”として、さまざまな車種をベースとしたポリスカーが登場した後、いまではSUVベースのポリスカーが主流となっている。フォードでは2010年にデビューした5代目エクスプローラーベースのポリスカーをデビューさせたが、初代から4代目まではFRとAWDというラインアップだったが、5代目は駆動方式がFFとAWDになったため、ポリスカーではAWDが用意されたりもした。



エクスプローラーはその後6代目となり、そしてFRベースへ戻った。そのため、現行エクスプローラーベースのポリスカーもFRベースとなっており、これがメインとなっている。車名は“フォード・ポリス インターセプター”。ただし、駆動方式はAWDのみとなっており、搭載エンジンは3.3リッターV6ハイブリッドが標準となり、3.3リッターV6直噴、3リッターエコブースト(ターボ)が用意されている。なおハイブリッド仕様の導入については、環境面での配慮というよりは、フルサイズセダンベースのころに比べると排気量のダウンサイズも行っているので、“導入した際には燃料費の負担を大幅に節約できる”とアピールしている。



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市販モデルとの大きな違いは、ラップトップコンピューターや、ショットガンを置くために、フロアシフトからコラムシフトに変更されている点となるだろう。ただし、フォードはSOHCとなるものの、V8エンジンがないのは残念である。なお、エクスプローラーの兄貴格となる、エクスペディションベースのポリスカーもラインアップされている。



シボレー・タホにダッジ・デュランゴも!

GMでもセダン系ポリスカーはなく、メインはフルサイズSUVとなる“タホ”ベースのモデルとなる。一般的なパトカーともいえるPPV(ポリス パトロール ビークル)と、SSV(スペシャル サービス ビークル)がラインアップされている。PPVでは5.3リッターV8 OHVを搭載し、駆動方式は2WD(FR)もしくはAWDが選択可能となっている。



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20インチの専用タイヤ、強化ブレーキ(ブレンボ製)、強化バッテリーなど、ヘビーな使用に耐えうる装備のほか、自動ブレーキやレーンキープアシストなど、安全運転支援デバイスも充実している。コラムシフトではなく、ダッシュボードに備えられたボタンでシフト操作するようだ。



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ステランティス傘下のFCA(フィアット クライスラー オートモビルズ)では、唯一セダンタイプのポリスカーをラインアップしている。FRセダンとなるダッジ・チャージャーをベースとした、“DODGE CHARGER PURSUIT(PURSUITは追跡という意味)”がそれだ。



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エンジンは2タイプあり、3.6リッターV6ペンタスターエンジンはAWDとなり、5.7リッターV8 OHVとなるHEMIエンジンはFRとなっている。8速ATが組み合わされ、シフト操作は民間向けチャージャーでは設定のないコラムシフトとなる。

防弾ドアパネルの採用など、警察活動向けならではの装備もアピールされている。



FCAでは、このほかミドルサイズSUVとなる“デュランゴ”ベースのポリスカーもラインアップしている。エンジンラインアップはチャージャーと同じで、3.6リッターV6ペンタスターと、5.7リッターV8 OHVとなるHEMIとなるが、駆動方式はともにAWDのみとなっている。コラムシフトというよりは、日本でいうところのインパネシフトとなっているようで、“省スペースながら操作性は良い”としていた。また、どんな装備かは未確認なのだが、“ステルスモード”というのも採用されているようである。



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FCAがセダン型として、ダッジチャージャーベースのポリスカーをラインアップしているが、筆者が現地で見た限りトレンドはSUVベースのポリスカーとなっている。最近は派手なカーチェイスを展開するハリウッド映画は少なくなっているが、これからはSUVのポリスカーが、カーチェイスやカーアクションでメインとして、当たり前のように登場してくることになるだろう。



日本の国費調達のパトカー規格はいまだに“クラウンありき”となっているが、そのクラウンも、今後はクロスオーバーSUVになるといった情報が飛び交っている。日本もアメリカのようにSUVのパトカーが当たり前のように街なかを走るようになるかもしれない。

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