自身も小学生のとき、骨折するほどのいじめ被害を経験した。
将来は弁護士を目指しているという悉知さんに、これまでの道のりを聞いた。(ライター・渋井哲也)
原動力は「小学校時代のいじめ被害」
悉知さんがいじめの標的になったのは、小学校6年生の頃だった。教室で受験用のテキストを広げて勉強していると、それを机から落とされた。「女子のリコーダーを舐めたんじゃないか」「女子トイレに入ったんじゃないか」など、根も葉もない噂も流された。
「なぜ突然いじめの標的になったのか、理由はわかりません。それまでと違うことは、中学受験しか思い当たらない。でも、私立受験組は私以外もいた。成績がよかったから反感を生んだのかもしれません…」
いじめは次第にエスカレートし、ついには腕の骨を折る出来事へ発展した。
「主犯格の子が、私が言ってもないことを『悉知が◯◯と言っているぞ』と別の子に告げ煽った。それを真に受けた子が『ふざけんな!』と言いながら突進してきて、足を思い切り持ち上げられました」
バランスを崩し左手をついたときに、自重が乗って骨が折れたという。
しかし、救いを求めた先の学校の対応は冷たいものだった。
「養護教諭が出張中で保健室にいなかったため、担任に『骨が折れているから救急車を呼んで』と言ったのですが信じてもらえず、『保冷剤でも持っとけば大丈夫』と3時間くらい放置されました」
授業が終わって親を呼んでもらい病院に行くと、骨が2か所折れていた。
「このとき、声をあげても封殺される、信じてもらえないんだと思いました」
その後、親と一緒に担任に相談しても状況は変わらなかった。
「最初に言われたのは『あなただけの証言でしょ』でした。
『それだけじゃ信じられません』『証拠あるんですか?』とも言われました。別の時には、校長室で大人5人対僕1人になり、『あなたの妄想なんじゃないか』『過敏になっているだけでは』と言われたこともあります。
学校の先生には嘘つき扱いされ、頼っても変わらないと思いました」
悉知さんは私立中学校に合格。「心機一転、頑張ろう」と思ったが、折しも新型コロナウイルスの流行が直撃した。いじめで心のバランスが崩れていたこともあり、生活リズムが崩れ不登校になった。
「私立中学校なのでお金がかかる。学校に行かないのに親に負担をかけるのは申し訳ないと公立中学校へ転校しました」
この転校で「先生を信頼できるようになった」といい、悉知さんにとって一つの大きな転機になった。
「この中学校の先生方のおかげで立ち直れたと言っても過言ではありません。たくさんサポートしていただいた当時の校長先生とは今でも連絡を取り合っています。ただ、小学校の時とのあまりの落差に『先生ガチャ』を感じましたね」
資格取得までの道のり
悉知さんは通信制のS高等学校(エス高)に進学。1年生の春に、行政書士試験合格を目標に掲げた。映画化もされたドラマ『99.9 -刑事専門弁護士-』や痴漢冤罪をテーマにした映画『それでもボクはやってない』(2006年)などを見て法律の世界に憧れがあった。
「自由な時間が取れるのが通信制高校の良いところなので、その時間を有効活用し、行政書士の勉強を始めました」
半年間で延べ600時間を勉強に費やした。
「勉強の時は、復習のタイミングにこだわりました。翌日、3日後、1週間後、1か月後と時間をおいて何度も復習すると定着する気がして」
また、「インプット3割、アウトプット7割」を意識し、問題をたくさん解くことに力を注いだ。
無事に合格し、18歳の誕生日を待って行政書士として登録したが、当初は登録に迷いもあったという。
「地元でも高校生が登録することについて、さまざまな声がありました。でも、ちょうど女子高生が弁護士として活躍するドラマ『JKと六法全書』を見て、いじめに悩む当事者に年齢が近い高校生の行政書士にも価値があると思い、登録を決意しました」
「茨城のいじめ問題を考える会」の設立
行政書士登録を行う前の昨年11月、悉知さんはいじめ被害者・経験者・保護者向けの交流会を主催する「茨城のいじめ問題を考える会」を発足した。最初の交流会(座談会)の参加者は3人だったが、現在は平均20~30人の当事者が県内外から訪れる。
悉知さんは被害経験者の立場から相談に乗るだけでなく、行政書士として、行政文書の開示請求をしたり、弁護士につなげたりするなど、当事者らが必要とするサポートを行っている。
これまで当事者らの相談に乗る中で、印象に残っているのは、中学生からの相談だという。
「SNSで私たちの団体を見つけて、藁にもすがる思いで交流会に来てくれました。最初はあまり話さなかったけれど、LINEで日々話をする中で、自分の『夢』を語ってくれるようになった。少しでもいじめ被害の苦しさが軽減できているんじゃないかと、私も希望を感じました」
悉知さんの「これから」
悉知さんは、慶應義塾大学法学部法律学科への進学が決まっている。地元からは離れるが、「原点は当事者の声。
「今は大阪府寝屋川市など先進的ないじめ対策を行う自治体がありますが、地元の茨城県でも、現在ある『いじめの根絶を目指す条例』よりもっと被害者が申し立てやすく、被害防止につながる実用的なものを作りたい。そして何より、問題が複雑化・深刻化する前に被害者が声をあげやすい“環境づくり”を続けていきたいです」
大人顔負けの活躍をする悉知さんだが、趣味はカラオケ。NHK「のど自慢」の予選会に出場したこともあるという。好きな曲はSHISHAMOの「明日も」。
〈明日が変わるかは分からないけど とりあえずまだ私は折れない ヒーローに自分重ねて明日も〉
悉知さんの歩みはまだ始まったばかり。悉知さんの“明日”を見守りたい。
■渋井哲也
栃木県生まれ。長野日報の記者を経て、フリーに。主な取材分野は、子ども・若者の生きづらさ。依存症、少年事件。教育問題など。

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