この記事をまとめると
■近年、SUVが人気を集めている



■目線が高くて運転しやすいと感じている人が多いのがその理由のひとつ



■この理論の信憑性に迫る



SUVは「目線が高くて運転しやすい」と感じている人が多数

近年、SUVが大人気となっていますが、SUVを好む人にその理由を聞くと、「目線が高くて運転しやすいから」という人が多くなっています。確かに、セダンやクーペ、スポーツカーなどと比べると、ドライバーの目線は着座位置がアップするSUVのほうが高くなるのですが、なぜそれが「運転しやすい」と感じることにつながるのでしょうか。実際に、目線が高いクルマの方が運転しやすいのでしょうか。

いろんな角度から検証してみたいと思います。



まず、目線の高さによって何が変わるのか? その1つ目は、視野が広がることです。これは日常の行動でも同じかと思いますが、人は見えない場所にあるモノを見ようとするとき、自然に首を伸ばしたり、腰を浮かせたり、背伸びをしたり立ち上がったりしますよね。セダンの運転席からの目線は、一般的に地上から1.2m程度の高さになります。これがSUVになると、1.5m~1.7m程度にアップ。すると、目線が低い時には前走車の後ろ姿しか見えなかったのが、前走車のその前のクルマの屋根まで確認できるようになったり、ボンネットのすぐ横にあるポールが隠れていたのが、ポールの存在を確認できるようになったりします。



SUVが売れているのは「目線が高いから」? 車高が運転に及ぼ...の画像はこちら >>



これに関連して2つ目は、より遠くまで見通せるようになること。2つ先の信号、標識など運転に必要な情報が早くから確認できるようになったり、目的地の看板や曲がり角の目印なども、より早く見つけられるようになります。このため、道路の流れや障害物、信号や標識などを余裕を持って確認できることから、慌てて操作したりヒヤリとしたりすることが少なくなり、結果的に「運転しやすい」と感じる人が多いのです。



目線が高いクルマは視線移動が大きくなりがち

そして目線の高さによって変わることの3つ目は、目の動き。目線が低いと、近いモノをより多く目で捉えることになりますが、近いモノは動きが速く、遠くのモノはゆっくりと流れるように捉えられるため、目の動きもゆっくりに。近いモノばかりを見ていると目の動きが速くなり、疲れやすくなることもあるでしょう。



ただその反面、インパネの配置によっては、メーターやナビなどの画面との視線移動が大きくなりがちなのが、目線が高いクルマです。最近はヘッドアップディスプレイなどが標準装備されるクルマも増えていますが、それは視線移動をなるべく小さくしようとするためです。一概に、ただ目線が高いほうがいいというのではなく、視線移動の小ささも考慮することが望ましいと言えます。



SUVが売れているのは「目線が高いから」? 車高が運転に及ぼす影響を考えてみた



そして4つ目の違いは、体感スピード。一般的に、目線が低い方がスピードによる恐怖感を感じにくく、目線が高くなるにつれて実際の速度よりも速く感じたり、スピードによる恐怖感を感じやすくなることが多いと言われています。セダンやクーペ、スポーツカーに比べ、背の高いSUVはどうしても重心が高くなるため、カーブを曲がる際のロールが大きくなったり、ブレーキングで前のめりのような姿勢になったりすることも多く、それが恐怖感や疲労感、乗り物酔いの原因になったりすることも。街中を制限速度で走っている分にはそれほど影響は大きくないですが、高速道路を飛ばしたり、山道をよく走るような場合には、必ずしも目線が高いほうが運転しやすいとは言えないと思います。



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ということで、これらの違いを考慮すると、市街地を常識的な速度で走る場合や、渋滞などの際には、目線が高いクルマのほうが運転しやすいと感じ、速度域が高い道路やカーブが連続するような道を走る場合には、目線の低いクルマのほうが運転しやすいと感じることが多いと言えるでしょう。



ただ、熟練のドライバーになってくると、少しくらいの視野の狭さはカバーできるようになってくることも多いため、あまり目線の高い・低いで運転しやすさの違いを感じることも少なくなってくると思います。また、いくらSUVでも、小柄な体型の人が合わない運転ポジションで運転した場合には、その恩恵は受けられません。あくまで、自分に合った適正な運転ポジションが取れる場合に、目線が高いことによる運転しやすさが感じられるということです。これらを踏まえてぜひ、自分にはどの目線の高さがしっくりくるのか、チェックしてみてほしいと思います。

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