日本医療労働組合連合会（医労連）は12月19日、都内で会見を開き「2025年度 夜勤実態調査」を公表した。
調査は、医療機関で働く看護職員等の夜勤状況を全国規模で把握するため、毎年実施しているもので、6月の勤務実績を調査し、比較している。

今年は全国324の施設、2305病棟、2472職場で働く看護職員約9万人、看護要員約11万人から回答が得られ、2交替病棟の5割弱で「16時間以上」の長時間夜勤が続き、休息が8時間未満のケースも約4割に上ることが判明した。

患者「死ぬかと思った」

会見に出席した都内の医療機関で働く現役看護師のAさんは調査結果を受け「安心安全な医療のためにも看護師の増員を求めたい」と訴えた。
Aさんの勤務する病院では、約1000人の看護師のうち600人が夜勤に従事しているが、その6割が月5回程度の「16時間夜勤」を行っているという。Aさんは、看護現場の過酷さについて次のようにコメント。
「夜勤が終わると心身ともに疲れて、ぐったりする。夜勤明けの休みも、24時間あるとはいえ、ただ体を休めるというだけで、ほかのことは何もできない」（Aさん）
高齢化に伴い、病棟には認知症患者や、常時見守りが必要な重篤な患者が増え続けている。
そんななか、人手不足からナースコールへの反応が遅れた際には、患者から「早く来てほしかった。死ぬかと思った」と言われたこともあったという。
しかし、Aさんの病院では現在、病院経営の悪化に伴う夜勤体制の見直しが進んでおり、夜勤スタッフの人数を減らす動きもあるという。

「リスクが通知されずに働かされている」

また、会見に出席した労働組合の関係者は、「生活費を稼ぐために、あえて過酷な夜勤を選ばざるを得ない」看護師がいる実情にも言及。
「がんの発症リスクなどが高まるにもかかわらず、リスクが通知されずに働かされている」「若い人が将来のことを考えず、お金のために体を酷使してしまう」といった懸念を示した。
さらに、正規職員の不足を補うため、「夜勤専従」の看護師に頼るケースも増加。今回の調査では、病棟における夜勤専門看護師の割合は18.7％となり、2018年度の調査から約10ポイントも増えたという。

「夜勤での負担が、離職の要因の一つに」

会見の出席者らは過酷な夜勤環境が改善されず、人手不足が解消されない根本原因として「看護師の処遇の低さ」を挙げた。
「看護師は高給だと思われがちだが、他産業との賃金格差は広がっている。
厚生労働省が発表した2025年の賃金改定額を見ても、全産業平均の改定額に比べ、医療分野で働く人の賃上げ額は半分以下だ」（佐々木委員長）
賃金が他産業より低ければ、看護師が病院を離れ、夜勤のない職場や他業種へ流出するのは必然だ。
会見に出席した別の組合関係者は以下のようにコメントした。
「今、看護の現場では人手がとにかく減っていて、募集をしても見つからない状態です。
業務の過酷さから看護師の仕事を辞めてしまう人も少なくありませんし、看護学校の定員割れや閉鎖が続き、新卒者の採用もうまくいきません」
その結果、残された看護師に負担が集中し、「16時間夜勤」「月9回超の夜勤」が常態化する悪循環に陥っている。
さらに、一般病院の約7割が赤字との調査もある中、経営難を理由に「一時金（ボーナス）を10万円以上引き下げられた」医療機関もあるという。
医労連の松田加寿美書記次長は次のように述べる。
「医労連が実施した調査では、仕事を辞めたいと考えている看護師が約8割に上ることが明らかになっています。
仕事を辞めたい理由について尋ねたところ、『夜勤がつらい』との回答が23%を占めており、夜勤での負担が離職要因の一つになっていると考えています」

「補正予算は月500円のお小遣い以下」

こうした状況を打破するため、医労連は「診療報酬を10％以上引き上げるべきだ」と主張。
公定価格である診療報酬に縛られる医療機関では、賃上げの原資を自力で捻出することが難しく、国による制度的な財源措置が不可欠だと訴えた。
ところが、政府が来年度に向けて掲げている診療報酬改定率は「2～3％程度」にとどまる見込みで、佐々木委員長は「3％程度では全く足りない」と訴えた。
さらに、政府の補正予算でついた補助金についても厳しく批判。試算した結果として、「一般病棟で一人当たり月7000円程度、診療所なら職員数にもよるが、場合によっては月500円程度にしかならない」と指摘。

「この程度の予算措置ではお小遣いにもならない。
看護師が働き続けられる賃金水準を実現し、人材を確保するには、診療報酬の大幅な引き上げが絶対に必要です」（佐々木委員長）


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