
店側はすぐに容疑を認め、「当店は『特定遊興飲食店営業』の許可のもと営業をしていたものの、『風俗営業』の許可を取得できなければならない接待行為があったものとされ、今般の事態に至ったものと思われます」と説明した。
風営法において、「接待」は、その有無が業態を分岐するうえで、重要な要件となっているが、そもそも、その定義は何だろうか。接待が含まれるサービスの場合、なにがどう規制されるのかーー。
法的観点から、ナイトビジネスに精通する若林翔弁護士が解説する。
※この記事は若林翔弁護士の書籍『歌舞伎町弁護士』(小学館新書)より一部抜粋・再構成しています。
「許可」による接待飲食等営業の5種類の違い
風営法に基づく「風俗営業」のカテゴリーの許可「接待飲食等営業」には、ホストクラブやキャバクラ、スナックなどを対象とする1号を始め、全部で5種類の許可がある。どこからが「接待」になる?(west / PIXTA)
1号はホストクラブやキャバクラ、スナックといった店が対象で「飲食+接待」が提供される。営業可能な時間帯は、午前0時~午前6時以外の18時間。
2号は低照度飲食店(照度が10ルクス以下の薄暗い店)で「接待」は提供できない。飲食だけを提供する許可で、いわゆるバーが必要とする許可だが、1号と同じく午前0時~午前6時の時間帯は営業できないため、ごく普通のバーを営業するのであれば、後述の深夜酒類提供飲食店営業の「届出」をするのが一般的である。
次は、3号(区画席飲食店)。こちらも「接待」は許されず、提供できるのは飲食のみ。2号との違いは、店内を複数の個室に区切ることができる点だ。
つまり、ネットカフェやカップル喫茶などを開業したい場合はこの許可が使えるが、1号、2号と同じく深夜営業(午前0時~午前6時)が認められないため、ネットカフェの多くは3号の区画席飲食店に該当しないように区切を工夫して見通しを確保したり、飲食物を提供しないようにしたりして営業をしている。
4号、5号は風営法上のカテゴリーとしては「風俗営業」に入るが、営業許可の種類は1号から3号を収める「接待飲食等営業」ではなく、「遊技場営業」だ。
その名の通り、パチンコ店や雀荘、ゲームセンターを対象としている。風営法は公営競技関連法令と異なり、賭博罪に該当しない範囲での営業が想定されており、その場での飲食や煙草などの「一時の娯楽に供する物」の範囲を超えて、現金を賭けるような場合には賭博罪に該当することになる。
特定遊興飲食店営業とは
その他、風営法において、許可が必要な業種として、「特定遊興飲食店営業」がある。DJが大音量で音楽をかけ、踊るために客が集まるナイトクラブなどが想定されている。「深夜・飲酒・遊興」という3つの要素すべてを満たす営業がこれに該当する。「遊興」は、営業者の積極的な行為により、客に遊び興じさせることをいい、不特定の客に対してショーやダンスを見せる行為などもこれに該当する。
風俗営業における「接待」は、特定の客に対する行為であるが、「遊興」させる行為は、不特定の客に対するものが想定されている。そのため、特定遊興飲食店営業許可で営業していた店のキャストが特定の客に対して継続的に談笑をするなどの「接待」をした場合には、無許可営業となる。
東京・六本木にある有名なショークラブ 「バーレスク東京」が摘発されたのはこれが理由だ。接待は許されていないが、「特定遊興飲食店営業」の許可のもとなら営業ができるとして、「厳戒な体制のもと」で再開したのはそうした理屈からだ。
営業風営法において「許可証」が必要とされるカテゴリーは、ここまでとなる。
【若林翔】 グラディアトル法律事務所入所後、2013年から代表弁護士を務める。 ナイトビジネスのトラブル相談の豊富な経験を生かし初の著書『歌舞伎町弁護士』を出版。