
警察庁が「自転車のルール違反にも青切符を導入し、反則金を徴収する」と発表した。これに伴い、5月24日までパブリックコメント(意見公募手続)を実施。
主な反則行為と反則金額(公表データをもとに弁護士JPニュース編集部が作成)
反則金は、スマホながら運転の1万2000円を筆頭に、違法駐輪9000円、遮断踏切立ち入り7000円などとなっている。金額は、危険性・悪質性の高いものほど高くなる設定だ。
「スマホ運転の反則金1万2000円は大賛成。しかし、歩道走行はどうなんだろう」
「自転車で歩道を走って反則金を払わされるのなら、運転手がいても路上駐車している車には必ず『駐車違反』の切符を切るのが最低条件」
「自転車の歩道走行禁止は努力目標にしてほしい」
歩道走行のペナルティーに対する、こうした自転車利用側のナーバスな反応は、現状における自転車の歩道走行状況をみれば明白だ。
歩道を走行するのは当たり前。狭い歩道でも、自転車が猛スピードで歩行者のわきを走り抜ける――。「歩道走行=反則行為」は、自転車側にとって、いきなりメインで活用している走行レーンを奪われるくらいのインパクトなのだ。
「まず認識しておくべきは、今回の法改正はあくまでも自転車の活用を推進するものであり、妨げるものではないということ。
とはいえ、当面は自転車が歩道を走行したら即座に青切符=反則金とはならないでしょう。ただ、これまで取り締まる側も注意しづらかったところが、注意をする理由が明確になり、注意されても従わないのであれば反則金というわかりやすい制度になったという意味で、大きな転換点となることは間違いありません」
来年4月からは自転車の反則行為に対して杓子定規に青切符を適用したり、113もある反則行為を網羅的に取り締まるのではなく、誰が見ても危険な行為に焦点をしぼって注意し、重点的かつ徹底的に啓発活動を開始することになる。
「歩行者を『ヒヤリ、ハット』させたらアウトでしょうね。歩道で歩行者の脇をかすめてびっくりさせたり、歩行者を蹴散らして猛スピードで走行するなどは誰がみても危険であり、問答無用で反則行為になるでしょう」
いかにも定性的であり、取り締まりの際に不公平が生じると考える人もいるかもしれない。だが、今回の新ルールが、あくまで自転車の活用を推進するために施行されることを理解していれば、腑(ふ)に落ちるはずだ。
つまり、自転車本来の走行エリアは車道左側。やむを得ず歩道を通る際は、徐行して十分に歩行者に注意することになっていた。ところが、車道が高速の自動車や大型車の通行に加え、路上駐車にも占領され、自転車は危険を逃れて歩道を選ぶしかなかった。
そうして、いつの間にか自転車の歩道走行が当たり前になったが、このままではしわ寄せは歩行者にいってしまう。
自転車専用レーンが設けられていても車道走行は恐怖だ(CHAI / PIXTA)
ただ、歩道走行禁止を徹底すると、自転車側から「車道を走るのは怖すぎる」との声も出てくるだろう。車道に自転車専用レーンが設けられていても、すぐ横を車が走ると「ヒヤリ、ハット」する。それでもまだ少し安心感はあるが、現状ではそうしたレーンがない場合も珍しくないからだ。
自転車は走るべき場所を走行。車は自転車の車道左側走行に配慮し、十分に注意する。今回の法改正は、あたかも自転車を歩道から追い出すようなムードも漂うが、その目的は本来の走行場所をより快適に走れるようにすること。そう解釈すれば、その真意がわかるだろう。
そのうえで小林氏は次のように法改正後を展望する。
「車が自転車の側方を通過する場合に安全な離隔距離を確保することの大切さは世界共通の認識です。1.5m以上離れて抜け、それができないときは抜ける状況になるまで抜くな、というキャンペーンが欧米を中心に行われてきました。日本にもようやくその波がやって来た。これをドライバーに周知徹底し、新しい交通秩序を構築したいところです。
大原則は譲り合いの精神。自転車は歩行者に、自動車は自転車に配慮する。反則金が導入されても、最終的にはその意義を理解する教育が伴っていなければ、浸透は難しいでしょう。
『このくらい大丈夫だろう』とそれぞれが自分の判断で都合よく動けば、反則金導入の効果はあまり期待できません。それどころかもっとギスギスするかもしれない。その先には、反則行為を取り締まるため、カメラをいたるところに設置し、監視するような社会になる可能性さえあります。
そうした息苦しい社会を招来させないためにも、事故の減少につながる危険行為を重点的に注意し、取締りを徹底し、自転車の健全な活用を拡げていかなくてはなりません。今後、パブリックコメントを集約して、最終的な方針が固まりますが、自転車に青切符導入という今回の法改正を機に、持続可能な質の高い移動のあり方について真剣に考えてみてほしいですね」
2026年4月1日から運用開始となる予定だ。関連の改正道路交通法は昨年、成立している。
主な反則行為と反則金額(公表データをもとに弁護士JPニュース編集部が作成)
反則金は、スマホながら運転の1万2000円を筆頭に、違法駐輪9000円、遮断踏切立ち入り7000円などとなっている。金額は、危険性・悪質性の高いものほど高くなる設定だ。
ネット上では困惑の声も
自転車側にとって、これまでにない大きな転換点となる今回の法改正。ネット上の反応をみると、反則金の額についての不満は少ない印象。だが、「歩道走行3000円」に対しては少し様子が異なり、困惑の声が目立つ。「スマホ運転の反則金1万2000円は大賛成。しかし、歩道走行はどうなんだろう」
