回答した864人のうち、実に82.2%が「現在の人員体制では十分なサービスを提供できない」と回答。
アンケート調査の結果を受け、医労連は国・自治体に対して要請書を提出。「人員配置基準の引き上げ」「介護・福祉職員の賃金大幅引き上げ」を求めた。
「いい介護を提供したいが…」
アンケートでは「人員を増やしてほしい」と答えた人のうち、75%が「利用者にいい介護を提供したい」とその理由を回答。この日会見に出席した各地域の労組担当者らは次のように述べた。
「利用者に対し、さまざまな交流の機会を設けるなど、活動的で良い介護を提供したいという思いはあるが、事故防止のことを考えると人員が足りず、利用者のQOLを守るケアができていない」(北海道の労組担当者)
「夜は誰かが仮眠に入ると、職員はワンオペと変わらない状況になります。それでも利用者からのコールに答えるために施設を走り回らなければならず、まさに運動会のような有様です。
このような現場では利用者の行動を抑制するような介護をせざるを得ず、結果、職員は『これがやりたかった介護なのか』と考えるようになり、さらに疲弊してしまいます」(香川県の労組担当者)
「処遇改善なければ日本は崩壊する」
現場からは賃金や処遇、介護報酬の改善を求める声も強い。アンケートの自由記述欄には以下のような回答が寄せられている。「(職業を軽視しているわけではないが)スーパーの店員さんより時給が低い事に納得できない」
「介護を目指す若者も減り、介護は魅力を感じられず、スタッフの笑顔も消えているのが現状。
せめて介護をしてみようかなと思えるよう、給与を上げる。待遇を良くすること等を考えないと、今の(現役)世代に介護が必要になったとき、日本は崩壊します。
介護現場のスタッフが足りず介護施設で働く者全員、疲弊している。給与をあげ、しっかり休める体制づくりを行うべきです」
熊本県の組合関係者も会見で「他業界の賃金が上がる中、介護現場だけが取り残されている。
「介護職の役割にふさわしい賃金を」
厚労省は2040年度までに介護職員を約272万人確保する必要があるとしているが、2023年度には介護保険制度発足後初めて、職員数が減少に転じている。出席者からは「技能実習生の外国人を雇用したとしても、制度上、彼らとの契約は数年程度で切れてしまう。外国人を雇用することで一時的にしのげたとしても、その先の心配は常に残る。日本人、特に20代など若手が、介護職を志そうと思える賃金水準を実現すべきだ」といった声があがった。
また、国は現在、介護施設の利用者3人に対し、職員1人以上を配置するよう基準を設けている。
しかし、アンケート調査では「規定の人数がいるから人員が足りているという考え方はやめてほしい。机上の空論です」「3対1から4対1への変更を検討しているとのニュースを見てがっかりした。人員不足により、さらに『キツイ』職業となるのか」といった回答が見られた。
加えて、医労連の森田進中央副執行委員長によると、現在の3対1の基準も、実態としてはそれを下回る運用が行われているという。
「例えば48人の利用者がいる施設では、職員が16人必要になります。
ですが、仮に職員が8時間労働、週休2日の条件で働いていたとすると、その16人が毎日どの時間もいるわけではありません。
時間帯によっては48人の利用者を2人で見る、1人で見るという状況が発生しているのが実情です」(森田氏)
そのうえで、医労連の寺田雄書記次長は以下のようにコメントした。
「人員配置基準を2対1に引き上げるとともに、ただちに全産業平均と同等の賃金水準への引き上げを実施し、将来的には介護職の役割にふさわしい、職務に見合った賃金に上げることを国と自治体には求めていきたいです」