この記事をまとめると
■クルマのボディ剛性について解説



■考慮されるようになったのは1980年代



■現在、目標として設定した車体剛性は100%に近い確率で達成が可能



ボディ剛性が考慮されるようになったのは1980年代

ひとつの車種シリーズのなかで、ホイールベースを伸ばしたロングボディ車の設定があるモデルを目にすることが出来る。よく知られているのは、メルセデス・ベンツSクラスのロングボディ仕様だろう。車両全長が5m、車両全幅が1.9m、車両重量は2トンを超す威風堂々、小山のようなモデルだが、標準ボディのホイールベース3105mmに対し、ホイールベースを110mm延長した3215mm仕様のロングボディ仕様車が用意されている。



老婆心ながら、標準仕様車からのホイールベース延長は、そのことで捻り/曲げ剛性が不利になるのではないか、と考える人がいるかもしれない。標準仕様で設計されたボディなら、ホイールベースの延長は車体剛性の低下を招くのではないか、という不安である。



同じようなことは、屋根付きの車両をベースにするオープンボディのモデルでも懸念材料となる事柄である。A/B/C 3本のピラーとルーフによって得られていた車体上部の剛性が、屋根を取り去ることでボディ上面が開口状態となり、剛性が低下(不足)しているのではないかという疑問である。



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ボディ剛性が、明確に車両設計で考慮されるようになったのは1980年代のことだ。運動性能、とくに走行中のサスペンションを正しく機能させる上で、支持剛性が必要不可欠なことが判明し、捻れないボディ(捻り剛性)、たわまないボディ(曲げ剛性)の実現が急がれるようになった。同一シリーズのモデルで、1980年初頭の車両とモデルチェンジを経て進化した1980年代終盤の車両を乗り比べてみると、歴然とした剛性感の違いを感じ取ることができる。また、コンピュータシミュレーション技術が進化したことで、2000年代の車両は、設計段階で実際のボディ剛性が確認できるまでになっている。



ところで、車体を設計する際に目指すボディ剛性は、当然ながら完全剛体ではない。そもそも自動車のボディで完全剛体はありえず、また完全剛体を目指す必要もない。設計する車両の重量、サイズ、形態などを前提に、現行技術(鋼板プレス材、溶接によるモノコック構造)で実走行に支障が生じないレベル(快適性の確保なども含まれる)が目標となっている。



Sクラスには高級車らしい素材選択が行われている

実際のところは、たとえば、ある車両において新車リリース当時にはベストを目指して設計された車両剛性も、4~5年を経て次期モデルで同じ作業を行うと、生産技術や材料工学の進歩により、確実に剛性の引き上げが可能な状態となっている。



現行ベンツのSクラスに目を向けると、モノコックボディの構成は、高張力鋼板+超高張力鋼板+アルミ材となっている。大柄(=重量級)になるボディに対し、設計側は軽量、高強度、高剛性で仕上げることを目標とするため、構成素材には軽量、高強度なものが選ばれ、できるだけ軽く、かつ強靱な車体作りが目指される。こうした意味では、超高張力鋼板やアルミ材を多用したベンツSクラスの車体設計は、いかにも高級車らしい贅沢な素材選択が行われていると見ることができる。



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ちなみに、高張力&超高張力鋼板の定義は、一般構造用圧延鋼材と比べて引っ張り強度が高く、同じ強度値を得る場合、薄く(=軽く)仕上げることができる。ちなみに、一般的には引っ張り強度1000MPa以下を高張力鋼、1300MPa以上を超高張力鋼と呼んでいるが、強度を基準にした明確な名称の区分はなく、鋼板メーカーがそれぞれ適切と思われる強度の鋼に対して、高張力や超高張力の呼び名を与えている。



物理的な素材強度が明らかで、コンピュータシミュレーション技術(ソフトウェア)が確立された現在は、目標として設定した車体剛性(捻れ、曲げ)は、100%に限りなく近い確率で達成が可能な状況である。こうした意味でベンツSクラスを見れば、ロングホイールベース仕様の車体設計は、標準仕様車の手直しではなく、ホイールベース値を標準車の3105mmから110mm延長した3215mmが入力され、基本設計が行われている。



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考え方として、ロングボディ仕様車は、標準ボディ仕様車のホイールベース3105mmを延長した車両ではなく、最初からホイールベース値を3215mmで設計した車両と理解すべきである。車両の名称、スタイリング、標準モデルの存在などから、ロングボディ仕様車は標準ボディの延長版と受け取りがちだが、車体を切ってパネルを継ぎ足し、物理的な作業で車体を延長するコーチビルダーが手掛けたストレッチリムジンとは、根本から異なる車両設計、構造であることに着目しなくてはならない。

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