けれど現実には、「抜けられない」「やめづらい」と感じる保護者が少なくない。
この連載では、PTAという組織がどのような仕組みを持ち、どう運営されているのか、またどれほど多様であるのかを見ていく。第2回では、「入退会自由」という原則がどのように形骸化しているのか、その現実を探る。(連載第1回はこちら/全5回)
※この記事は元朝日新聞記者の堀内京子氏による著作『PTA モヤモヤの正体——役員決めから会費、「親も知らない問題」まで』(筑摩書房、2021年)より一部抜粋・再構成しています。
原則は「入退会自由」、けれど現実は……
PTAはそもそも、入退会自由な任意団体だ。強制的に入会させられる法的根拠はないと、文科省も繰り返しコメントしているし、2010年2月11日に横浜市で開かれたシンポジウム「これからのPTAのあり方」(主催はNPO法人「教育支援会」)でも確認された。強制的な入会について、憲法学者の木村草太教授(東京都立大学)は、憲法で保障される「結社の自由」には「結社しない自由」もあり、法的には無効と指摘している(「朝日新聞」2013年4月23日、朝刊文化面)。
実際、この10年ほどで「PTAは入退会自由」という認識はかなり広まり、PTAの会規約や会則に明記したり、入会の意思確認をしたりするPTAが徐々に増えてきている。その一方で、地域によってその認識にだいぶ差がある。
もちろん、「入退会は自由」という原則は、それを規約に明記したPTAだけに適用されるのではない。規約に書かれていなくても、「PTAは入退会自由」だ。
ただ、「想定されるさまざまな不利益を考えると事実上、入会以外の選択肢がない」という親たちは少なくない。
「しがらみが強い田舎では、PTAでのつきあいイコール近所づきあいで、一生離れられない。
面倒見がよくて気さくな彼女は、保育園では保護者会の会長を務めたこともある。けれど、小学校のPTAでは、活動できない保護者への陰口や無視を目の当たりにした。上部団体の講演会や親睦会への動員も、半強制的だという。
「PTAのあり方を見直したい、などと発言すると、自分の親だけでなく義理の親にまでそれが伝えられ、文句を言われるような地域です。地域の人すべては知り合いで、仲間たちとPTAの何かを変えようと話し合っても、誰かの困る顔が浮かんでしまう。子どもはかわいい盛りの小学生。本当なら自分も『小学生の親』という時期を楽しみたいのに、気がつくと、小学校はあと何年で終わる、と数えてしまっている」
PTA“やらない理由”「保護者全員を納得させて」
PTAが、事実上の全員参加になってしまうことで起こるのは、年度末や年度初めの保護者会で行われるPTAの役員や係決めにまつわる無理強いだ。会員にならないという選択肢がほぼない状態で、保護者全員が体育館に集められて、会長や会計などの役員が決まるまで入り口を閉め、そこから誰も出られないというやり方をとるPTAが、いまだになくならない。
そして、役員を引き受けられない場合、プライバシーにかかわるような理由――ひとり親だとか別居中だとか、自分の重篤な病気や精神疾患、介護中の家族の要介護度や認知症の具合、経済的に苦しくて例えば仕事を掛け持ちしていることなど――を会員たちの前で話して「免除」してもらわなければならない、というルールで運営しているところもある。
「役員を決める場で、シングルマザーとして収入が減ってしまうので『免除』にしてほしいと、とりまとめ役に伝えると、その理由を保護者全員に聞こえるように自ら説明し、納得してもらってくださいと言われました」(大阪・50代女性)
「役員決めに欠席したら、本部役員になっていた」というケースや、PTAの代表である会長ですら、「くじ引きで決まってしまった」「じゃんけんで負けて引き受けることになった」という人たちがいる。
「来年から楽になるのはずるい」続く連鎖
PTAでは多くの場合、やらなければならない行事は前年度に決まっている。会長や本部役員になって、不要と思われる行事をスリム化させようとしても、前年度、あるいは数年前の役員たちが決めたイベントや、PTA大会のホスト役などはすでに予定に組み込まれていて、予算も組まれているから、役員を引き受けた年にそれらを変更するのは難しい。
たとえ、行事を見直してはどうかという意見が出ても、「長く続いたものを自分たちの代でなくすのはいやだ」という消極的な反対や、「私たちが続けてきたものをやめるのか」というOBからの反発が出てくるし、現会員からも「来年から楽になるのはずるい」という声が上がる。
一つの行事を見直すにしても、その合意にこぎ着けるだけで手間がかかるので、結局、何かを見直すよりも、決められたことをこなすほうが合理的だと判断されてしまう。一度始めたものや、行政から委託を受けたものは見直すことが難しいため、イベントや仕事は増えていく傾向がある。
新型コロナの影響で、PTA主催の行事や講演会、お祭りや役員の会合などができず、これまでの運営方法や行事のあり方を見直しているところは多い。言い換えると、これほどの社会変動がなければ見直しは難しかったのだ。
そもそもボランティア団体なので、会長のなり手がいないとか、参加する人が少なかったりすれば「今年は残念ながら休会で」となってもおかしくないはずだが、会長がいない、PTAが存続できないのは大変な事態だと思われている。
そのため、次年度の役員になってくれる人を前もって見つけて説得するための「役員選考委員」を置いているPTAもある。決まらなければ、役員選考委員の「責任」だ。同じ会員が苦労しているのを見かねて手を挙げてくれるような、ボランティア精神の持ち主によって維持されているPTAも珍しくない。
PTAと同構造の自治会で起きた“悲劇”
住民の善意で公共サービスの一端を担ってくれている自治会や町内会、消防団などにも、それと似た構図と問題が見て取れる。例えば、こんな事例がある。
市営住宅で一人暮らしをしていた男性が、自治会の班長にくじ引きで選ばれてしまう可能性があると知り、自治会の役員に「精神の病気で、班長はできない」と伝えた。
それでも「特別扱いできない」と言われ、役員らの前でびんせんに「おかねのけいさんはできません」「ごみのぶんべつができません」などと書かされたのだ。
遺族は、他人に知られたくない障害の内容を書かせたことは、憲法13条が保障するプライバシー権や人格権の侵害にあたると主張。役員らが男性に文書を書かせ、それをほかの住民に見せるなどと伝えて過度な心理的負担を与え、男性を自殺に追い込んだとして提訴したのだが、この事例は、そのままPTAの役員決めにも重なるところがあり、当時、共感・同情したPTA関係者は少なくなかった。

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