3日、同性同士の結婚が認められないのは憲法違反だとして、国に賠償を求めている「結婚の自由をすべての人に」訴訟の原告と弁護団が、最高裁判所に対して初の要請行動を行った。
全国5地域(北海道、東京、愛知、関西、九州)の原告らは、11月28日に言い渡された東京高裁の「合憲」判決に強い憤りを示しつつ、最高裁に対し、全件を大法廷で審理し、速やかに違憲判断を示すよう求める要請書を提出した。

東京2次訴訟・高裁の合憲判決のショックは大きい

全国5つの高裁で「違憲」または「違憲状態」の判決が出揃う中、先週(11月28日)の東京2次訴訟控訴審判決では「合憲」の判断が示された。
原告らにとってショックが冷めやらぬ中で行われた要請行動。終了後には、各地の原告・代理人らが集い会見を開いた。
要請行動に参加した、東京2次訴訟の原告である山縣(やまがた)真矢さんは、これまでの司法判断の流れから、11月28日の東京高裁でも「当然、何らかの違憲判決が出るだろう」と考えていたという。しかし、予想は裏切られ「5日経った今でも、怒りが収まりません」と声を震わせた。
自身も還暦を間近に控え、パートナーとは28年連れ添っている。
「万が一、最高裁が合憲判決を下した場合、同性婚の問題はしばらく棚上げにされ、私たちが生きている間に結婚できない可能性が強くなる」(山縣さん)
要請行動では、こうした危惧を最高裁の事務官に直接伝えたという。
同じく要請行動に参加した、東京1次訴訟の原告である小野春さんは、同性のパートナーと共に3人の子どもを育ててきた。しかし、法律上の家族ではないため、入院手続きすらスムーズに行えないのが現状だ。
小野さんは、要請行動の前日に開催された同性婚の実現に向けた院内集会で、初めて発言したという次男の言葉を代読した。
「仮に母が倒れ死んでしまうと、私たち家族の関係はないものとされます。ここまでの20年間が全く消されてしまう。自分たち家族だけの問題ではない、子どもたちのために力を貸してほしい」
九州訴訟原告のこうぞうさんは、「私たちは決して対立をしたいわけではありません。
穏やかな暮らしを願っているだけです」と語り、最高裁に対しては、問題を先送りせず真摯な議論を行うよう求めたという。
関西訴訟の原告、川田有希さんは、SNSで同性婚訴訟をめぐる活動報告をした際、「子どもがいないのだから結婚できるわけがない」と心無い言葉を投げかけられたという。最高裁で合憲判断が確定すれば、こうした偏見や中傷がさらに助長されかねない。自身の体験から抱いた危機感を最高裁事務官に伝えたという。
川田さんのパートナーである田中昭全さんは、司法が立法府に対して、期限を設けて同性婚の立法化をするように判決を出してほしいと強く要望した。

合憲判決は、分析すれば脆い判決

関西弁護団の大畑泰次郎弁護士は、批判を浴びている東京高裁の判決について、「問題はあるが、分析してみると非常に脆い判決」と指摘。「論理的な矛盾が多く、最高裁で維持されることはあり得ないと考えている」と話す。
最高裁への要望書の中でも、弁護団は、本訴訟の最大の焦点について、現行の民法・戸籍法が、「同性の者同士に、現行の婚姻制度を利用させないことが憲法違反にあたるかどうか」に絞り込まれていると改めて明示。
しかし、東京2次訴訟の控訴審判決は「なぜ同性カップルの排除が正当化されるのか」について、社会的承認や制度設計の名の下に説得的な論証を放棄し、漫然と現行制度を肯定しており「きわめて特異な判決」と批判した。
弁護団は、事件を15人の最高裁判所判事全員で審理する「大法廷」へ回付した上で、口頭弁論期日を開くように求めている。最高裁審理の具体的な日程は未定だが、開始は早くても来年になる見通しだ。
■杉本穂高
日本映画学校(現・日本映画大学)出身。
神奈川県のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ(現・あつぎのえいがかんkiki)」の元支配人、現在は映画ライター。


編集部おすすめ