経済的援助を目的とした男性(パパ)と女性が交際する「パパ活」。近年の“ブーム”の裏で、1980年代の「愛人バンク」の流れを汲み、脈々と生き続けてきたのが、会員制の「交際クラブ」という“愛人・パパ活女子斡旋所”だ。

交際クラブは、ある程度の財力がある男性会員から紹介料を受け取り、デートをセッティングすることで利益を得ている。SNSやアプリと異なり、運営会社や生身のスタッフが間に入るため、身元の確かさと安心感がある点が特徴だ。
「風俗ではない」「自由恋愛」と強調されるものの、実際は性的な関係に発展することも想定されたシステムであると言える。
本記事では、漫画家・ラブホテル評論家であり、かつて交際クラブのスタッフとして男女双方の会員の面接などを経験した日向琴子氏の著書『ルポ パパ活』(彩図社、2022年)より、交際クラブを利用しているのはどのような男性なのか、会員のリアルな声とともに紹介する。
※『ルポ パパ活』は著者の体験を元に記していますが、プライバシー保護の観点から人名、施設名などの一部を仮名にしてあります。

交際クラブを利用する男性とは

パパ活アプリや出会い系サイト、インターネットの掲示板など、手軽で便利に女性と出会えそうなサービスが乱立する中で、交際クラブを利用する男性とは、どのような属性なのだろうか?
S倶楽部(※日向氏が勤務していた交際クラブ)は、年収1000万円以上の精神的、経済的にゆとりのある男性を入会資格としているが、アクティブ会員は年収2000万円以上であり、一番年収の高い人は数億円である。
最近は女性会員があまりにも多すぎるため、性格的に問題がなさそうであれば年収800万円以上でも入会をOKする場合もある、というのは前述の通りだが、1000万円以下だと、そう頻繁に遊ぶことは難しい世界だ。
男性会員約2000名のデータからは、会社経営者、医者、弁護士、個人投資家、不動産、外資系勤務、といった職業が多いことがわかる。
S倶楽部に限っては、IT系の男性会員はほとんどいない。既婚者は8割程度で、残りの2割は未婚の男性、離婚、死別などである。
入会する男性、というのは、大半が学生時代勉強を頑張りすぎて、女の子と遊んで来なかった男性だ。
若い頃はお金もなく、女性にもモテず、勉強に励み、一生懸命努力して来た。
40を過ぎて社会的地位も名誉もお金も手にした今、若い頃に体験できなかった青春を取り戻したい、という気持ちが強い。

既婚者であっても、いわゆる『モテるタイプ』ではなく、婚活市場において女性たちから『優良物件』と言われるようなタイプが多い。決してイケメンではないけれど、真面目で優しくて稼いでくれて、浮気の心配もなさそう、といった感じだ。
おじさんたちは、若い頃から女性とあまり交流して来なかったので、仮に街中で自分好みの素敵な女性を見かけたところで、恥ずかしくてナンパなんてできっこない。
立場的にも、おいそれとナンパなどできはしない。部下の女性を可愛いと思っても、口説く勇気もなければ、昨今の風潮からサシ飲みにでも誘えば、たちまちセクハラ扱いされて社内で問題になる可能性だってある。
キャバクラにいるような派手な女性は苦手だし、かといって普段の生活では女性と知り合う機会もない。
彼らにとって交際クラブは、自分が一番苦手な『女性と会うまでの段取り』を全て代わりに行ってくれる、有難いサービスである。
女の子に慣れていないので、セッティングまで代行してもらえるのは心理的な負担が軽い。サイトを見て気になった女の子がいれば、クラブに電話をしてスケジュールを調整するだけでセッティングしてもらえるのだから、仕事で忙しい中でも、時間的な負担も軽減される。
アプリやサイトでは良い女の子に会えない、ドタキャンが多くうまく出会えない、写真と違い過ぎる女性が多くて疲れた、お金にがめつすぎて引いた、という声も多く聞く。
交際クラブを使用する男性は、自身の社会的地位もあるので、その存在を脅かすような、どこの誰ともわからないような女性と交わるのは避けたいと考えている。

