30年経った今年9月7日、長男の遺体が発見された長野県大町市で追悼式が行われ、日本弁護士連合会(日弁連)や県弁護士会の関係者らが出席。また、同月5日には第二東京弁護士会が「坂本堤弁護士一家殺害事件を踏まえた弁護士業務妨害に対する会長談話」を発表した。
2010年にも相次いだ弁護士殺害事件
談話の冒頭では、坂本弁護士が旧オウム真理教の「出家信者の親からの相談を受けて、教団の欺瞞(ぎまん)性を厳しく批判、糾弾」していたことから、脅威を覚えた教団教祖(麻原彰晃こと松本智津夫)が殺害に及んだことに言及。そのうえで「弁護士は、業務の性質上、紛争の渦中に身を置くことになりますので、事件関係者等から逆恨みの対象とされ、不当な業務妨害にさらされることが少なくありません」と指摘し、2010年6月に横浜弁護士会所属の前野義広弁護士が刺殺された事件、および同年11月に秋田弁護士会所属の津谷裕貴弁護士が刺殺された事件に言及している。
談話では、生命への危害を含む、弁護士に対する不当な業務妨害は「弁護士の使命を妨害し、ひいては市民、とりわけ弱者の人権を脅かすものというよりほかありません」と述べ、「一たび、弁護士が業務妨害を恐れて事件の受任を控えたり、業務妨害に屈して正当な弁護活動の手を緩めたりしてしまえば、そのしわ寄せは市民に及ぶことになる」と強調している。
離婚・男女問題やネット上の業務妨害はいまも深刻
坂本堤弁護士一家殺害事件を契機として、業務妨害を受けている弁護士を支援する制度の必要性が痛感されたことから、1996年6月、日弁連は弁護士業務妨害対策委員会を設置した。また、日弁連は各弁護士会に弁護士業務妨害対策委員会の設置を呼びかけ、2016年までに、国内全ての弁護士会で弁護士業務妨害対策委員会またはそれに相当する組織が設置されるに至っている。
一方、昨年12月に日弁連が「特に離婚・男女問題に関する事件に係る業務妨害に関する会長声明」を発表するなど、弁護士への業務妨害は依然として続いている。
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談話でも「インターネット上での誹謗(ひぼう)中傷、濫用的懲戒請求等、これまでになかった様々な態様での業務妨害も行われるようになってきており、このような社会状況の変化に応じた取組が急務となっています」と指摘。
そのうえで「当会は、弁護士が不当な業務妨害に屈することなくその使命を果たすことができるよう、社会状況の変化に応じた取組をさらに強化していくとともに、一致団結してその使命と役割を果たしていくことをここに誓います」と結んだ。