この記事をまとめると
■クルマにおいて「クラッチが滑る」という言葉が使われることがある



■これはどのような状態なのかについて述べる



■クラッチが滑りやすい運転のしかたや対策についても解説



クラッチを踏んでいなくても半クラのような状態に!?

昔、筆者がこの業界の駆け出しの記者だったころ、ゼロヨンのテストをやっていたときに、「そんなクラッチのつなぎ方じゃクラッチが持たないぞ。ポルシェだったらすぐにクラッチが滑っちゃうぞ」と大先輩に言われたことがある……。



要するに発進時、高回転をキープするために、半クラッチを少々長めにしてトラクションをコントロールしていたのでそれを指摘されたわけだが、クラッチはストレスがたまると滑るようになる。



そもそもクラッチはエンジンの回転力を接続したり切り離したりする部品で、クラッチペダルを踏めばフライホイールとクラッチフェーシング(摩擦材)が離れて、エンジンとミッションの間で駆動力が切り離され、クラッチペダルを離せば、フェーシングが圧着し、駆動力が伝わる。



乗り方次第ではアッという間にズルズルに! MT車の「クラッチ...の画像はこちら >>



しかし圧着と切断を繰り返しているうちに、タイヤやブレーキと同じように、クラッチの摩擦材=クラッチディスクが摩耗し減ってきてしまう。



その結果、クラッチの圧着力が落ちてきて、やがてクラッチペダルを踏んでいなくても半クラッチのような状態になり、アクセルを踏み込んだとき、エンジンの回転は上がるのに車速はそれに比例して伸びていかないという症状に!



これがいわゆる「クラッチが滑る」状態だ。



CVTのクルマでアクセルを踏み込むと、エンジン回転は一定のまま車速が高くなっていくことがあるが、ちょうどその反対のような現象が起きるのが、「クラッチが滑る」状態。



クラッチが滑る原因は、



・半クラッチの多用



・クラッチのオーバーヒート(クラッチディスクが焼けて、摩擦力が低下する。あるいは熱でクラッチディスクが変形する)



・クラッチカバー(スプリング)の劣化



・エンジンをチューニングし、エンジンパワーに対しクラッチの容量が足りない



・オイルやグリースが漏れて、クラッチに付着した



などが考えられる。



いずれにせよクラッチは消耗品なので、ある程度の走行距離に達したら交換することが前提だ。



クラッチを「労る」ことで長持ちさせられる

ただ、このクラッチの寿命は乗り手=ドライバーによって大きく違う。



同じ車種でも、2~3万kmでクラッチが消耗しきってしまう人もいれば、10万km持たせる人だっている。



半クラッチの多用が、一番クラッチの寿命を縮めるが、クラッチを操作しないときにも、クラッチペダルの上に左足を乗せておく癖のある人は、いつの間にか半クラ状態になり、クラッチを摩耗させているケースが多い。



そして、クラッチはしっかり切って、しっかりつなぐのが基本だが、ドラポジが悪い人はクラッチがきちんと切れていないといったことも考えられる。



乗り方次第ではアッという間にズルズルに! MT車の「クラッチが滑る」って何? 



また、スポーツ走行でクラッチのつなぎ方が乱暴な人はクラッチを傷めやすいし、4WDやRR、MRなど、パワーがあってもホイールスピンしにくいクルマほど、クラッチが滑りやすい傾向がある。



こうした場合、クラッチそのものを圧着力の強い、強化クラッチに交換する方法もあるが、クラッチは、クラッチが滑ることでエンジンや駆動系を守る、ヒューズとしての役割も与えられているので、いたずらに強化すると他の部分に過負荷がかかり、かえって高くつくことも!(先述の空冷時代のRRのポルシェなどは、まさにクラッチでオーバーロードを防ぐ発想)



そういう意味では、クラッチを長持ちさせたければ、半クラッチや、高回転でのクラッチミートを控えて、クラッチを労ってあげるのが肝要。



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そして、クラッチディスクの摩耗具合は、オペレーションシリンダーのレバーの位置で、ある程度判断することができるので、クラッチディスクの残量が減ってきたら早めに交換するのが望ましい。



なお、MT車に限らず、DCT(デュアルクラッチトランスミッション)やAT車でも、クラッチの摩耗はあるので、2ペダル車でもいずれクラッチの交換、オーバーホールは必要になることも覚えておこう。

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