自民党総裁選出直後の演説で高市早苗総裁は「全員に馬車馬のように働いてもらう」と発言。
一方で働きたいのに働けない個人、企業も存在し、“働きたい改革”として賛意を示し、影響力のある人物の期待や推奨の声も挙がる。
高市総理が21日、上野賢一郎厚労大臣に出した指示書には「心身の健康維持と従業者の選択を前提にした労働時間規制の緩和の検討」という文言がある。そのうえで「働き方改革を推進するとともに、多様な働き方を踏まえたルール整備を図ることで、安心して働くことができる環境を整備する」と続いた。
規制緩和の“全体像”はまだ見えないが、果たして最終形はどう落ち着きそうなのか。労働問題に詳しい向井蘭弁護士に聞いた。
「人手不足解消待ったなし」の判断
高市政権が早々に「労働時間規制緩和」に着手するようです。このことについてどのように思われますか。
向井弁護士: 高市政権が「経済の立て直し」を最優先に掲げている以上、深刻な「人手不足」の解消は待ったなし、という判断だと思われます。特に経済界、中でも成長分野やスタートアップからは、現行の残業規制が「かえってイノベーションや柔軟な働き方の足かせになっている」という声が強かった。今回の検討着手は、その要請に応え、経済成長の「エンジン」の一つとして規制緩和を位置づけたということだと思います。
もちろん、「働き方改革」の流れに逆行するのではという懸念は当然です。
最終的な着地点は?
指示書の【心身の健康維持と従業者の選択を前提にした】という文言からは、具体的にどのような規制緩和が行われると考えられますか。
向井弁護士:この文言は、明らかに「高度プロフェッショナル制度」が「残業代ゼロ法案」と呼ばれたような“強い批判”をかわすための「ブレーキ」でしょう。具体的に行われる可能性が高い規制緩和策として考えられるのは、大きく2つです。
(1)高プロ(高度プロフェッショナル制度)の対象拡大・要件緩和
今の年収要件(1075万円以上)を引き下げたり、対象業務を広げたりする方向です。「本人の選択(同意)」と「健康維持(勤務間インターバル確保など)」をセットにして、制度を使いやすくする狙いでしょう。
(2)労働者本人の「オプトアウト(適用除外)」制度の導入
本人が自ら「選んだ」場合に限り、残業時間の上限規制(月45時間、年720時間など)を外せる仕組みです。ただし、その代わり企業側には「健康維持」のため、今より厳しい健康確保措置(インターバルの徹底や産業医面談の強化など)が義務付けられるはずです。
どちらにしても、全員一律の規制撤廃ではなく、「対象者」と「条件」を絞り込み、本人の同意と健康確保をセットで緩和する形を探ってくるでしょうね。「特区」での試行導入という声もあるようですが、それも十分あり得る話です。
「働きたい人」「働きたくない人」格差どうなる?
