健康食品・サプリメント分野の売上高が3000億円を超えるサントリーの会長が“違法サプリ”所持の疑いを受けるという前代未聞の構図だが、本人は潔白を主張している。
CBDとは
朝日新聞によれば、同氏はサプリメントの成分がCBD(カンナビジオール)だと認識しており、米国で購入。知人に預けて国内に送付してもらったという。もし、その供述通り「CBDサプリ」なら、わが国では違法薬物には該当しない。
CBDはストレス緩和や抗炎症作用などが期待され、数年前から健康食品市場でもオイルやカプセル、グミ、チョコレートなどさまざまな形態の製品が販売されている。
ただし、CBDはもともとは大麻草に含まれる成分のため、国内では違法ではないもののグレーに近い存在で、購入者も販売者も慎重さが求められるものだったことは否定できない。
改正大麻取締法で変わった規制対象と課題
ごく最近まで、大麻の規制は、CBDなどを抽出するのに用いられる「部位」(成熟した茎や種子など)が対象で、その証明書を厚労省に提出する必要があった。ただ、部位による規制では、大麻由来の有害成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)がどの程度混入するか等が不明確だという問題などがあった。しかし、2024年12月12日に「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」(改正大麻取締法)の一部が施行されたことにより、規制対象は、使用部位ではなく、THCそれ自体となった。そして、THCが残留限度値を超える場合に、違法と扱われることとなった。
ただし、法改正によって違法・適法の線引きが明確になった一方で、わが国での成分分析体制が不十分であることが指摘されている。
つまり、基準値を超える濃度のTHCが残留していることが検知されず、見過ごされる事態が起こり得るということだ。
その結果、合法なCBDサプリメントだと認識して購入したにもかかわらず、違法薬物の所持に該当するリスクや、高濃度のTHCを摂取して身体に悪影響が生じるリスクが否定できない。
実際、7月には福岡県の「買い上げ調査」で、県内で販売されていたCBDグミから基準値を上回るTHCが検出される事件があった。
違法製品をつかまされることを防ぐには、最低限、信頼に値する第三者機関のテストをクリアしているか、輸入品の場合は正規の手続きを経ているかなどを確認することが肝要となる。フリマアプリや個人からの入手はそれ自体、リスクが高いと認識しておいた方がいいだろう。
3日午後、会見で改めて潔白を主張
3日午後、会見した新浪氏は、米国でCBDサプリメントを購入し、知人に郵送を依頼したことを認めたものの、以下の通り釈明し、改めて潔白を主張した。「(捜査対象となったサプリメントは)私が米国で適法と認定して購入したものと同一であるかどうかも分かりません。(結果的に)手にしていませんので。
そもそも私が日本で適法と認識して購入したサプリメントと同一であるか分からない物について、警察から私への捜査があったと理解をしております」
新浪氏によると、知人が日本に持ち帰り、同氏宅へ送る手配をし、さらに別便で知人が弟に送り、それが捜査対象になったという。
そのうえで「結果的に私がこのCBDサプリメントを購入したことに端を発してこのようなことになってしまったことは私の不注意であり、社会を騒がせたことに対してお詫びを申し上げたい」と話し、辞任の理由に代えた。