「自転車で歩道を走って反則金を払わされるのなら、運転手がいても路上駐車している車には必ず『駐車違反』の切符を切るのが最低条件」
「自転車の歩道走行禁止は努力目標にしてほしい」
歩道走行のペナルティーに対する、こうした自転車利用側のナーバスな反応は、現状における自転車の歩道走行状況をみれば明白だ。
歩道を走行するのは当たり前。狭い歩道でも、自転車が猛スピードで歩行者のわきを走り抜ける――。「歩道走行=反則行為」は、自転車側にとって、いきなりメインで活用している走行レーンを奪われるくらいのインパクトなのだ。
歩道はもともと歩行者のもの
今回の法改正にも携わった、自転車活用推進研究会の小林成基(しげき)理事長は次のように解説する。「まず認識しておくべきは、今回の法改正はあくまでも自転車の活用を推進するものであり、妨げるものではないということ。
そのうえで補足するなら、歩道はもともと歩行者のものであり、自転車は‟通行させてもらう。このことを忘れてはいけません。
とはいえ、当面は自転車が歩道を走行したら即座に青切符=反則金とはならないでしょう。ただ、これまで取り締まる側も注意しづらかったところが、注意をする理由が明確になり、注意されても従わないのであれば反則金というわかりやすい制度になったという意味で、大きな転換点となることは間違いありません」
来年4月からは自転車の反則行為に対して杓子定規に青切符を適用したり、113もある反則行為を網羅的に取り締まるのではなく、誰が見ても危険な行為に焦点をしぼって注意し、重点的かつ徹底的に啓発活動を開始することになる。
反則認定の‟基準とは
そうなると、「どれくらいのスピードならアウトなのか」「どんな状況だと反則行為になるのか」という声も聞こえてくるだろう。この点についての小林氏の見解は明快だ。「歩行者を『ヒヤリ、ハット』させたらアウトでしょうね。歩道で歩行者の脇をかすめてびっくりさせたり、歩行者を蹴散らして猛スピードで走行するなどは誰がみても危険であり、問答無用で反則行為になるでしょう」
いかにも定性的であり、取り締まりの際に不公平が生じると考える人もいるかもしれない。だが、今回の新ルールが、あくまで自転車の活用を推進するために施行されることを理解していれば、腑(ふ)に落ちるはずだ。
つまり、自転車本来の走行エリアは車道左側。やむを得ず歩道を通る際は、徐行して十分に歩行者に注意することになっていた。ところが、車道が高速の自動車や大型車の通行に加え、路上駐車にも占領され、自転車は危険を逃れて歩道を選ぶしかなかった。
そうして、いつの間にか自転車の歩道走行が当たり前になったが、このままではしわ寄せは歩行者にいってしまう。
自転車にとっても、建物に近いところを走るため、特に交差点周辺で出会い頭のトラブルが頻発するようになり、事故件数だけで見ると、歩道を走る方がずっと危険なのが実状だ。

自転車専用レーンが設けられていても車道走行は恐怖だ(CHAI / PIXTA)
ただ、歩道走行禁止を徹底すると、自転車側から「車道を走るのは怖すぎる」との声も出てくるだろう。車道に自転車専用レーンが設けられていても、すぐ横を車が走ると「ヒヤリ、ハット」する。それでもまだ少し安心感はあるが、現状ではそうしたレーンがない場合も珍しくないからだ。
自転車ケアのために自動車のルールにも改正が
実は、この自転車側の不便については今回の法改正である程度ケアされている。具体的には「自動車は自転車の側方を通過する(追い越す)際には、両車の間で『十分な間隔』がない場合、自動車は間隔に応じた安全な速度で進行しなくてはならない」と、車側に罰則付きの義務を課したのだ。車に対して自転車を認識し、尊重しろと定めたのは画期的といえる。自転車は走るべき場所を走行。車は自転車の車道左側走行に配慮し、十分に注意する。今回の法改正は、あたかも自転車を歩道から追い出すようなムードも漂うが、その目的は本来の走行場所をより快適に走れるようにすること。そう解釈すれば、その真意がわかるだろう。
そのうえで小林氏は次のように法改正後を展望する。
「車が自転車の側方を通過する場合に安全な離隔距離を確保することの大切さは世界共通の認識です。1.5m以上離れて抜け、それができないときは抜ける状況になるまで抜くな、というキャンペーンが欧米を中心に行われてきました。日本にもようやくその波がやって来た。これをドライバーに周知徹底し、新しい交通秩序を構築したいところです。
大原則は譲り合いの精神。自転車は歩行者に、自動車は自転車に配慮する。反則金が導入されても、最終的にはその意義を理解する教育が伴っていなければ、浸透は難しいでしょう。
『このくらい大丈夫だろう』とそれぞれが自分の判断で都合よく動けば、反則金導入の効果はあまり期待できません。それどころかもっとギスギスするかもしれない。その先には、反則行為を取り締まるため、カメラをいたるところに設置し、監視するような社会になる可能性さえあります。
そうした息苦しい社会を招来させないためにも、事故の減少につながる危険行為を重点的に注意し、取締りを徹底し、自転車の健全な活用を拡げていかなくてはなりません。今後、パブリックコメントを集約して、最終的な方針が固まりますが、自転車に青切符導入という今回の法改正を機に、持続可能な質の高い移動のあり方について真剣に考えてみてほしいですね」
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