緩和によって「働きたい人」「働きたくない人」の賃金格差拡大の懸念について、制度設計上どのようにバランスをとるのが望ましいでしょうか。
向井弁護士:非常に重要なポイントです。単純に規制を緩めれば、長時間働ける高スキル層と、育児・介護などで時間制約がある層、あるいは交渉力の弱い層との格差が広がるリスクは間違いなくあります。
このバランスを取るには、最低でも以下の2点がセットで必要不可欠です。
(1)交渉力の格差是正
「従業者の選択」が、事実上の「会社の強制」にならないよう、労働組合の関与や、個人が会社と対等に交渉できる仕組み(労働条件の明示強化、相談窓口の整備など)を整えることです。
(2)リスキリング・能力開発支援の強化
「短時間しか働けない」層が、スキルを身につけて「短時間でも効率よく稼げる」ように、あるいは「働きたい」層に移行できるように、国が本気で教育訓練を支援することも欠かせません。
これまでの「働き方改革」をどう評価していますか。また、今後さらにどう‟進化”すべきでしょうか。
向井弁護士:これまでの「働き方改革」(特に時間外労働の上限規制)は、「長時間労働をなくす」という意識を現場に植え付けました。その功績は非常に大きいと思います。働き方改革で規制された残業時間(出典:厚労省ホームページ)
ただ、「時間の長さ」という物差し一つで縛ろうとした点に問題がありました。
たとえば、スタートアップの創業期やクリエイティブ職、高度な専門職など、「時間」で縛られると逆にパフォーマンスが落ちる業種・職種は苦しめられました。
現場では「仕事量は同じなのに、残業だけダメ」となり、結局、持ち帰り残業や「隠れ残業」を誘発した面もあります。
「もっと働いて稼ぎたい」「短期間に集中して働きたい」という個人のニーズにも応えにくくなりました。良い面もあった一方で、悪い面を浮き彫りにしたのが、これまでの「働き方改革」といえるかもしれません。
今後は「時間管理」一辺倒から、「健康管理」と「成果管理」へシフトすべきです。
「健康管理」と「成果管理」にシフトするためには、どのようなルールづくりが重視されますか。
向井弁護士:たとえば、働く時間は柔軟性を認める代わりに、「必ず11時間の休息(勤務間インターバル)を取らせる」といった、健康確保のルールの厳格化です。現場に則しているという点でもその方が合理的でしょう。「ジョブ型」への移行促進も有効と考えられます。「何時間いたか」ではなく「どんな成果を出したか」で評価するジョブ型雇用を広め、労働者が自律的に働き方(時間や場所)をコントロールしやすくすべきです。
会社都合ではなく、労働者自身が「この時期は集中して働く」「この時期は休む」と決められる権利を、交渉力の差を埋めた上で保障する。そうした本当の「自己決定権」の確立が重要になるでしょう。
労働者、企業はどう捉えるべきなのか
今回の労働時間規制緩和を、労働者・企業はそれぞれ、どのように捉え、よりよい働き方に転換していくのが理想でしょうか。
向井弁護士:労働者は、理想を言えば、「単に残業が解禁される」と怖がるのではなく、「自分の働き方をデザインする選択肢が増えるチャンス」と捉えたいところです。「時間給」で働く意識から抜け出し、自らの専門性やスキルを高め、「成果」で勝負するマインドが求められます。しかし当然、その働き方を選ぶ以上は、自分の健康管理(セルフケア)にも責任を持つ必要が出てきます。
企業は、まず大前提として、規制緩和を「残業代を払わずに長時間労働させられる」といった安易なコスト削減策として悪用しないこと。
深刻な人手不足が続く今、「長時間労働が可能な制度」を安易に導入する企業は、かえって優秀な人材(特に若手)から選ばれなくなるリスクすらあります。
理想は、この緩和を「多様な人材が活躍できる環境整備」のきっかけと捉え、DXや業務プロセスの抜本的な見直しにより、「時間当たり生産性」を本気で追求する経営に転換することです。
従業員の健康がなければ会社の持続的な成長もない、という「健康経営」の視点が不可欠だと思います。
最重要は本当に「真に自由な選択」になるか?
今のところ、この施策に対する国民の反応は拒絶が目立つ印象ですが、高市政権が日本経済をV字回復させるなら、着地点としてどの程度の規制緩和に落ちつくのが理想といえそうでしょうか。
向井弁護士:今回の議論で一番大事なのは、結局、指示書にもあった「従業者の選択」が、本当に「真に自由な選択」になるのか?という点に尽きます。日本の職場には、いまだに「上司の指示は絶対」「同調圧力」という考えが根強くあります。そんな中で、「あなただけ残業規制を適用除外しますか?」と会社に問われ、「いえ、結構です」と断れる人がどれだけいるでしょうか。
制度設計にあたっては、この「会社と個人の力の差(交渉力の非対称性)」を直視し、「選択」が任意であることを担保するための厳格なルール(例:第三者機関のチェック、不利益取り扱いの厳禁、ハラスメント対策の徹底)を組み込むことが必要です。
単なる「規制緩和」ではなく、働く個人の「自律性」と「健康」をいかに守るか。この視点なくして、「働きたい改革」がポジティブなものになることはない、と私は考えています。

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