※国から地方公共団体に交付される地方交付税のうち、普通交付税で捕捉されない災害などの特別の財政需要に対し交付されるもの
取り消された上記決定の根拠は、寄付金収入が多額であることを理由として特別交付金を減額する「省令」だった。
ふるさと納税の制度の理念として、「地方創生」「都市と地方の財源偏在の解消」が挙げられる。しかし、自治体がせっかくふるさと納税による増収を得ても、地方交付税の減額により減殺されるのでは、本末転倒であるようにも感じられる。
もともとのふるさと納税の理念は現実に機能しているのか。現行のふるさと納税制度がどのような問題を抱えているのか。YouTube等で納税者の視点から精力的に情報発信を行う黒瀧泰介税理士(税理士法人グランサーズ共同代表)に聞いた。
ふるさと納税のしくみ
まず、ふるさと納税の基本的なしくみについておさらいしておこう。ふるさと納税は、好きな自治体を選んで「寄付」を行ったら、翌年の税金から「寄付金額-2000円」の額の控除を受けられる制度である。ほとんどの場合、寄付先の自治体から「返礼品」を受け取れるので、この返礼品を目当てに寄付をする。
黒瀧税理士:「よく『節税』と説明されることがありますが、節税の効果はなく、お金の収支だけみれば『2000円のマイナス』です。
あくまでも、返礼品の市場価値が2000円を超える場合に、その差額だけ実質的にトクをする制度です」
たとえば、東海地方のK町に約11万円を寄付すると、返礼品として、町内に工場を構える人気マットレスメーカーA社製のマットレスを受け取れる。同マットレスは定価約3万8500円、ふるさと納税の自己負担額は2000円なので、差額の3万6500円分が「儲かる」ということになる(【図表】参照)。
【図表】ふるさと納税のしくみ(ElegantSolution, 卯月つくし/PIXTA)
ふるさと納税をする人にとっての主な魅力は、この「2000円の自己負担で、それよりも高額な返礼品を得られること」といえる。
この点について、黒瀧税理士は、「この差額を誰が、どのようにして負担するのか」という点に絡んで、ふるさと納税制度のスタート当初から、様々な問題が指摘されてきていると説明する。
その問題は大きく2つ。①寄附を受ける側の自治体の「経費」の問題と、②寄付をする住民が居住する自治体の「税源流出」の問題に集約される。
寄付を受ける側の自治体の「経費」の問題
まず、①寄附を受ける側の自治体の「経費」の問題として、寄付金を受け取っても、返礼品等の経費がかさめば、メリットが減殺されるという点が指摘される。黒瀧税理士:「ふるさと納税で多くの寄付を受けようとすれば、事実上、返礼品を設定しなければなりません。そのための経費がかさみます。
何より、他の自治体よりも魅力的な返礼品を用意するため、いわゆる『返礼品競争』が生じます。
また、PR効果を考えると『楽天』『さとふる』『ふるさとチョイス』などの仲介業者を利用せざるを得ず、そのコストがかかります。
そこで、紆余曲折を経て、現在では以下の制限が設けられています。
- 返礼品は『地場産品』に限る(地場産品基準)
- 返礼品の仕入れ額は寄付額の30%以内に抑える(30%ルール)
- 経費の総額は寄付額の50%以内に抑える(50%ルール)
さらに、この10月から、仲介業者が寄付額に応じてポイントを付与する『ポイント制』が禁止されています。これは、ポイントを付与することでかかるコストが、結果的に経費に上乗せされるのを問題視してのことです」
なお、冒頭に紹介した訴訟の原告である泉佐野市は「熟成肉」と「精米」を返礼品とすることによって多額の寄付を得た。これが問題視され、「地場産品基準」について、2023年10月から「食肉の熟成または玄米の精白」は「当該地方団体が属する都道府県の区域内において生産されたものを原材料とするものに限る」と明文で規制が加えられた。
寄付をする住民が居住する自治体の「税源流出」の問題
次に、②寄付をする住民が居住する自治体の「税源流出」の問題が挙げられる。黒瀧税理士:「他の自治体にふるさと納税で寄付をすれば、自分が居住する自治体から『寄付額-2000円』の額を流出させることになります。
そうすると、自治体によっては、行政サービスの提供に支障をきたす可能性があります。裏を返せば、自分自身が自治体から受ける行政サービスの質の低下を招く可能性があるということです。
東京23区(特別区)の区長で組織する『特別区長会』が2023年7月31日に総務大臣に提出した「『ふるさと納税制度』に関する要望について」 によれば、ふるさと納税による特別区民税の減収額は2023年度だけでも約830億円、2016年度からの累計で約3600億円に達しています」
そして、このことは結果的に、地方創生にとって逆効果をもたらすリスクも抱えているという。
黒瀧税理士:「すでに財政難に陥り、かつこれといった『名物』がない自治体では、住民がふるさと納税で他の自治体に寄付を行えば、さらに財源が流出し、地方の疲弊を加速させることになりかねないという問題が指摘されています」
国に「増税」の口実を与える?
さらに、国税・地方税の「増税」を招く可能性があるという問題点も指摘する。黒瀧税理士:「まず、ふるさと納税をした人の居住する自治体では、寄付額がほぼそのまま他の自治体へ流出します。
他方で、ふるさと納税で寄付を受けた自治体は、前述のように、そこから返礼品の調達費用、事務にかかる諸費用、仲介業者への手数料など『経費』が差し引かれます。
国全体での合計では地方の税収は『マイナス』となります。
マイナスになった分については、地方交付税でまかなわざるを得ないので、国税の増税でまかなうことにならざるを得ません。
また、東京23区のような地方交付税交付金の不交付団体は、財源が確保できなければ、区民税の増税などで対応せざるを得ません」
このように、ふるさと納税については、寄付を受ける側の自治体では「経費」がかさみ寄付のメリットが減殺されかねないという問題、寄付をする住民が居住する自治体では「財源流出」の問題がある。さらに、増税につながる可能性も抱えている。
それに加え、自助努力によりふるさと納税で多額の寄付を集めた自治体が、地方交付税の減額を受けるとなれば、そもそも「なんのためのふるさと納税なのか」と、その存在意義に疑念が生じかねないといえる。
ふるさと納税については、もっぱら返礼品を媒介とした「納税者側のメリット」が強調される。しかし、本記事で紹介したように、私たち国民の首を絞めるリスクを抱えていることも否定できない。
2008年にふるさと納税の制度が始まって17年。相次ぐ制度改定や、行政訴訟での国の敗訴など、制度の抱えるリスクがさまざまな面で顕在化してきているといわざるを得ず、制度は岐路を迎えているといえよう。

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