アプリは「自分に価値があると勘違いしている若い女性が多い」

プロや風俗が嫌なのは、不特定多数と性的な関係を築いている女性は自分をお金としてしか見てくれない、自分もそんな相手を大切にしたいと思えない、という気持ちと、病気のリスクが増えそうだ、という気持ちがあるからだ。

企業案件専門の弁護士、N氏(44歳)は面談時、辛辣な意見をぶつけてきた。
「最近はSNSで自己表現できるし、自己顕示欲も満たされるので、アプリやサイトで見ていると、自分に価値があると勘違いしている若い女性が多い。
写真は加工ばかりで実物とは大違いだし、整形やメイクでナチュラルな美とは程遠い。それなのに、お茶や食事を共にしただけで、2万円とか3万円をくれと言う。
応じる男性もいるのかもしれないが、僕はそんな女性に奢ったうえで数万円をあげられるほど心は広くない。そんな子に5万円使うくらいなら、30代以上の大人の女性とゆったり過ごす。謙虚さがないと続けたいとも思わない」
交際クラブというと、こっそり利用するイメージを持つかたも多いかもしれないが、S倶楽部は女性会員同様、男性会員も「知人の紹介」が多い。
大抵は酒の席で話題になり、具体的なクラブ名を耳にするらしい。N氏も、弁護士同士の懇親会で同席した後輩から交際クラブの存在を教えてもらったと言う。
彼らは、ただ単に性欲処理の相手を探している訳ではない。
できることならば、心の通いあったお付き合いをして、相手に喜ばれたいのである。自分が知らない世界を知りたいという知的好奇心もあるのだろう。

交際クラブであれば、身元のしっかりした女性と安心安全で確実に出会えるし、スレていない素人の女性を探せると思っているのだ。
土地開発関連の会社でコンサルをしているH氏(52歳)はこう話す。H氏は去年まで別の交際クラブを利用していた。
「僕が利用していたクラブは六本木にあったんだけど、若い子が多くて。一緒にいても周りの視線が気になるし、会話も噛み合わないし、疲れちゃったんだよね。若いのになんだかプロっぽいし。キャバクラとか銀座のお姉さんとも違って、なんていうのかなぁ、普通の女の子のふりをしている感じというか。
学費がなくて困ってて、と言うわりに、いつも違う綺麗な服を着てたり、毎回違うネイルだったりしてね。ベッドでもあっさりしてる子ばかりだし、早く帰りたそうにしてるし。なんだかなぁ、と思って」
コンラッドのロビーラウンジで、ガラスのプレートに並べられた一口サイズのお菓子をつまみながら「僕は食べるのが好きだから、一緒に食事を楽しめる女性が欲しくて。ダイエットしてるからってちょっとしか食べない女性は苦手なんです」と話すのは、建設関係の会社に勤めるM氏(47歳)だ。
奥さんは女医で、普段は別居している週末婚を続けて10年ほどが経つと言う。
M氏は普段、千葉で賃貸物件に住んでいるが、奥さんは都内にマンションを所有している。
「そのくらいの距離感が僕たちはちょうどいい。もう、15年くらいセックスはしてないけど、元々子供を作る気は無かったから、ずっと友達みたいな感じで。それはそれで楽しかったけど、ちょっとお金に余裕ができたから、他の女性ともデートしたいな、と思って」
寂しい、癒されたい、疑似恋愛がしたい、家庭と仕事以外の場所が欲しい、趣味を共有して気分転換に付き合ってくれる女性が欲しい、イイ女と出会いたい、セックスがしたい、男性として見られたい…………交際クラブに男性が求めるものは様々だが、いずれにせよ、交際クラブはお金のかかる遊びであることに間違いはない。


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